写真左からCamden Loeser(振付補)、Mahlon Kruse(演出補)、Kai Jonson-Peady(サーカス・レプリケーター)、Crystal Kay、森崎ウィン、Ryan Cantwell(音楽スーパーバイザー)
8月30日(火)東京・東急シアターオーブでの開幕に向けて稽古が進んでいる、ミュージカル『ピピン』稽古場レポートをお届けする。本番仕様の仮セットが組まれた稽古場に入ると、そこはまさにサーカス小屋のよう。至る所でトレーニングが行われている。息を吸うように繰り広げられるアクロバット。サーカス・レプリケーターのKai Johnson-Peadyが中心となって、技がブラッシュアップされていく。最初に行われたのは、クリスタル・ケイが演じるリーディングプレイヤーのソロナンバー「SIMPLE JOYS」。サーカスチームによるバランスボールとフラフープを使ったアクロバットを、クリスタルの歌に併せて確認していく。クリスタルは、「体が覚えていて結構スムーズに進んでいる」と余裕がありそうな様子。
次は、戦闘場面をナイフ投げと殺陣などで表現する「CAPERS」。ピピンを演じる森崎ウィンら全員で鼓舞しあい集中してスタート。ナイフ投げの間に入っていくタイミング、位置、順番を確認する。この場面の大技は人間縄跳び。プレイヤーのひとりが縄のようにぐるんぐるんと回されていて、それを別のプレイヤーが飛び越える。森崎も飛ぶ側のひとりだ。技が見事成功すると、全員でハイタッチ!
見ているだけで心拍数が上がる。森崎が自分の稽古以外に、腕立て、逆立ち、懸垂など、常に体を動かしている姿も印象的。「待っている時間がもったいなくて、何かしていないと落ち着かない」という。
続いて、音楽スーパーバイザーのRyan Cantwellによる歌稽古。「Magic to Do」など全員コーラスのディレクションを行った。国王になったピピンを迎える「Morning Glow」について、Ryanは「みんなが一体になる、一番美しく歌えるナンバー。天国から降りてくる声のような」と説明。森崎の柔らかくしなやかな歌声と、コーラスの美しさと力強さがひとつになる。
次の稽古は、演出補Mahlon Kruseを中心にステージングが進められた。リーディングプレイヤーに見せられた新聞記事をきっかけに、父チャールズに反旗を翻す場面。ピピンは農民たちを鼓舞して、革命へと促していく。「農民はひとり100人分演じると思って」とより熱量を求められる。続く場面は、ファストラーダがチャールズとピピンが対立するように企む場面。大きなBOXを使ったイリュージョンや、ナイフ投げも見どころで、よりスムーズに展開してメリハリがつくように、ブラッシュアップしていく。
最後の稽古は、ピピンとキャサリンの場面のステージング。森崎とキャサリンを演じる愛加あゆは新キャストなので、初めての場面を一から作っていた。ふたりから生まれてくる芝居がとてもナチュラルで引き込まれる。初演の芝居から変化する箇所もあり、どんなピピンとキャサリンになるのか楽しみになった。
稽古を終えた森崎は「楽しい!一番体を使う舞台かもしれない!」と高揚していた。「今はパートごとにバラバラにやっているので、はやくみんなで一緒にやりたい。クリスタルさんとはいい関係性も出来てきているし、これからいい意味で、いろいろと仕掛けていきたい」と意気込んだ。一方、クリスタルは、「ウィンピピンは可愛くて、ナチュラルにピュアさが出ていて、遊び心があるから本当にぴったり」と太鼓判を押す。「ピピンが変わることは、私にとっても大きく、リーディングプレイヤーの見え方も変わるかも」と期待が高まる分析だ。二週間後の開幕が待ち遠しい。
なお、本作は9月19日(月・祝)までの東京公演以外に、9月23日(金・祝)~9月27日(火)大阪・オリックス劇場での公演も控えている。
取材・文=岩村美佳
【その他 稽古場風景(取材日とは別日の様子より)】