劇団結成15年を迎え、改めて問い直す家族のかたち
劇団として15周年を迎えたハイバイが、2018年8月から9月にかけて、『て』『夫婦』を同時上演する。共にマスターピースの呼び声高い作品の再演となる。
作・演出を務めるハイバイ主宰・岩井秀人によれば「『て』も『夫婦』も僕自身の家族を題材にしていて、それぞれがとても思い入れの強い作品」。その「僕自身の家族」のヒドさに観客は思わず笑い、笑いながら涙する、そんな二本になっている。
いつからなのか、家族に当たり散らして自我を保つようになったかに見える、家族の中心にして家族を壊す存在としての父親。その張り詰めた風船のような存在が、常に真ん中にある家族――。その理不尽さに、岩井はずっと向き合っている。
『て』では父のせいでバラバラになった一家の団らん、そしてその“失敗”が、ストーリー性豊かに描かれる。一方の『夫婦』ではその父の死をきっかけに、岩井自身が理解しがたかった両親のあり方を、さまざまなエピソードから見つめ直す作品だ。
岩井「『て』は物語の構造も演劇としての見せ方も確立していて、これまでの日本の演劇の形としても行儀がいい作品。どんなお客さんにも深く響くと思います。『夫婦』は、かなり散文的で、演劇や芝居という枠組みからは少し離れていますが、実はこちらの方が“人間の心模様”に近い表現では」
『て』は、手に並ぶ指のように、バラバラの人間が(観客も含めて)一緒にいることを痛感させるラストへの展開が圧巻。『夫婦』では、岩井が今回、初めて父親役を演じるのが大きなニュースだ。自らも子を持つ親となった岩井が、「なんとなく、いずれやらなくてはいけない役だと思っていたので、やります。似たところが確実にある分、許せないという思いもあるので」と、今もって清算しきれない気持ちをかかえながら挑む。
「ハイバイの作品の変化の過程も現れていると思います。ベースは同じ家族を元にした物語だけど、異なる形式の作品を一度に見てもらうのは、今のハイバイを知ってもらうには適しているのでは」と岩井は語る。一つにして二つの家族が、この夏、舞台の上であなたを待っている。
インタビュー・文/宮田文久
※構成/月刊ローチケ編集部 7月15日号より転載
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【プロフィール】
岩井秀人
■イワイ ヒデト ’74年、東京都出身。’18年12月には、中島哲也と共同で脚本をつとめた、映画『来る』が公開予定。