吾峠呼世晴による大人気漫画『鬼滅の刃』を舞台化した、舞台「鬼滅の刃」。シリーズ4作目となる『舞台「鬼滅の刃」其ノ肆 遊郭潜入』が、2023年11月~12月に大阪・東京の2都市で上演される。本作から、ミュージカル『刀剣乱舞』など多くの舞台に出演するほかシンガーソングライターとしても活躍する阪本奨悟が、新たに竈門炭治郎役を演じることでも話題に。本作で描かれるのはアニメ化もされている「遊郭編」。煌びやかな花街で炭治郎たちと対峙する鬼の兄妹、上弦の陸・堕姫役を佐竹莉奈、その兄・妓夫太郎役を遠山裕介が演じる。共にミュージカルで活躍してきて旧知の仲という二人に、初の2.5次元作品にかける思いや役作りになどについて、たっぷり語ってもらった。
――ミュージカルでご活躍のお二人ですが、2.5次元舞台の人気作、『舞台「鬼滅の刃」其ノ肆 遊郭潜入』にご出演される心境を教えていただけますでしょうか?
佐竹 昔からアニメや漫画にすごく興味があって、大学でもアニメーションの授業を受けている時期がありました。私はアメリカ人と日本人の両親の元に生まれて、常に日本に居続けるべきなのかアメリカでいろいろ挑戦したほうがいいのか考えてきて。結局は、両方で仕事をしたいという思いに行きついたのですが、今、日本でお仕事をさせていただいている中で、日本にいるからこそやれることをやりたいという思いが強くありました。日本が誇る漫画やアニメを題材にした2.5次元の舞台は、日本ならではの世界に誇れるものだと思うので、やってみたいなっていうのがすごくあって。今回、堕姫役のオーディションのお話をいただいたとき、もう迷うことなく「やりたい!」って。その舞台の出演者としてこの場にいられることがすごく嬉しいです。
遠山 原作ありきの作品なので緊張をしているというか、大切にやらなければと思っていますね。漫画を読み込んで役作りをしっかりして、きちんと作りあげないとなと。2.5次元はそのキャラクターありきですから、そこに合わせていかなきゃというドキドキ感と、楽しみ感ももちろんありますけど。自分のオリジナルがどれだけ出せるのかなというのもありますし、挑戦って感じですかね。
――「鬼滅の刃」の物語についてはどんな印象を持っていましたか?
佐竹 アニメの第一話を見たときに、想像以上に残酷で衝撃を受けてしまって、実は何話か見ていったん休憩したんですけど(笑)。見続けていくと、ハードな作品という印象から、人間らしさや愛情とかどんどん見えてくるものがあって。あれだけのトラウマを乗り越えて、戦い続けている主人公の炭治郎にはものすごく励まされますし、子供たちの心を鷲掴みにする理由がわかりました。
遠山 多くの人の心を惹きつけるのは、僕は、炭治郎の愛なんじゃないかなって思いますね。鬼に対しても本当に優しいんですよ。
――「遊郭編」にはどんな感想をお持ちですか?
遠山 これはもう傑作だと思いますね。もちろんどのお話も良いのですが、「遊郭編」は本当に泣けます。
禰豆子に対する炭治郎の兄妹愛と、堕姫に対する妓夫太郎の兄妹愛。これがやっぱり、もう悲しく描かれていますよね。
佐竹 この舞台のチラシのビジュアルの並びを見ただけでも、ちょっと泣きそう。
――過去に、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(2011、2013)、ミュージカル「オーシャンズ11」(2014)で共演されているお二人ですが、今回、兄妹役を演じることを知ったときは、どのように思われましたか?
