内田けんじが監督・脚本を務めた2012年公開の映画「鍵泥棒のメソッド」が、『鍵泥棒のメソッド→リブート』として新たに舞台で上演される。2014年、2017年にも舞台化されているが、今回は脚本を大幅にアップデートし、コメディ要素を増量。上演台本と演出をマギーが手掛け、キャストには望月歩、少路勇介、秋元真夏、長谷川朝晴、鈴木杏樹らが名を連ねた。乃木坂46を卒業して以来、初めての舞台に挑む秋元は今、どのような心境でいるのか。話を聞いた。
――まずはご出演が決まって、どのようなお気持ちになりましたか?
舞台自体がすごく久しぶりだったので、どんな感じだったっけ?と思い出すところから始まりましたね。作品自体は知っていましたし、演出をマギーさんがされるということで、とても楽しみにしていました。舞台は、その日にやったものはその日にしか出せないような、1回1回が違うものになっていくような感覚です。内容は同じでも、ちょっと表現の仕方が違うだけで変化していくので、そういう部分ではライブに近いのかな、という気持ち。その場にいる人たちを沸かすことができる舞台は、見る側としてはすごくカッコいい!と思っていました。
――演じる側としての舞台は、どのように感じていますか。
舞台に立つ側としては…以前に出演させていただいたときに、お客さんと喜んだり、笑ったりというポイントが同じになる瞬間があって。今までに感じたことの無い空間でした。乃木坂でやってきたライブパフォーマンスだと、勢いで盛り上がっていく感覚ですけど、舞台はみんなでちょっとずつ積み上げていくような感覚。近いものはあると思うんですけど、そこはちょっと違うかもしれないですね。
――お話の印象はいかがですか?
シリアスなシーンはあるのに、めちゃくちゃ面白いんですよ。ハラハラする場面もあるんですけど、最後にはいいものを得られたような感覚になる。以前、映画を観たときは、自分の人生について考えたくなるような感じになったんですよ。それでいて、すごくほっこりするんですよね。もし私が主人公のように鍵を拾ってしまったら…とか考えたりして。私自身はビビりなので、入れ替わろうとは思わないですけど(笑)、でもそれは私が今、そんなに困ったりしていないからかもしれない、とか…。もし悩んでいる何かがあったら、もしかしたら?とか、いろんなパターンを考えてみたりしましたね。そうやって、終わってからも頭を巡らせて考えるのが楽しい作品でした。
――今回演じられる香苗という女性はどのように捉えていますか?
今回のお話があって、映画もまた見返したんですが、やっぱり香苗を中心に観ちゃいましたね。主人公の桜井が記憶を失っているという中で、そこに寄り添って記憶を取り戻そうと、ああでもない、こうでもないとやっていて、全然知らない人なのにそれだけのことができる優しさや、最終的に結婚まで考えてしまう強さなど、自分にはないところがたくさんあって。カッコいい女性だと思いました。あの思い切りの良さはどこから来るんだろう?って。自分がコレ!と決めたらすぐにやってみる感じがうらやましいです。私は、すごく慎重に、安全そうな道ばかり選んでしまうので(笑)
――香苗を演じるにあたって、どういうことが大切になってきそうですか?
気持ちをちゃんと伝えたりとか、分かりやすく表現したりすることは香苗のいいところだと思うんです。私自身は思ったことをスパッと言うのが苦手なので、そのあたりは役にしっかり入ってやっていかなきゃいけない部分じゃないかと感じています。すぐ「うーん、どうしよう…」ってなりがちなので、そのマインドから変えていかないとですね。
――共演のみなさんの印象はいかがですか?
ほとんどのみなさんが初めましてなんですよ。主演の望月歩さんとは取材で一緒になったんですが、ちょっとおしゃべりした感じだと、お互いに人見知りで…でも互いにそれを理解しつつ、うまく仲良くやっていけそうな感じがしています。主演として、桜井のイメージ像もしっかりとあるとお話されていたので、私もそこに並んで、一緒に頑張っていくのが楽しみになりました。
――稽古で楽しみにしていることはありますか?
