千原兄弟 単独ライブ「赤いイス」

千原兄弟の第2章がはじまる気がします。

千原兄弟の真髄を堪能できるのはやはりコント。12年ぶりに開催される単独ライブはファンだけでなく、お笑い界も刮目する事件。とはいえ、周囲のざわつきを知ってか知らずか、ふたりはいつもの調子。いったいどんな内容になるのだろうか?

 

せいじ「自分らとしてはそんなに久しぶりって気もしないし、満を持してって感じも全然ないけどな」

ジュニア「ないなあ。まあ、僕は国技館でライブをやったり、落語をやったり、いろいろやってたんでね」

 

――千原ジュニア単体としては、2016年に『6人のテレビ局員と1人の千原ジュニア』、2017年には『1P(いちぴー)』など、ここ数年、意欲的な企画に挑戦している。公演には千原せいじも参加し、ふたりの競演も珍しいことではなかった。

ジュニア「去年、『1P(いちぴー)』をやったときにせいじにも何本か手伝って貰ったので、次はふたりでがっつりやろうかなと。きっかけはそこですね」

せいじ「まあ、自分らにとってはコントをやることは普通のことで、特別なものはなんもないですから」

 

――今回のタイトルになっている『赤いイス』は、実は千原ジュニアがバイク事故(2001年)に遭う前に考えていたものだという。タイトルに込めた意味は?

ジュニア「ライブ会場と日程が決まって、そろそろタイトルを決めなアカンというときに、ふと20年くらい前のことを思い出したんです。そういや事故に遭う前にやろうとしていたライブのタイトル、結局使わなかったなあって。じゃあ、今やってみようかと」

 

――普段はタイトルを決めることで世界観が構築され、そこからコントが仕上がっていくというが、本公演もそのスタンスなのだろうか?

ジュニア「当時、何を思って『赤いイス』ってタイトルにしたのかは明確じゃないんですけど、今はあの頃とは状況も置かれている環境も違う。当時とは色合いが違う内容になると思いますね。今、ネタを考えているところなので、なんとも言えないですけど」

 

――千原兄弟のコントは、千原ジュニアが100%ネタを考えることで知られる。12年間で貯めたネタを放出するのだろうか?

ジュニア「芸人でネタを貯めている人はまずいないんじゃないですかね。ライブが決まってそこからネタ作りです。やるって決めないと作れません」

せいじ「僕はね、ネタが出来上がっているのを待っているだけ。だから、十月十日、子どもが生まれるのを待っているオヤジみたいなもんですわ。ネタ作りに関してはなんの役にも立たないです。生まれてくるまでオヤジの実感がないのと一緒」

 

――前回(2006年)の単独コントライブ『15弱』では、若手刑事役のジュニアが、パソコンが苦手なベテラン刑事役のせいじの手伝いをするのだが、ある単語にだけベテラン刑事が反応するというネタが秀逸だった。ふたりの息もぴったりだったが、ネタ中のアドリブなどはないのだろうか?

ジュニア「ふたつのパターンがありますね。刑事のやつはガチガチに決め込んで作るタイプなのでアドリブは一切ない。そういうのは台本さえしっかりしていればいい。逆にほとんど稽古をせずにやったほうがいいというネタもあります」

 

――アドリブ重視で作るコントは、流れだけ決めておいて、あとはフリーで本番でのリアクションに任せるという。お客としては二度と同じものは観られないネタを楽しめるわけだが、やっている側の緊張感はかなりのものだろう。

ジュニア「難しいのは、2回くらいの稽古で十分なのに、ついつい4回くらい稽古してしまってリハーサルが一番おもろかったっていうパターンがあること。心配だからついつい稽古するんやけど、しすぎなんですね。そこのバランスは難しい」

せいじ「あるな(笑)。スタッフにはもっと受けてたやん! ってやつな」

 

――地上波でコントを披露する場が減っているなか、人気者であるふたりがこのタイミングで公演をするのはやはり千原兄弟の原点がコントだから。

ジュニア「僕らはテレビのネタ番組に向けてネタを作っているわけじゃないから。ふたりが面白いと思うことをやるだけなんで。その結果、今のテレビでは放送できないような内容になるかも知れませんけどね」

 

――8月の本番に向けて、これからネタ作り~稽古がはじまる。

ジュニア「12年前と違ってもう40代ですからね。せいじのことも考えて、あんまり身体を動かすようなネタは作らないようにしようかなと」

せいじ「頼むで! 12年前とは身体がどうしても違いますからね。膝が痛かったり、足首が痛風みたいに痛かったり」

ジュニア「4回公演っていうのもまあまあ大変ですからね」

せいじ「4回はほんま、そう」

ジュニア「お互い、コンディションだけは整えないとなとは思いますね」

 

――公演への意気込みは?

せいじ「12年もたつと、千原兄弟のコントを見たことがない人もいると思うので、その人たちに“千原兄弟です!”っていうのを見せたいですね。子供連れて見に来て欲しいわ」

ジュニア「12年の間に僕も嫁と子どもができましたから。コントを見ながら、“コイツ、家に帰ったら嫁と子どもがおんねんな”と思ったら笑けてくるというのはあるかと思いますね。そういう意味でも若いときにはできなかった笑いもできるんじゃないかなと。なんか、次のステップと言うか、第二章がここからはじまるかなって気がしていますので、ぜひ見に来てください」

 

インタビュー・文/高畠正人

 

【プロフィール】
千原兄弟
■1989年に実の兄弟である千原せいじ、千原ジュニアによって結成。1994年「第29回上方漫才大賞」新人賞などを受賞。来年結成30周年を迎える。