物語の鍵は“嘘”。問題を隠す中村の奮闘に注目!
ドラマ「ハヤブサ消防団」(’23年)など、映像での活躍も目覚ましい中村倫也。彼の次なる舞台は、“笑劇王”レイ・クーニーによるワンシチュエーションコメディだ。
「僕が大好きなバナナマンさんのコントに、酔った日村(勇紀)さんが、設楽(統)さんの家で吐いてしまい、隠そう隠そうとする『puke』というネタがあるんですけど、やってしまったことや、ついている嘘は最悪なのに、必死で頑張る日村さんをなぜか応援したくなるんです。見ている人が寄り添えないと笑いにならないというのは、この作品もきっと同じ。前提として、僕らに応援したくなるようなチャーミングさがないとダメなんだなって思っています」
中村が演じるのは、ユースケ・サンタマリア扮する副大臣リチャードの秘書・ジョージ。彼が隠そうとするのは、リチャードの不倫と、部屋に転がる謎の死体だ。
役については、「ちゃんとしてる奴なのか、ちゃんとしたい奴なのか」と公式動画で分析。その心を深掘りしてみると…。
「自分を律しようとしている人なのか、本当ははしゃぎたいのにできない人なのか。外から見た印象は中間点なので似ていても、どちらの方向なのかで真逆の意味になりますよね。その辺りは稽古の中で探っていきたい。リチャードも、あの飄々とした佇まいのユースケさんが演じることで、独特の音色がプラスされ、脚本以上の情報量になると思う。彼の周りを衛星のように動き回る秘書として、素敵な相互作用を重ねていけたらいいですね」
演出のマギーとは、22歳で出演した『バンデラスと憂鬱な珈琲』(’09年)以来。堤真一ら強者だらけのキャストの中で、「全然太刀打ちできなかった」と当時を振り返る。
「ものすごく楽しかったけど、ものすごく悔しかった作品。ただ、マギーさんが“芝居はあんまり上手くないけど、人との関わり方は上手いね”と言ってくれて、人としての部分を褒めてもらえたのは嬉しかったです。マギーさんが再び演出席から僕を見る構図は定点観測的でもあり、“あ〜これ前も言われたな、俺変わってねえな”ということも絶対出てくると思います(笑)。恥ずかしくもあり、楽しくもある、ふくよかな時間になりそうです」
物語を大きく転がす要因となる“嘘”について、どんなイメージを持っているかを尋ねると、さすがの答えが返ってきた。
「大人であれば誰しも、自分のためにつく嘘と人のためにつく嘘を使い分けながら生きていると思います。要は使いようで、人を笑顔にする料理のためにも、人を傷つける凶器としても使える包丁のようなものではないでしょうか」
どんなに映像で注目されても、「軸足は舞台」。「育ててもらった川であり、心の故郷」と、演劇への想いは変わらず熱い。最後に読者へのメッセージをリクエストすると、これまた彼らしいユーモアを交えて応えてくれた。
「観たいと思ってくださっていた方は、ぜひそのまま楽しみに、ご覧になってください。観るか迷ってらっしゃる方に、気楽に来てとは言えないですけど、演劇はただ見る以上の“体験”。もしかしたら日々の悩みも吹っ飛ばす、記憶に残る一日になるかもしれないので、可能ならぜひいらしてください。まったく興味がないよという方も、このページをご覧になったのは何かの縁ですから、これも人助けだと思って、ぜひ(笑)。きっとご利益があると思います」
インタビュー&文/羽成奈穂子
※構成/月刊ローチケ編集部 10月15日号より転載
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
中村倫也
■ナカムラ トモヤ
話題のテレビドラマや映画に数多く出演。現在放送中の「ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪」(NHK Eテレ)でナレーションを担当。待機作には「劇場版 SPY×FAMI LYCODE: White」(12/22公開)がある。