演出のマギーさんにちらっとお会いした印象だと、すごく明るい方だったので、稽古場もきっと明るくて、みんなで話し合いながら作り上げていくような感じになるんじゃないかと予想しています。私も心を閉ざさずに、人見知りを出さないようにしたいですね。安心して心を開ける環境になりそうな気がしています。早く飛び込んでいきたいですね。
――以前の舞台の現場の時は、秋元さん自身はどんな感じになられたんですか?
前回の時は、かなり気合を入れてましたね。緊張していました。前回参加させていただいた舞台は大先輩方に囲まれていたので、かなり固くなってしまっていたんです。それを先輩方がほぐしてくださって、今思うとあの時は逆に考えすぎていたような気もしています。堅苦しくなりすぎてしまうと、きっとみんなでタッグを組んで作りあげることが難しくなってしまうと思うので、今回はそういうところもしっかり開いて飛び込んでいきたいです。
――人見知りとのことですが、芸能のお仕事をしているとそうも言ってられないこともあるかと思います。秋元さんなりの克服方法などはあるんでしょうか。
私、自分のことを話すのは苦手なんですけど、人の話を聞くのはすごく好きなんです。お相手の方の好きなことを知っていけたら、距離が近づいていくような気がするので、そういうお話をどんどん聞くようにしています。今回の舞台の中でも、お芝居の経験という意味では私が一番経験不足だと思うので、しっかり自分から話しかけて、いろんなお話を聞いていけたら良いなと思います。
――今作ではコミカルな演技に挑戦されますが、自分としての手ごたえやお芝居のイメージは沸いていますか?
コメディは全くやったことが無いので、すごく楽しみ。映像のお仕事でも、ソフトボールの青春系だったり、ゾンビ系だったり、ちょっとホラー系だったので、コメディは本当に無いんですよ。
――バラエティ番組で芸人さんなどと面白いやりとりをされているイメージはありますが、お芝居となるとまた違いますよね。
そうですね。でも、コントとかはすごく好きでよく見るんです。あとは、ジム・キャリーの映画も好き(笑)。面白いコメディ作品は大好きですが、それをやっている自分はまだ想像できていないですね…。ベースのテンションは高めの方が入っていきやすいと思うので、この作品の時はハイテンションで行こうと思います!
――確かに、普段の秋元さんは少し落ち着いているイメージがあります。
だいたい、友達とかがテンション上がっていることが多くて、私はそれを見ていることの方が多いんです(笑)。ずーっと、一定のテンションなんですよね。
――そんな秋元さんでもテンションが上がってしまうことは?
やっぱりご飯を食べているとき! 美味しいものを食べているときは、だいたいテンションが高いです。…でもちょっと、表に出にくいタイプですね。それをちゃんと表現できるようになることが、今回の課題かもしれません。
――ちなみに、最近は何を食べてテンションが上がりました?
鮎を食べたときです! 鮎が大好きなんですけど、スーパーに売っているのを見つけて。串打ちをして、塩を振ってグリルで焼きました。上手に焼けて、めちゃくちゃ美味しかったです!
――自分で串打ちした鮎はおいしさもひとしおだったんでしょうね(笑)。今年の2月に乃木坂46をご卒業されて、生活スタイルにも変化があったと思いますが、1番変化を感じたのはどういうところでしょうか。
たくさんあるんですが、夏にずっと東京にいることでしょうか。昨年までは、夏は乃木坂でいろいろな地域を回らせていただいて、最後に神宮に帰ってくるという流れだったので、ずっと東京にいるのがちょっと不思議な感じでした。東京でたくさんお仕事をさせていただいて、充実した夏でしたよ。あとは、家族に会う頻度が今年は上がったように思います。父が還暦だったので、ちゃんちゃんこを着せてきちんとお祝いできたのも嬉しかったですね。父は着るのを嫌がってましたけど(笑)
――仕事もご家族などプライベートも充実していたんですね。お仕事の面での変化にはどういうものがありましたか?
