アメツチプロジェクト Re:flag vol.1 「sacrifice」|湯本健一&龍人&氏家蓮 インタビュー

映像・舞台プロデューサーの安藤匠郎と脚本・演出家の山田英真が2019年に結成した演劇プロジェクト アメツチによる、アメツチプロジェクト Re:flag vol.1 「sacrifice」が、2023年6月28日(水)より上演される。国民的アイドルコンサート終わりにファミレスに集うファンらと、とある時代のとある国で神の教えを語る人。何かを信じるからこその争いが、2つの時代で巻き起ころうとしていた――。
現代と中世が交錯するこの物語に臨む、湯本健一、龍人、氏家蓮の3人に意気込みなどの話を聞いた。

――まずは作品に参加することになって、今の率直なお気持ちをお聞かせください

龍人 キャストに知り合いが結構いたので、その時点ですごく楽しいお芝居ができそうだと思いました。安心感があったので、作品も良くなるんじゃないかという予感がしましたね。

湯本 アメツチは初めてなんですけど、脚本・演出の山田英真さんは、以前演出していただいたことがあったんです。その時の英真さんが、すごく相談に乗っていただけるタイプだったんですよ。だから、すぐにお受けしようと思いましたし、台本をいただいてからも、素晴らしい脚本でやっぱり受けてよかったと思いました。

氏家 僕はプロデューサーの安藤匠郎さんと別現場でご一緒させていただいたことがあったんです。ほぼ初対面のときに、顔合わせして3分で「スマホの充電器、持ってる?」って聞かれて(笑)。面白い人だな、って思いました。お芝居のこともそれ以外のことも気さくに話してくださるんですよね。アメツチプロジェクトには参加したことがなかったのですが、ちょっとやりたいなと思っていたところにお話をいただけたので、嬉しかったですね。共演者も半分くらいは知り合いなので、面白くなりそうな気がしています。

――今回の物語は、現代と、中世らしき時代が交錯するような作りになっています。作品世界に触れたときの印象も聞かせてください

湯本 台本を読んでいると、現代だけじゃなくて中世のお話の部分にも、今の現代社会と重なる印象があったんですよ。セリフとかでも共感できる部分があったりして。なので、自分たちの住んでいる世界と重ねながら見たら、すごく面白いんじゃないかと思ってワクワクしています。

龍人 中世と現代といっても雰囲気が近くて、その切り替わりの部分もすごく面白いな、というのが第一印象でした。現代は現代で、こういう人っているよな…って共感してもらえる気がしますし、中世は中世で、すごく大切なことを言っている感じがして。その作り込み方が面白いと思います。

氏家 自分の身近ではない話なんだけど、でも身の回りにそういった人たちもいるのかな、という感じは最初からありました。現実世界でも、何かを崇拝している人っていますし、中世でも、何かを絶対的存在として崇めている人がいる。そこがイコールになるんですよね。物語の世界線は違うんですけど、共通しているところがあるので、すごく興味深いです。

――全キャストが2役を演じますが、ご自分の役の印象はいかがですか

湯本 現代のほうではツルタというアイドルを推している男で、年齢的にたぶん社会人。中世では、クレドという神学を学びながら大学教授をやっている男です。それぞれ、生活リズムが違う感じだと思うんですよね。中世のほうが大人っぽいと思うし、そういうところでどんどん2人の違いは出てくるんじゃないかと思っています。稽古の中でそのあたりはしっかり見つけていきたいですね。

氏家 現代のほうでは中館というファミレスの店員で、ファミレスに来ているアイドルオタクたちを第三者目線で見ているような役柄です。生田輝さんが演じる里奈が相方というか、同じファミレス店員なんですけど、この2人の会話も面白味があるんですよね。でも、中館にも何かズレているところがあるんじゃないか…?という気もしています。中世で生きるレガトに関しては、まだ謎ですね。明かされていないところもいくつもありそうな雰囲気がしているので、観客の皆さんにも「物語にとってどういう人物なんだ?」という感じをしっかり表現できたらと思っています。

龍人 現代でのタツトという役はアイドルファンのひとりで、中世はレフォルという男の役なんですけど、どちらにも共通していることがあるんです。それは湯本くんが演じるツルタ、クレドと友人であること。読み込んでいくと、結構キャラクターに違いはあるんですけど、仲のいい友人であることは変わっていないので、そこはしっかり表現できたらと思っています。

――どのように役を演じていきたいと考えていますか?

