リーディングアクト「一富士茄子牛焦げルギー」合同取材会が、10月11日(火)に行われ、本作に出演する小柴陸(AmBitious/関西ジャニーズJr.)、羽野晶紀、橋本さとし、そして原作者のたなかしんが出席した。
本作は、温かくユーモアに富んだ作風で全国に多くのファンを持つ画家・絵本作家のたなかしんが描く家族の物語を朗読劇として上演するもの。3人の俳優が“ぼく”“おとん”“おかん”を演じ、時に“語り部”や“ぼくの親友”となり物語を紡ぐ。2021年の初演では、新型コロナの影響でわずか1日のみの上演となっていたが、今回、満を辞して再演が決定した。
初演に続き、“ぼく”を演じる小柴は、「昨年の公演がコロナでなくなってしまい、とても悔しい思いをしました。なので、もう1回、“ぼく”を演じさせていただけるというのはとても嬉しいです。精一杯頑張ります」と挨拶。
“おかん”役の羽野は「前回の公演は、事務所の先輩の沢口靖子さんと生瀬勝久さんがやっていると聞いて、観たかったのですが(観ることができずに)残念という思いがあったので、オファーをいただいて、私でいいのって(驚いたのが)最初です。それで、いただいた脚本を全部声に出して読んだんです。そうしたら、どうしようというくらい涙が出てきたり、すごい勢いで笑えたりしながら読み終わって、感動しました。おとん役はさとしさんそのままでいいと思うくらいピッタリだと思います。この3人でどんなふうにできるのか、皆さんにお届けできる日が楽しみです」とオファーを受けた心境を明かした。
意外にも「朗読劇は初体験」という“おとん”役の橋本は、「役者は活字をまず見て、そこから自分の心の中で絵を動かし、実際に体を使ってお客さまに感動してもらう職業ですが、リーディングは座ったまま、本を読みながらお客さまに感動を与えるので、噛んでしまったり、本を読んでいるのに飛ばしてしまったりということを恐れていました。なので、実は、僕は避けていたことだったんですが、この台本を読んで、活字だけでこれだけ絵が浮かぶのに、そこに河原(雅彦)さんが演出して、瓜生(明希葉)さんの音楽がついて、映像もあってという(この作品)は、僕自身も感動しながら仕事ができるのではないかと思い、勇気を持ってお受けしました。僕が感じた感動以上のものがお客さまに伝わればいいなと思います」と想いを語った。
また、原作のたなかは、前回公演を「本当に素晴らしい舞台だったんです。自分で描いた物語なのに、新しい別の物語を観ているようでした。客席でどうやって嗚咽を漏らさないようにしようと思いながら観ました」と評した。そして、「これをもう一度、どうにかして観てもらいたいという思いがあって、実現したらいいねとずっと話していたので、それが決まった時は抑えきれない思いが溢れてきました。今回、新たに羽野さんと橋本さんにやっていただけるということで、また違ったおとんとおかんが出てきて、1年経ってまた違った(小柴の演じる)ぼくになっていると思うので、すごく楽しみにしています」と期待を寄せた。
続いて、新たな“おとん”と“おかん”である羽野と橋本の印象を聞かれると、小柴は「さっき初めてお会いしたのですが、僕が思い描いている『ザ・おとん』『ザ・おかん』でした。めちゃくちゃ優しく喋りかけてくださったのでよかったです」と笑顔を見せた。
そんな小柴の印象を、橋本は「肌がきれい。ピカピカしている。気持ちもピカピカしている感じがして、純粋なんだと思います。これから汚れないように守ってあげたいと、すでに親心になっています」と褒め称えると、羽野も「とてもピュアな感じ」と同意。
さらに羽野が、「きっと前回の生瀬さんと靖子さん(のおとんとおかん)とは真逆になると思います。靖子さんは綿密に役作りをしていらっしゃったと思いますが、私は出たところ勝負ですから」と話すと、橋本も「生瀬さんは尊敬する大先輩で、演技に対してストイックで譲れないものを持っている方。僕はあやふやな役者だから、(生瀬は)僕のことを昔は“アホボン”と呼んでいました。ですが、その数年後に共演した時には褒めてくれて…しっかり人のことを見てくださる方なので、そこは僕とはだいぶ違うところかも」と分析した。
