写真左から)前川優希、 坪倉康晴
誰もが知るおとぎ話を裁判にかけていくという斬新な舞台「おとぎ裁判 第4審」が3月25日(土)より東京・渋谷のCBGKシブゲキ!!にて上演される。演出を、裁判官・アケチ役も務める古谷大和が手掛け、音楽を桑原まこ、振付は梅棒の野田裕貴が務める。本作にゴースト役で出演する前川優希と、双子の弟・ダム役で出演する坪倉康晴の2人は、どのように作品に挑んでいくのか。話を聞いた。
――まずは、ご出演が決まった時のお気持ちを教えてください
前川 ご存じない方もいると思うんですけど、実は僕、今回が初めての出演じゃないんですよ(笑)。1作目は13公演中、7公演にトークゲストで出ているので、2回ご覧になった方は多分ほぼ僕を見ているはず。2作目もトークゲストで出たし、3作目は日替わりで出演しました。日替わり出演って言っても、僕がいない日に別の人がその役をやっているわけではなくて、いない日は“見えていない”設定なんです。役名も“ゲスト”で、幽霊でしたから(笑)。そんなこんなで、4作目にしてやっとレギュラーとしてクレジットされました!しかも、今回は古谷大和が演出も手掛けるということで…大和くんとは本当に古い付き合いなので、俳優としてだけじゃなく演出家としての彼と接するのも楽しみです。
坪倉 僕は今回が初参加です。4作目まで続いている作品に入ることは、最初は少しプレッシャーを感じましたね。カンパニーとしても、作品への想いが強くなっているだろうし、そこに自分が新しく入っていくわけですから。でも、いざ稽古に入ってみると、すごく安心できるし、落ち着いた空間でした。変に気を遣うこともなく、なんでも聞けるし、すごくあったかいカンパニーだと思います。
――おとぎ話をモチーフに裁判が巻き起こるという「おとぎ裁判」ですが、どんなところがこの作品の魅力だと思いますか?
前川 僕は「おとぎ裁判」の世界に関しては、本格的にではないにしろ、すべて関わってきていますが、まずはとにかく題材が面白いんですよ。おとぎ話を裁判に、っていうのも聞いたことがないし、別のお仕事の共演の方に「おとぎ裁判」の話をしたときも、「どういう話?」ってすごく興味を持ってくれるんですよね。作品の1歩目から、もう面白いんです。その上で、裏に流れている重厚なストーリーが、僕らの中だったり、脚本家さんの中だったりにあるんですね。想像を膨らませたり、考察をしてみたりするのも楽しいですし、初めてご覧になる方にも楽しんでいただけるような作品だと思います。
坪倉 脚本を読むと全体的にはすごくコメディチックで、僕が今まであまり経験したことのないようなタイプのお話です。物語のテンポとかをかなり重視していて、そのあたりはやっていてすごく面白いなと感じています。まだ台本を入れている最中ではあるんですけど、今回の役どころは後半になってくると気持ちをバーンと出していけるようなところがあるので、そこに到達するのがすごく楽しみ。あと、ショーのような場面もあるので、そういう部分も楽しみにしてほしいです。
――今回は「鏡の国のアリス」が取り上げられていますが、アリスの世界観などに関してはどのような印象をお持ちですか?
前川 アリスに「不思議の国のアリス」以外のお話があることを、今回初めて知りました(笑)。双子も、「不思議の国~」には出てないんですよね。そういう、意外と知られていない童話がお話の真実、みたいなものを、今回をきっかけに知ることができました。
坪倉 アリスには特別な世界観があるので、その世界観は守りつつですが、この作品ならではの世界観をもっともっと楽しんでいきたいと思っています。割と最初からそっちを意識していましたね。脚本を忠実にとらえることの方を大事にしていると思います。
――それぞれの役どころと、その魅力を教えてください
前川 今回は“ゲスト”改め、“ゴースト”になりました。役のキャラクターとしては、3作目で演じたものを引き継ぎつつ、紳士に、チャーミングに演じていきたいですね。脚本の中でも、演出面でも、今回僕がレギュラーとして仲間入りできたことの喜びを、割と役に重ねてしまっても大丈夫だと言われています。これまで、時に見えなかったりして(笑)、屋敷にとってはお客さんだった自分が、屋敷の住人になれている喜びを盛大に表現して構わない、って言ってくれているんですね。ゴーストはとっても嬉しいんだ!という気持ちを、ぜひお伝え出来たらと思います。
坪倉 僕が演じるダムはディー(五十嵐雅)と双子です。なので、まずはディーがどういう感じで来るのかな?と思っていたら、結構カワイイ感じだったので、最初は自分もカワイイ感じで食らいついていこうかと思ったんです。ただ、ダムは見栄っ張りなところもあると思って、そこからだんだん違いを付けていけるようになってきたと思います。ダムは本当はどんなふうに思っているんだろう?って感じてもらえたら嬉しいですね。そして後半はとにかくディーが大好きなキャラクターになるんですけど、そこは僕も五十嵐さんが大好きなので(笑)、あんまり意識することなくできそうだな、と思っています。
――稽古場の雰囲気はいかがですか?