湯本 ツルタにしても、クレドにしても、自分の中に答えというか、強い想いを持っている役だと思っています。そこに、そうじゃないでしょ、と問いかけるところから、僕の役は物語が始まっているし、公判ではその想いで大きな部分が動いてしまったりもするので。それが良いことだったのかとかはまだ考えていかなければいけない部分ですけど、彼の持つ強い想い、答えを持っているというそのエネルギーはちゃんと表現したいですね。

龍人 僕は逆に、どちらの役もすごく確信をもっているような人ではないんです。でも、ツルタやクレドの友人で、一番の理解者でもある。そういられるように大切に演じたいと思いますね。どんな状況であっても、通じ合っているような、そんな存在で居たいと思っています。

氏家 僕の役は、そこに生きている人たち、起こる出来事に対して、いつも俯瞰して見ていて、その視点は大事にしたいと思っています。答えは1つじゃないとか、正しいことも1つじゃないとか。そういう気持ちを持ったうえで表現したいですね。でも、ただ俯瞰しているだけでもないと思っているので、観客から見えていない部分とかを、僕のセリフとかで伝えられたらいいなと思っています。

――稽古で楽しみにしていることや稽古の中でやりがいを感じる瞬間は?

湯本 場面転換がどんな感じになるのかは、すごく気になっていますね。舞台上に立ったまま、中世と現代の切り替えを演出でどういうふうに解消して表現していくのか、今の段階では自分の中でイメージできていなくて。英真さんがどう演出するのかすごく楽しみにしています。

龍人 すごく個人的なことなんですけど、僕が役の上でよくやりとりするのが、湯本くんと松波優輝さん。2人ともプライベートでも仲がいいんですよ。知り合ってからも結構長いんですけど、意外と今まで舞台上で絡んだことがなくて。だから、今回2人とがっつりお芝居できるのが楽しそうだと思っています。お芝居なんだけど、普段の感じでしゃべっちゃうような雰囲気もあって…そのあたりは稽古の中でうまく作っていきたいですね。

氏家 僕はどちらの役も観察者的な立ち位置なので、観客に近い目線になっているところはあると思うんです。だから逆にさみしいところもあって…。みんながやいのやいのやっているところを見ているポジションなので、なんかもっと一緒にお芝居したいなというか。でも、みんなの新しい姿を見られる気もしています。それに、みんなはこういうことを言っているけど、実は別の想いがあるのかもしれない、っていう観客にとってヒントというか違う発想を与えるポジションですね。でもただ傍観しているだけじゃなく、妙な癖もあるので、そこを稽古で面白く仕上げていけたらと思います。

湯本 例えば稽古終わりに声をかけに行ったときとか、何ページのこのセリフが…とか細かく言わなくても、「あそこのアレだよね」って通じ合っているときは、気持ちいいですね。別に細かく言葉を交わさなくても、共通の認識ができているというか。

龍人 そうそう!そういうのも含めて、稽古で0から作っていく作業は楽しいよね。完成に近づいていくと、なんか嬉しくなってきます。通し稽古が何度もできるようになってくると、積み上げたものが形になっていくような感覚があって、すごく好きな瞬間ですね。

氏家 通しとかで完成形というか、全体像が見えてくると手ごたえを感じるよね。ここに向かえばいいんだ、っていうのがわかってくる。個人的には、手ごたえを感じられる、できたかなって思えることって少なくて。だから演出家の方や共演者の方から「このシーン良かったよ」って言ってもらえた時は、すごく励みになるし自信につながるんですよ。正解はないので、ずっと考えることが大事なんだと思います。でも、そうやって考えている時間も含めて、総じて好きなことをやっているので、楽しいんですけどね。

――最後に、公演を楽しみにしている人にメッセージをお願いします

龍人 セリフの中には、現実ともリンクするような刺さるものも結構あると僕は感じたので、そこをお芝居でしっかり伝えて、みなさんに何か考えることを持ち帰っていただければと思っています。そういうきっかけになるようなものを、伝えられるように頑張ります!

氏家 プロデューサーの安藤さんの作品は映像などを使ったダイナミックな表現が多い印象だったんですけど、今回はストレートな作風で、日常会話をポンポンとかわしてく中で、心情を読み取っていくような、生っぽさのある作品になっています。ファミレスで聞こえてくるような、こういう話ってあるよね、みたいなリアルさ、ナチュラルな芝居が見られるんじゃないかと思うので、そういう部分にも注目していただきたいです。

湯本 台本を読んで、英真さんの中で伝えたいことがあって、その答えをすごく台本の中に書いていると思いました。それをもし、お客さんが英真さんが思っている答えとは違うところにたどり着いたとしても…いろいろな考え方を持ち帰ること、そういう気持ちを考える部分がたくさんあると思っています。すごく魅力的な台本だったので、とにかく純粋に、今回のお芝居に触れてほしいんです。キャストのファンだから、とか観劇のきっかけはいろいろあると思うんですけど、とにかくこの脚本は観てほしい、っていう気持ちが強くて。普段、お芝居を観ないっていう人にも、良かったら見てほしいと思います。ぜひ、足を運んでいただけたら!

取材・文/宮崎新之