佐竹 びっくりしました。
遠山 お~莉奈かよ~、良かった~って(笑)。二人とも顔がけっこう濃い系なので、兄妹役めっちゃ合うじゃんって(笑)。
佐竹 アハハハハ!2011年に私の初舞台のミュージカル「ロミオ&ジュリエット」でご一緒させていただいて。私はジュリエット役で、同じキャピュレット家チームに裕ちゃんと双子の弟の大ちゃん(当銀大輔)も出演されていたので、たくさん面倒を見ていただきました。本当にお兄ちゃんみたいな感じでアドバイスもくれましたし。
遠山 2013年のロミジュリの再演のときに、ケンカもしたしね(笑)。
佐竹 懐かしい〜(笑)。最初から親戚感満載だったから、10年ぶりの共演が兄妹役で、この堕姫と妓夫太郎をやるなんて、ちょっと笑っちゃいました。お互いの舞台を観にいって楽屋で会ったりしていたので、そんなに久しぶりの感じはしないんですけど。
遠山 そうだね(笑)。でも、莉奈で納得しました。堕姫役ぴったりだなって。二人で役を作っていけると思いましたね。
――本作でお二人が演じられる、堕姫と妓夫太郎について、ご自身が思うそれぞれのキャラクターの魅力を教えていただけますでしょうか?
佐竹 ここまでときめくキャラクターは、久しぶりだなって。一瞬で好きになってしまいました。堕姫の見た目もすごく好きだし、悪役なんですけど、傲慢な性格も不思議な魅力があって、ディーバっぽくてわがままなお姫様みたいなところにも惹かれるし。妓夫太郎の前では泣き虫になったり、強いときと弱いときのギャップとかにもすごくときめきます。
遠山 妓夫太郎の魅力は、やっぱり妹思いのところじゃないですかね。人間時代の妓夫太郎は、幼少期からいじめられていて本当に嫌なことしかなかった不幸な人生で、その中で唯一の光が妹の梅(堕姫の人間時代の名前)だった。誰からも愛をもらっていない妓夫太郎が、「可愛い妹」だけに愛を与えていた。彼が持っている優しさはそこだけなんだよね。不幸で妬みばっかりもっているヤツに、家族への愛があったんだなっていう。そこがなんか魅力的なんじゃないかなと。
――キャラクタービジュアルの完成度も素晴らしいのですが、ご自身の感想は?
佐竹 堕姫は圧倒的に綺麗でいなきゃいけないから、もうプレッシャーがすごくて。本番に向けて、週一でエステに行って、ジムに行って、体作りも頑張っています。だからビジュアル撮影の前も週何回か、パーソナルトレーナーについてもらって鍛えました。漫画の堕姫を参考にしながら。
遠山 おお~偉いね。ビジュアルを自分で見てどうなの?
佐竹 自分だから、もっと欠点を残したくないとか完璧主義が出ちゃうけど、写真を初めて見せてもらったときは、スタッフの皆さんの力が結集されてキャラクターが完成するんだなと、本当に感動しました。すごくテンションが上がったし、早くみんなに観て欲しいと思いました。
遠山 ほんと顔もちっちゃいし、スタイルいいし、まさに堕姫だなと僕も思いましたよ。
佐竹 嬉しい!妓夫太郎のビジュアルのご感想は?
遠山 これはね~いろんな方に感謝です。もう本当に完成度が高くて、メイクもすべて仕上がった自分を見たときに感動しました。うわ~、妓夫太郎じゃんって。SNSでビジュアルを見た友達とか学生時代の同級生から、「鬼滅やるの? 妓夫太郎やばいな」って、久々に連絡がきた(笑)。
――炭治郎たちとの激しいド派手な戦いのシーンにも期待が高まりますが、お二人が思われる本作の見どころを教えていただけますでしょうか?
佐竹 漫画の描写をいかにして舞台で人間が表現するのかっていうところに、私たち役者もびっくり驚きの連続なので、そこも楽しみにしてもらいたいですね。アクションも命をかけて、みんなで挑んでいるので、それを観に来てほしいです。そして「いざド派手に開幕!!」というキャッチコピー通りに、本当に煌びやかな舞台になると思うので、そこは一番期待していただきたいですね。
遠山 人間がやる演劇ならではの漫画の再現ですよね。そこを楽しみにしていただけたらなと思います。映像だけに頼らずに、人間の技を使って表現したいと、脚本・演出の末満(健一)さんもおっしゃっていたので、僕も楽しみです。本作でももちろん歌わせていただきます。激しく戦いながらの歌もあるので、そこも是非、楽しんでいただけたらなと思います。
インタビュー・文/井ノ口裕子
撮影/篠塚ようこ