坪倉 最初の稽古の時から、もうすでにそれぞれの立ち位置が明確でしたね。誰がいじられて、誰がいじって…みたいな(笑)。それも嫌な雰囲気のイジリじゃなくて、見てて楽しくなるような。じゃれ合い、みたいな感じ?すごく面白いんですよ。みなさん優しい方々ばかりですし、僕はすごくやりやすいです。
前川 僕と大和くんはすごく付き合いが長いし、和泉宗兵さんとも長いんですよね。そういう意味では、「おとぎ裁判」の現場だからこう、ってことではなくて、このメンバーだからこういう雰囲気になるよね、っていう感じがします。もともとの自分たちの関係値がにじみ出ているというかね。新キャストの方もいますけど、なんか馴染んでます。五十嵐雅さんとか、ほんとすごいですよ!稽古初日からメッチャ元気で、すげーハッピーな人だなって思いました。ムードがふわっと明るくなりますね。自分の人物像に役がねじ込まれるというか、役に寄せるんじゃなくて、役の方が寄ってくるようなバイタリティも感じます。決して稽古期間が長めの作品ではないんですけど、変な焦りもないし、思いつめるようなこともないし、みんなで作っていこうという意識がちゃんと全員の中に流れていて、本当にいい雰囲気ですよ。
――それぞれがやるべきことをやるし、みんなでやればいいものが作れると全員が確信して動けている現場なんですね
前川 でもまぁ、ホントはもうちょっとヤバいとか思ってもいい。芝居だけじゃなく、歌もダンスもありますからね。というか、たぶん康晴くんはちょっとヤバいと思ってると思う…双子として一緒にやる雅さんを見てるとそうじゃない?(笑)。
坪倉 いや全然、ほんとに楽しくやらせてもらっていますよ(笑)。
前川 2人を見ていると、ホントにいい兄弟な感じが出てきているもんね。
坪倉 雅さんに対しては、本当になにも気にせずにいろいろなことを言える感じですね。
前川 言えちゃうチャーミングさが雅さんにはあるんだよね。
坪倉 必要なら「もっと焦りましょうよ」とだって言えると思う。本当に人柄がいいし、さっき言ってたみたいに、雅さんがディーになっていくんじゃなくて、雅さんがディーを取り込んでいるような感じ。だからすごくやりやすいんですよね。
――古谷大和さんの演出の印象はいかがですか?
前川 ずっと役者として隣に立ってきたというか、近い関係値でお芝居を作ってきたので、演出家だとこういう言葉の選び方するんだ、とか新鮮な感じはありますね。演出家と役者という関係で立ったことはなかったので、距離感のようなものを改めてあてはめたような感じはありますね。多分、大和くんが演出をやるのって2回目くらいだと思うんですよ。でも、もう演出家としてのスイッチがあるんだ、すげーじゃん!って、実は思ってます。熟練演出家みたいな空気もあって、すごく素敵ですね。
坪倉 理想に当てはめていくように作っていくんじゃなくて、ディスカッションを通して、みんなの意見を取り入れながら舞台を作っていくんですね。そこは本当に強みだと思います。すごくやりやすいし、現場に気軽に聞いたりすることができない人がいないんですね。この現場なら、誰に何を言っても聞いても大丈夫っていう土台をしっかり作ってくれているのは、本当にありがたいです。
――「おとぎ裁判」はストーリーも魅力ですが、歌やダンスのショー的な部分もとっても魅力的です。振付は梅棒の野田裕貴さんですが、そのあたりはいかがですか?
