HIGH CARD the STAGE – CRACK A HAND|山本一慶 インタビュー

舞台だからできる表現を探求し続ける

様々なメディアミックスを展開中の『HIGHCARD』がついに舞台化。演出を務めるのは、脚本・演出家としても活躍する俳優の山本一慶だ。

「僕自身、2.5次元が世界的に認知されていくのと一緒に自分も俳優として成長を重ねてきたような気持ちがありました。2.5次元がいつか日本が誇れる文化として根づいていくことを夢見ながら舞台に立ち続けてきたところもあるので、こうして2.5次元作品の演出に挑戦させていただけることは本当に嬉しいですし、やっとできるんだという思いです」

カードを使った異能力バトルをどう見せるかが、舞台化の上で大きな注目のポイントだ。

「観客の想像力は、舞台表現の大切なツールの一つ。ちゃんとこういうアプローチで行きますよという作品の世界観を最初に提示できていれば、どんなに舞台で表現するのが難しいようなことでも、自然とお客さんはそれぞれの想像力で補ってくださるものだと思います。そういう意味でも『HIGH CARD』はお客さんの力を借りていける種をいっぱい蒔ける作品。お客さんの脳内で舞台が完成していく体験を提供できれば」

その上で、山本自身が見どころとして挙げるのは、多彩なキャラクターが紡ぎあげる人間ドラマだ。

「パッと見はすごくクールでオシャレな世界なんですけど、その中で生きるキャラクターはそれぞれお茶目なところもありつつ熱量を秘めている。まだ未熟なキャラクターが、胸の内に熱い想いを抱えながら互いに成長し合う姿には、きっと観ているお客さんも勇気づけられると思います」

フィン・オールドマン役を演じるのは赤澤遼太郎。そのバディであるクリス・レッドグレイヴ役は丘山晴己が務める。

「遼太郎はお茶目なんだけど真面目。お芝居に対して全力で取り組んでくれる素敵な俳優です。フィンとは明るさが似ている気がするんですよね。2人とも素敵な笑顔の持ち主だけど、決して突き抜けて明るいわけではなく、ちゃんと人生に悩んでいる。そういうところがリンクするのかなと。丘山さんとは初めましてです。いろいろな方から『独自のワールドを持っている人だよ』という話を耳にしているのですが、(ヴィジャイ·クマール·シン役の)松田岳もワールドがあるんですよ。そんな不思議な個性を持っている俳優が2人も揃うなんて面白いカンパニーになりそうです(笑)」

作中の言葉に「必要なのはマナーと気品、そして命を張れる覚悟です」というものがある。では面白い2.5次元舞台をつくるために必要なものを3つ挙げるとすると…?

「まず絶対に必要なのが、原作愛。キャストやお客さんの原作を愛する気持ちが舞台の支えになるんです。次に必要なのが、探求。2.5次元は再現率を求められる世界ですが、決して再現だけがすべてではない。舞台だからできる表現を探求し続ける姿勢が大事だと思っています。最後は、成長。2.5次元のように映像などを用いた特殊な表現が多い作品は劇場に入って初めて発見することもたくさんあります。こういう演出になるんだと知ることで、役者も欲が出て、じゃあここはもっとこうしようというアイデアが生まれる。そういう成長を止めないことが作品を面白くするんです」

インタビュー&文/横川良明

※構成/月刊ローチケ編集部 11月15日号より転載

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【プロフィール】

山本一慶
■ヤマモト イッケイ 
ミュージカルや舞台を中心に活躍。’21年にシェイクスピア作品「夏の夜の夢」で演出家としても活動を開始した。