やっぱり、これまで何をするにも「乃木坂46の秋元真夏です」と言っていましたが、その冠が取れたことは大きかったですね。今までは、秋元真夏を知らなくても「乃木坂46のメンバーです」と言えば、私たちのことを知ってもらえていたんですけど。その説明する項目が1つ無くなったので、乃木坂時代よりも、自分のことを知っていただくということへの意識はより高まったように思います。秋元真夏のことを、知ってもらわないといけないんだなって。そういう時は乃木坂の看板の大きさをすごく感じます。1人になってみて、自分というものをどう皆さんに伝えていけばいいのかということは、すごく考えましたね。
――いろいろ考えた上で、挑戦したいお仕事ややってみたいことはありますか?
やっぱり人のお話を聞いたりすることが好きなので、MCのお仕事はやってみたいですね。今、1つやらせていただいているんですけど、気持ち的にもすごく楽しめている感じがします。
――乃木坂46になる前は、アナウンサーにもなりたかったそうなので、もともとの興味の方向がそちら側なのかもしれないですね。
そうかもしれません。でも、アナウンサーを目指していた頃には、そこまで考えていなかったですけどね。ただただ目立ちたがりで、テレビにずっと映っていたい!って思って…それでアナウンサーの方が素敵に映ったんだと思います。
――MC以外にも挑戦したいことはありますか?
お料理コーナーとかもやってみたいですね。お料理はすごく好きで、ストレス発散になっています。最近もいっぱい作ってるんですけど、一番直近はグラタンですね。基本は和食なんですが、たまにそっち系の洋食も作ってみるとやっぱり美味しいんですよね。
――今回の舞台は自分以外の誰かに入れ替わるお話ですが、もし、入れ替われるとしたら、どんなお仕事のどんな人がいいですか?
人格的に入れ替わってみたいのは、元サッカー選手の槙野智章さん。お仕事でご一緒させていただいたときに、もう本当にフランクに話してくださって、まるで昔からお互い知ってますよ、くらいの感じですごく話しやすかったんです。ずっと笑顔で、あんなに心を開いてくださる方ってスゴイって思ったんですよね。あんな人になってみたいです。お仕事だとCAさんとかでしょうか。やっぱり憧れますよね。学校の友達でもCAになった子が多いんですが、SNSなどを見ていると、またあんな所に行ってるんだ、今度はここって、すごく充実してそうで。
――役者という仕事も、自分じゃない誰かになり切る仕事だと思います。演技のお仕事の面白さを、どのように感じていらっしゃいますか?
ある意味でアイドルも、ラジオなんかでお話している自分と、ステージに立っている姿では、ちょっと違う部分があると私は思っていたんです。そういう部分でも、私はアイドルに”なり切る”のが楽しかったんだなと、11年やってきて思いました。演技のお仕事はまだ経験は少ないですけど、なり切る楽しさは感じていますね。ファンの方たちも、アイドルに”なり切る”スイッチのオンオフを楽しんでくださっていると感じていたので、演技のお仕事でもたくさん学んでお見せしていきたいです。
――今回の舞台を楽しみにしているみなさんにメッセージをお願いします!
久々の舞台なので正直まだ不安はありますけど、ここで楽しさをたくさん知って、ここからもっと挑戦したいと思えるような作品にしていきたい。そう思えるように前のめりになって成長していきたいので、とっても意気込んでいます! きっと皆さんにも感情移入していただける作品だと思いますし、見終わった後、面白かったと思うのと同時に、自分の人生もなんだかいいものだな、と前向きに感じていただけるはず。ぜひご覧いただきたいと思います!
インタビュー・文/宮崎新之