前川 振付は、もう難しいです。僕は高校生の時にダンスを始めて、そこからこの世界に入ったんですけど、その時に梅棒さんのダンスレッスンに通わせていただいていたんです。別の作品でも梅棒の振付でやったことがあるし、他の皆さんよりは梅棒の振付になれているはずなんですけど、難しいです。ジャズダンス、シアタージャズって呼ばれるものだと思うんですけど、ハマればめっちゃカッコいいことはわかっているんです。わかっているからこそ、難しい…ぜひ、見届けてもらいたいです。
坪倉 アップテンポな楽しい曲もたくさんあるので、そういうところはショーとして存分に楽しんでいただきたいと思います。ストーリーに沿った歌とか、ちゃんとセリフとして出てくるような歌もあるので。この舞台のいろいろなところを楽しんでいただきたいです。あとダンスは音ハメみたいなところが結構難しいんですよ。でも、あっ今ハマった!みたいな瞬間があって、その時はめちゃくちゃ気持ちいい。練習すればするほど、楽しくなるダンスだと思いましたね。
前川 それで言うと、僕はダンスはやってきたけど、歌はやってこなかったので…ダンス稽古なら、終わった後に「ここはどうだっけ?」とか聞かれても、全部答えられます。でも歌稽古の後は…僕の顔は死んでます(笑)。とはいえ、本当に素敵な楽曲ですから、しっかりと歌いこなしたいと思います!
――稽古が忙しい中だと思いますが、仕事を頑張るためのオフの時間の過ごし方は?
前川 絶対に今じゃない、ってことをすることです。次の日も朝が早くて、絶対に早く風呂入って飯食って寝た方がいいんです。絶対にそうしたほうがいいけど、無駄に掃除を始めてみたり、特に見なくてもいい動画を見始めたりしちゃいますね。結果、睡眠が減ってるんですけど、睡眠時間が長ければリフレッシュできるのか、というとそうでもないんですよ。全部のスイッチをオフにして、今じゃないだろ、って思いつつも、そういう時間を作ることが気持ちのリセットに繋がっている気がします。絶対に良くないと思うけど(笑)。
坪倉 僕は割と、睡眠時間をしっかり取れたらリセットできるタイプですね。すごく嫌なこととか、考え事をめちゃくちゃしちゃうときも、寝れば次の日はスッキリできていますね。あんまり趣味とかも無いんですよ。暇なときは、誰かに暇電します。
前川 めっちゃかわいいじゃん!友だちとかかかってきたらメッチャ嬉しいよね。
坪倉 友だちっていうよりは、家族にかけるのが多いかな。母や兄が多いんですけど、仕事の話とかは一切せずに、プライベートの話ばっかりしていますね。電話していったん普段の自分に戻ってスッキリしたら、ちょっとだけ台本読んで寝ます。寝具とか、快眠グッズとかにこだわってもいいのかな?と思ったりもしているんですけど、結局変えられずにいます(笑)。
前川 わかる!俺はホテルとかでも合わないと寝付けなくなることがあって、寝具にはこだわった方がいいのかな?と思ってはいるけど、いろいろ考えているうちに面倒になっちゃうんだよね(笑)。
――(笑)。とはいえ、しっかり睡眠をとって稽古に臨んで、素敵な作品になるよう期待しています。最後に楽しみにしているみなさんにメッセージをお願いします!
坪倉 他にはない、不思議な世界観の作品だと思います。ストーリーからショーへ、そしてまたストーリーに戻って…と、この世界観を存分にみなさんに楽しんでいただきたいと思います。みんなで一緒にこの作品を作っていくので、ぜひ皆さんにご覧いただきたいです!
前川 この作品を楽しみにしてくださっている皆さん、たくさんいらっしゃると思います。でも、僕の方がもっと楽しみにしています(笑)。僕が楽しんでいる姿を、存分に見に来てください!そして、皆さんに参加していただいたりする部分もありますので、ぜひ、僕に負けじと楽しんでいただけたらと思います。よろしくお願いします!
取材・文/宮崎新之