若井おさむ、桜 稲垣早希ら“アニメキャラ芸人”として知られる吉本芸人たちによるお笑いユニット・劇団アニメ座。その最新作は、2.5次元を主戦場とする舞台俳優とのコラボレーション。アニメキャラ芸人×舞台俳優というハイブリッドを披露する。それが、4月5日から開幕の『劇団アニメ座ハイブリッド-舞台俳優は伊達じゃない!-』だ。いったいこのケミストリーはどんな現象を舞台に巻き起こすのか。出演者の寿里、眞嶋秀斗、溝口琢矢、そして日替わりゲストの橋本祥平、白又敦、高野洸の6人に話を聞いた。
――まずは本を読んでみての感想をお聞かせください。
寿里「ハイブリッドとありますが、まさにこの作品はコントとお芝居の両立。今回の僕たちの役割は、そのお芝居の部分により強めの土壌をつくること。その上で芸人さんたちに自由に遊んでもらえたら、間違いなく面白い作品になるだろうな、と。短い時間の中でどれだけその土壌を固められるかが勝負だなと思いました」
――天津 向さんの書く脚本は、やはり普段のお芝居の脚本とは違いますか。
寿里「やっぱり芸人さんの書く本だけあって、真面目なシーンにも随所にボケが挟まっているんですね。その間、「我々はどういればいいんだろう……」ということは読みながら気になりました(笑)。そういったあたりは、いつもやらせていただくお芝居とはまた違うところですね」
溝口「僕は最初に読んだのが電車の中だったんですけど、本当に面白くて、笑いをこらえるのに必死でした(笑)。経験したことのないジャンルの舞台なので、とにかく足を引っ張らないようにしたいですね。この本をやる上で重要なのは、間のとり方。家でしっかり読み込んで、準備してこなくちゃなと思いました」
――「本を読んで衝撃を受けた」とコメントされていましたよね。
溝口「芸人のみなさんはお笑いのプロ。僕らの本業は、お芝居。お互いジャンルが違うだけに、ハイブリッドとは言え、本当にちゃんと融合できるのか、下手したらチープになるんじゃないかという不安があったんです。でも、台本を読んだら普通に面白くて、そんな不安は一切吹き飛びました(笑)。そういう意味でもすごく衝撃でしたね」
眞嶋「お笑い芸人さんと一緒にお仕事をやるのが初めてなので、僕も最初は怖くて仕方なかったんです。でも、台本を読んだら「これは絶対にやりたい!」って一気に惹きこまれました。世界観がすごいんですよ。次々といろんなキャラクターが出てきて。それこそハイブリッドでしか見せられない面白さだなと思います」
――ずばり見どころは?
眞嶋「殺陣が結構ありそうなので、そこは注目してほしいですね。僕たち俳優陣としても、今まで経験してきたものを出せる場。しっかり熱量を持って演じて、作品のスパイスになれたらなと思っています」
――橋本さん、白又さん、高野さんはそれぞれ日替わりゲストとして出演します。
高野「日替わりゲストとしてお芝居に参加させていただくのは今回が初めて。どこまでできるか不安ですけど、みなさんがつくり上げた世界をぶち壊さないようにしっかりやらせていただきたいです。あとは、コントと俳優が絡み合うというのも、僕にとっては未知の経験。面白いものを間近で見ながら、舞台上でちゃんと役として存在しなければならないのが難しいだろうな、と今からちょっとドキドキしています」
橋本「僕が出させていただくのは初日なんですけど、お客さんもどういうポジションで日替わりゲストが出てくるのかわからない状態。そこでどれだけ伝えられるかが、今回の僕の役目ですね。毎回ゲストが替わるので、その分、演者さんにもお客さんにも、新鮮な気持ちで楽しんでもらえるポジションでいたいなと思っています」
白又「この間、本読みに参加させていただいたんですけど、本の世界にとらわれていないというか、自分たちの個性をどんどん出していけるような本だなと感じました。ゲストによって色も変わってくるだろうし、そこが楽しみなところではありますね」
――芸人さんたちがアニメキャラそのままで演じられているのを聞いていかがでしたか。
寿里「「テレビで観たことある!」ってなったよね(笑)」
白又「みなさん、目を瞑ったら本物かモノマネかわからないくらいクオリティが高くて、さすがだなとビックリしました。とは言え、同じ舞台の上に立つ人間として、僕たちは僕たちで培ってきたものがある。そこを活かしてぶつかっていければと思います」
――本読みに参加されたのは、寿里さん、眞嶋さん、溝口さん、白又さんの4人と伺っています。ぜひ本読みの感想をいただければ。
寿里「僕のツボは、キャプテン★ザコさんでした(笑)。脚本の向さんが「一語一句同じじゃなくていいから」というスタンスの方で。芸人さんたちにやりたいことをやらせてあげるという空気感を本読みの段階からつくってくださっていたんですね。だから僕たちもきっちり本の通りにやるというよりは、そのシーンに必要なものは何かを考えつつ、ひとつひとつ反応していくという感じで。もうただただ楽しい時間でした」
