東京芸術劇場プレイハウスで8月4日から公演中の、舞台『宝塚BOYS』が、前半キャスト「team SEA」の公演を終え、15日から、装いも新たに後半キャスト「team SKY」キャストの幕を開ける。
1945年から9年間、宝塚歌劇団に男子部が特設された、という史実を元に描かれた『宝塚BOYS』は、2007年初演から上演を重ね、今回が5度目の上演となる。
今回は2チーム制の公演でもあり、後半チームのteam SKYは第六期生となるBOYSで、歴代平均年齢最年少のチームとなる。2.5次元の舞台などを主戦場にしているキャストも多く、従来のBOYSとは趣が異なる、瑞々しい新風を吹き込んでいる。
本番に先立ち、最終リハーサルが行われた。戦後まもなく、宝塚歌劇団の創始者・小林一三の元に、歌劇団へ男性登用を願う嘆願書が届く。その一通の手紙は小林の想いと合致し、戦後間もない1945年12月に宝塚歌劇団男子部は特設された。
物語は、入団初日の稽古場から始まる。上原金蔵(永田崇人)は、嘆願書を送った張本人であり、熱血で純粋な青年。男子部のリーダーとなり、皆を引っ張ってゆこうとするが、その道は迷いと苦悩の連続となる。電気屋の息子で、戦時中に満州で慰問団に遭遇し、ショーに魅せられた竹内重雄(溝口琢矢)は、柔らかさの中に時に決然とした想いを見せる。宝塚のオーケストラメンバーで、関西出身の太田川剛(塩田康平)は、茶目っ気溢れるムードメーカー、登場でその場がぱっと明るくなる。旅芸人の息子長谷川好弥(富田健太郎)は色白の優男、カラっと明るく振る舞いながらも過酷な過去に耐える強さが胸を打つ。闇市の愚連隊出身の山田浩二(山口大地)は、周囲を威嚇しているが、どこか品のある不思議な存在感を持つ。父もダンサーであったというプロダンサーの星野丈治(中塚皓平)は、すらっと長い手足を存分に生かし華麗なダンスで魅了する。追加で男子部に入部する竹田幹夫(川原一馬)は、可愛らしさと逞しさを併せ持つ好青年だが、もともと山田の知り合いで、山田の秘密を知っているようだ。歌劇団の経理担当・池田和也(山西惇)が、男子部の担当になるが、自らは「舞台のことはよくわからない」と言う。ただ共に過ごす中で、メンバーは池田の思いがけぬ面を知ることになる。山西演じる池田の人柄や深みが物語の中で大きな意味を担う。
そして、寮母の君原佳枝(愛華みれ)は、男子部メンバーが入団したその時から、夢と汗と涙と苦悩のすべてを見守り続ける。愛華演ずる君原の、さりげなくどこまでも優しい眼差しに、何度となく救われるような気持になる。まだ終戦間もなく、それぞれ、特攻隊や戦地から奇跡的に生還した青年達もいる。戦争で奪われた青春と年月を必死に取り戻そうとするように、無謀とも言える華やかな夢にがむしゃらに打ち込む姿が胸を打つ。team SKYのピュアさ、一途さが、ストレートに、リアリティを持って伝わってくる。まさに”宝塚BOYS”がそこにいる。team SKYの初日は奇しくも終戦記念日。劇中何度となく語られる、志半ばで去った友たちのためにも、何としても夢を叶えたい、そう決意をした青年たちの想いを、平成の青年たちがどのようなエネルギーで演ずるのか、その姿を見てみたい。公演に先立ち、上原金蔵役の永田崇人と、竹内重雄役の溝口琢矢がコメントを寄せた。
<永田崇人 コメント>
僕ら六期目のBOYSは、平均年齢が今までで一番若く、その分戦争から最もかけ離れている人間たちの集まりです。ですが稽古場では、皆で”苦い飯を食う”というような経験もして、それが舞台に表現されているんじゃないかとも思います。僕らにしかできない『宝塚BOYS』があると改めて感じましたし、team SEAのお兄さん達とは違う僕らのBOYS、それを発見する楽しさもあると思います。「この作品に出会えた人は幸せだ」と仰った方がいるのですが、それはご覧になる方も、そして、僕らのように関わることが出来た人間もそうだと思います。
本当に幸せだなと思える、大好きな作品です。
是非、劇場に足を運んで、一緒に青春をして頂きたいと思います。
<溝口琢矢 コメント>
こんにちは、溝口琢矢です。『宝塚BOYS』、今回2チームあり、僕たちは“6th BOYS(ろくボーイズ)”となるのですが、とにかく緊張しております。チームでは僕と富田が最年少なんですが、メンバーはみんな凄く優しくて、崇人君含め皆で支えて下さっていて、本当にいいチームが出来上がっているんじゃないかと思っています。この若さとエネルギーは、舞台で盛大に発揮される筈ですので、是非皆様楽しみに、そしてワクワクしながらお越し頂ければと思います。よろしくお願いします。
撮影/桜井隆幸