舞台『オデッサ』が1月8日(月・祝)に東京芸術劇場プレイハウスで開幕。本作は三谷幸喜が3年半ぶりに書下ろし演出した新作舞台。舞台写真が到着した。
(撮影:宮川舞子)
登場人物は三人。 言語は二つ。 真実は一つ。密室で繰り広げられる男と女と通訳の会話バトル。
アメリカ、テキサス州オデッサ。
1999年、一人の日本人旅行客がある殺人事件の容疑で勾留される。
彼は一切英語を話すことが出来なかった。
捜査にあたった警察官は日系人だったが日本語が話せなかった。
語学留学中の日本人青年が通訳として派遣されて来る。 取り調べが始まった。
登場人物は三人。 言語は二つ。 真実は一つ。
男と女と通訳の会話バトル。
キャストには柿澤勇人、宮澤エマ、迫田孝也と、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも共演し近年の三谷作品をはじめ舞台、映像での活躍が目覚ましい3名が集結。
ある殺人事件の重要参考人として取り調べを受ける英語の話せない日本人旅行者を演じるのは迫田孝也。鹿児島からやってきた旅行者だ。はたして事件に関係しているのか…彼の言動から目が離せない。本作で迫田は鹿児島弁の指導も担った。
日本語の話せない現地の日系アメリカ人警察官を演じるのは宮澤エマ。一見しっかりしていそうだがどこか抜けている警部をチャーミングに演じる。宮澤は本作の英語監修も担当。英語の台詞について演出家とともにディスカッションとブラッシュアップを重ねた。
警部と旅行者の通訳として急きょ派遣されてきた現地留学中の日本人青年を演じるのは柿澤勇人。青年も鹿児島出身であり、同郷の旅行者とは鹿児島弁で会話をしていく。柿澤は通訳として膨大な量の英語、鹿児島弁の台詞を操る。
舞台音楽を作曲した荻野清子の生演奏がテキサスの風を運び、三谷ワールドを一層盛り上げる。
青年は警部と旅行者の間にはさまれ、どうにかこうにか二人の会話を繋ぎ、三人の食い違った会話は進んでいく…
本作は英語、日本語、鹿児島弁と3つの言語が飛び交う構造ゆえ、英語台詞の場面では表現の工夫を凝らした日本語字幕が舞台上に登場する。
キャストは本作での三者三様の挑戦を語った。
■柿澤勇人(青年 役)
最初に台本をいただいたときは、よくこんな設定を思いつくなあと、鬼の三谷幸喜だな…と思いました。
鹿児島弁や英語を使った芝居をやったことが無かったので、まずはネイティブの鹿児島弁を浴びて少しでもそれに近づけるようにと鹿児島に行きました。稽古場でも迫田さんとエマさんに一言一句セリフを全部CDに吹き込んでもらい、それを移動の車や稽古場で聞き続ける日々でした。
■宮澤エマ(警部 役)
英語を喋りながら舞台に立つというのが初めてで、日本語と英語を喋っている私は同一人物ですが2つの役を演じているかのような気持ちになりました。
それぞれの言語で私の喋り方や動作がすごく違うというのを改めて実感して、そこをどう統一させていくのかというのがすごく難しかったです。
今まで翻訳劇をやるときに、日本語をより英語のニュアンスに近づけるという作業をしたことはありましたが、今回はその逆で、英語台詞を観客の皆さんが読む日本語字幕のニュアンスに近づけました。柿澤君も膨大な英語を喋るので少しでも短く、分かりやすく、言いやすくなるようにしました。私の演劇人生での初めてが多く詰まった作品です。
■迫田孝也(旅行者 役)
三谷さんが僕に「貴方はネイティブな鹿児島弁で努力も何もしていない」とおっしゃって(笑)。毎日稽古場に行くと、三谷さんとキャスト皆で丸くなって座って台本に対する意見を交わす“エマタイム”と呼ばれる時間があったのですが、そこでいかに「僕も一員だよ」という空気を出すのが大変でした(笑)。
鹿児島弁は慣れ親しんだ言葉なので、何か他のことで頑張れないかなと思い柿澤さんの鹿児島弁を出来るだけネイティブに近づけられるように指導させていただきました。英語に関しては温かい目で見守らせていただいています。
演出家コメント
■三谷幸喜(作・演出)
僕は演劇畑の人間なのですが、普段舞台を観ていない方にももっともっと観ていただきたいですし、そういう方に楽しんでもらえる舞台を作りたいなと思っています。
『オデッサ』はそんな普段舞台を観ていない方にも楽しんでいただける、僕の「こういうものをやりたかった」というものができたかな、と手応えがあります。
面白い映画と面白い舞台なら、舞台のほうがより面白いという想いが強いのですが、つまらない映画とつまらない舞台なら舞台のほうがもっとつまらないので、真剣に、命を懸けてやらないといけないなと思っています。
また、舞台はお客さんの反応や笑い声があって初めて成立するんだなと改めて感じています。特に今回は字幕も大変で、台詞と合わせて字幕を出すタイミングを調整したり、みんなで必死になって作っています。今日から3月までお客さんの前でやることでどんどん進化して完成していくと思います。それが舞台の醍醐味だと思いますし、お客さんがいなければできないことだと思っています。
初日公演前にマスコミ向けに行った取材では、柿澤よりこれから観劇するお客様へのメッセージも。
柿澤勇人コメント:
日本語と鹿児島弁と英語、ある意味3か国語を駆使した作品になっていて、劇中の字幕もただ言葉を翻訳するだけでなく楽しく観ていただけるように演出されています。
僕らにとっても、観てくださる皆さんにとっても、見たことのない新感覚の舞台になっているかと思いますし、本当に豊かな観劇体験になると僕は確信しております。
ツアー公演を含めて全49ステージ一生懸命頑張りたいと思います。劇場でお待ちしております!
「言葉」がテーマの究極の会話劇。観客とともに進化を重ねる本作をぜひ劇場でご覧いただきたい。
上演時間は1時間45分(休憩なし)。
東京公演は1月8日(月祝)~28日(日)東京・東京芸術劇場プレイハウスにて上演、その後2月1日(木)~12日(月祝)大阪・森ノ宮ピロティホール、2月16日(金)~18日(日)福岡・キャナルシティ劇場、2月24日(土)~25日(日)宮城・東京エレクトロンホール宮城、3月2日(土)~3月3日(日)愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホールにて上演。