眞嶋「芸人さんが登場するたびに、それぞれの色が発せられて、それが掛け合いによって混じって、どんどん世界観が広がっていくんです。その様子が、本読みだけでも感じられたのが印象的でした。だからこそ、僕もどういう色を発していくのか追求していきたいし、役者と芸人さんが混じることで、どんな反応が起こるのかがすごく楽しみです」
溝口「とにかく本読みの段階からライブ感がすごかったです。きっとお芝居だと思ってご覧になった方にも、芸人さんが好きで劇場にいらした方にも、お笑いの良さ、役者の良さ、どちらも感じていただける舞台になると思います。老若男女楽しめる作品なので、ぜひいろんな人に観てほしいですね」
白又「僕は個人的にベジータ役のR藤本さんがツボでした(笑)。似てるんだけど、「ベジ…ベジータ!?」って感じで(笑)、その言葉にしきれない感じが面白かったです。モノマネ芸人さんはとにかく原作愛がすごい。僕らの場合、2.5次元の作品をやるとき、稽古期間を含めてもそのキャラクターに関わるのは2ヶ月くらい。でも、みなさんはずっとそのキャラクターに関わり続けているので、理解度が半端ないんです。「モノマネしてください」ってお願いしたときも、普通じゃ出てこないようなマニアックな台詞が出てきたり……(笑)。その勉強熱心な姿勢にはすごく刺激を受けましたね」
――本番に向けて楽しみなことや課題だなと思うところを教えてください。
寿里「タイトルにえらいハードルが高いフレーズがついていて、「このタイトルをつけたの誰なんだろう!?」って思ってるんですけど(笑)。ちゃんと伊達じゃないところを見せるためにも、しっかり芝居の土壌を厚くすることに力を入れていければなと思います」
溝口「その土壌をつくった上で、役者陣がどれくらい笑いに介入していくかが難しいところ。このメンバーの中にも、笑いに絡む人もいれば絡まない人もいて。ハイブリッドを見せるという上でも、そこが何よりの課題ですね」
眞嶋「顔合わせのときに「舞台役者のみなさんもオリジナルキャラクターを演じるつもりで」とおっしゃっていて。だから、僕も稽古を通じて自分のキャラクターを深めていきたいなと思っています。たぶんそうしないとこの濃さと熱さには立ち向かえない(笑)。ひとりのオリジナルキャラクターとして舞台に立てるように、そしてみんなでひとつの作品をつくれるように頑張っていきたいと思います」
高野「芸人さんがモノマネしながら舞台上に立たれるのというのが、この作品の面白さ。その中に僕たち役者陣が衣装を着て入り込んだら、それだけでもうカオスな空間ですよね。間違いなくこの作品でしか見られない光景だと思うので、僕は1日しか参加できないですけど、むしろ他の日にちにお客さんとして観に行きたいなと思いました(笑)」
橋本「僕は芸人さんが大好きなので、芸人さんたちのお芝居を見たら絶対ソワソワして自分の芝居どころじゃなくなると思うんですよ。だから、シーンが止まらないように気をつけなきゃって今から注意しています(笑)。とにかく脚本が、最初に読んだときから「これはもう絶対成功じゃん」って確信できるくらい面白くて。本だけでこれだけ面白いんだから、実際に人が動いて台詞を発してみたら、何十倍も面白くなるだろうなとワクワクしています」
白又「台本上での僕たち日替わりゲストの描かれ方がすごく特殊で、「台本を覚えきらなくていい」というような指示が書いてあるんですね。じゃあ、僕らは舞台上でどう存在すればいいのか、まだ僕ら自身も手探り状態。ほぼエチュードでつくっていくようなシーンもあるし、そこにも即対応できるよう、しっかり食らいついていければと思います」
取材・文・撮影:横川良明
【プロフィール】
寿里
■ジュリ 1981年2月16日生まれ。千葉県出身。ミュージカル「ヘタリア」シリーズ、舞台『北斗の拳 -世紀末ザコ伝説-』などに出演。
眞嶋 秀斗
■マシマ シュウト 1995年8月8日生まれ。群馬県出身。ミュージカル『テニスの王子様』、斬劇『戦国BASARA』などに出演。
溝口 琢矢
■ミゾグチ タクヤ 1995年5月9日生まれ。東京都出身。『仮面ライダーゴースト』などに出演する他、5次元アイドルプロジェクト“ドリフェス!”では『DearDream』のメンバーとしても活躍。
橋本 祥平
■ハシモト ショウヘイ 1993年12月31日生まれ。神奈川県出身。舞台『刀剣乱舞』や舞台『文豪ストレイドッグス』などに出演。
白又 敦
■シラマタ アツシ 1994年3月22日生まれ。神奈川県出身。斬劇『戦国BASARA』や舞台『おおきく振りかぶって』などに出演。
高野 洸
■タカノ アキラ 1997年7月22日。福岡県出身。ミュージカル『刀剣乱舞』やミュージカル『Dance with Devils』に出演。