今作は、リーディングアクトとはいえ、台本を手にせずに演技をするシーンがあったり、映像を使った演出があったりと、ただイスに座って読むスタイルではない。「感覚としては、ストレートプレイに近い作品なのではないか。前回公演では台本も覚えていたのでは?」と記者から質問が上がると、小柴は「僕は(昨年の公演では台本を)ほぼ覚えていました。目で追わなくてもできるようになっていましたし、生瀬さんも動きがあったので覚えていたと思います」と振り返る。そうしたやりとりを聞いていた橋本は「“アクト”という文字がつくからにはある程度、ストレートプレイをやるくらいの意識じゃないといけないだろうなという予感はしてました」と笑った。
また、たなかは、改めて本作について「舞台セットもありますし、そこを移動しながら演じないといけないので、新しい挑戦になるのではないかと思います」と説明。自身の作品が舞台化されたことへの想いを聞かれると、「舞台のためだけに50枚くらい絵を描いたんです。物語にちょこちょこ出てくるキャラクターや途中で登場する印象的な桜のシーンも描き下ろしました。僕自身がすごく関わらせていただいた作品です」と明かし、「この本は人に幸せになってほしいという想いを込めました。生きていると辛いことはありますが、それでもどうにか前を向いて生きてほしいという想いを込めたので、それを少しずつ(日本児童文学者協会新人賞や舞台化に携わった人たちに)受け取ってもらえたことが舞台化につながったのかなと思います。本当にありがたい機会だと思っています」と語った。
取材会では、本作にちなんで「願いが一つだけ叶うとしたらどんな願いを叶えたいか?」という質問も。小柴は考えながらも「お金持ちになりたいです。僕、少し前までプロフィールの『将来の夢』という項目にも『お金持ちになりたい』って書いてたんです。それか、空を飛びたい」と回答。橋本は「めっちゃピュアですね」と驚きながら、「僕はチワワを飼っているのですが、そのチワワとお話がしたい。目とか仕草とか空気で感情を測っていますが、本音は何を思っているのかなって。お話ししてみたいです」と可愛らしい夢を披露した。
一方、羽野は「『今の地球上からウイルス退散』です。コロナを無くしてもらって、お客さんのマスクを外してもらって、思う存分笑ってもらって、楽しく食事もしてもらって…そんな時が早くきてもらいたいと思うので、このお願いをしたいです」と想いを口にした。
取材会の最後には、たなかは「この3人の掛け合いを見てもわかるように、すでに家族のようです。このまま舞台に突入していただけたら素晴らしいものになると個人的に思っています」、橋本は「たなかしんさんが描こうとした世界観プラス僕たちのメンバーで表現できる何かで世界が膨らんでいくような舞台を届けたいと思います。1時間20分ほどの作品の中で、すごく心が動くと思います。感動を届けたいという一心です」、羽野は「ぼくとおとんとおかんというナチュラルな関西人の3人が、思い切り関西弁でやりとりして、のびのびとした舞台ができると思います。きっと感動を一緒に経験できるひとときがあると思うので、大阪の家族の面白さと素敵さを東京の皆さんにも味わってもらいたいです」とそれぞれ呼びかけた。
そして、小柴が「これぞ大阪の家族というのが分かってもらえると思います。前回、大阪で公演した時に見にきてくれた事務所の同期たちが『今まで観た舞台の中で一番面白かった。分かりやすく笑えて、分かりやすく泣けた』と言ってくれました。どんな方に観ていただいても心に響くと思います。たくさんの人に観ていただきたいです」とメッセージを贈り、会見を締めくくった。
取材・文:嶋田真己