ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』|切り裂きジャック役:河内大和 様 ワンチェン役:島田惇平 様 対談

荒木飛呂彦の大人気コミックシリーズ『ジョジョの奇妙な冒険』が、待望のミュージカル化。

人間の誇りと勇気を描き上げる〈人間讃歌〉をテーマに、頭脳戦と肉弾戦で織りなされる熱いストーリーテリング、独特のポージングに代表される大胆にして緻密な画力と色彩、独創的でインパクトのあるセリフ回しの数々など、唯一無二の世界は多くのファンを魅了し、映画化、アニメ化、ドラマ化、ゲーム化など数々のマルチ展開で日本国内のみならず、ワールドワイドで熱狂的な支持を獲得。そして満を持して、全ての始まりの第1部 「ファントムブラッド」をベースにした世界初の舞台化作品、ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』が2月6日より上演される。19世紀末のイギリスを舞台に、主人公ジョナサン・ジョースター(通称“ジョジョ”)と運命的な出会いを果たすディオ・ブランドーを中心に、〈謎の石仮面〉をめぐる熱き戦いと奇妙な因縁を描いた壮大な物語が、演劇の殿堂・帝国劇場で開幕! クセ強めの悪役、切り裂きジャックを演じる河内大和さんとワンチェンを演じる島田惇平さんが、“ジョジョ愛”たっぷりに原作の魅力や本作の見どころなどを語ってくれた。

――お二人とも、原作にはかなり深い思い入れがあるようですが、初の舞台化作品に出演される心境を教えていただけますか?

河内 僕は中学の頃から本当に『ジョジョの奇妙な冒険』(以降“ジョジョ”)が好きで。友達とどれだけ立ちポーズの練習をしたか(笑)。

島田 ハハハハ。

河内 人間の形から、着ている衣装から、何から何まで全部カッコ良くて……。当時、漫画家を目指そうと思っていたこともあって、授業中も机の上にずっと落書きしてましたもん。

島田 ハハハハ。

河内 僕にとって、“ジョジョ”の立ち姿とか、荒木先生が描かれている哲学っていうのは、憧れなんでしょうね。生きるための哲学はかなり“ジョジョ”から学んでいるところがあって……。今回の舞台のベースになっている「ファントムブラッド」に登場するウィル・A・ツェペリの「人間讃歌、勇気の讃歌」を語るセリフが大好きで。「恐れを克服してこそ前に進める。未知なるものに人は恐怖するけど、そこに立ち向かう勇気が、やっぱり人間の素晴らしさである」っていう。この言葉は、人生を生きる上でいつも心にとめていますね。それぐらい大好きなので、出演が決まったときは本当に嬉しかったですよ。

――役者になられてからは、舞台化したら出演したいっていう思いはあったんですか?

河内 いや~原作ファンとしては、自分のイメージがあるから舞台化はしてほしくなかった(笑)。

島田 アハハハハ!

河内 でも、舞台化するなら、役者としては出たいですよ、出ますよ(笑)。

島田 僕も高校時代の写真、たぶん全部“ジョジョ”の立ちポーズしていますよ。何にそんなに惹かれるかって、やっぱり登場人物たちがそれぞれの正義であったり思いであったりを持って、すごく力強く生きているところ。あとは荒木先生の絵のタッチというか、絵から受けるエネルギーがものすごくて、最初に見たとき立ち眩みしたんですよ。もう、受ける情報量がすご過ぎて。

河内 すごい話だね。

――そんな漫画があるんですね。

島田 ほんとに。高校の修学旅行でフランスに行って、ルーヴル美術館でモナ・リザの絵を実際に見たときに、すごいエネルギーを感じたのと同じような感覚を僕は“ジョジョ”の漫画から感じたんです。登場人物の絵が動いてそこから匂い立ってくるようなエネルギーが、どのページをめくってもあって、なんだこれはと思って。それがのめり込んだきっかけでもあります。

――島田さんは、“ジョジョ”が舞台化されたら出演したいと思っていましたか?

島田 僕は、“ジョジョ”が舞台化されたら、どんな役でもいいから、絶対にどうにかして出たいと思っていました。ちょうど役者を初めて10年くらいですけど、この10年間その思いはずっと根底に持ちながら、いつの日か来るその機会を絶対に逃さないために、いろいろやってきたというところはあって。僕は踊りもやっているのですが、それも“ジョジョ”の影響が大きくて。身体的な動きの面白さを教えてくれた教科書でもあるんです。だから、オファーをいただいたときは、ものすごく嬉しかったです。

――今回のミュージカルは原作の第1部 「ファントムブラッド」をベースに描かれますが、この物語の魅力はどんなところだと思われますか?

河内 暗さだと思いますね。第9部まである『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの一番最初の物語で、ものすごい闇を感じるんですけど、プラス宇宙の始まりのような輝きがあって。すごく強い光とすごく強い闇が両方混在しているイメージがある。“ジョジョ”とディオの友情から始まるんですけど、2人の生い立ちから描かれるので、人間の話として面白いから、舞台化するには第1部はいいと思いますね。

島田 うん。何世代にも渡る“ジョジョ”とディオの血筋の戦いの一番最初の物語で、僕もその暗さっていうのは、すごく感じている。読み返してみてジョナサンとディオのお互いの正義の燃え方が第1部ってものすごく強くて印象的ですね。二人の魂の燃やし方っていうのは、自分の創作活動の礎になっているところがあります。

――本作では、主人公ジョナサン・ジョースターのライバル、ディオ・ブランドーの配下の殺人鬼切り裂きジャックを河内さんが、ディオの忠実な下僕のワンチェンを島田さんがそれぞれ演じられます。役作りでこだわりたいことは?

島田 ワンチェンって、原作で年齢不詳なんですけど、明らかにおじいちゃんで。しかもすっごいちっちゃいキャラクターなんです。だから、今回のミュージカルでは原作と比べて若いビジュアルなっているんですね。演出の(長谷川)寧さんからは、今回のワンチェンはフィジカル的にちょっと面白い立ち位置で居て欲しいと言われているので、荒木先生の絵からもいろいろ想像して、今作り上げている最中です。ビジュアルが発表されて、お客様もたぶん「ワンチェン若くない?」って気になっていると思いますが、“ジョジョ”の世界観の中から生み出されるワンチェンではありたいなと思っています。

河内 “ジョジョ”好きな人ならみんな、切り裂きジャックといえば馬から出てくるっていうのが、浮かぶと思うんですよ。

島田 そうそう(笑)。

河内 それが舞台でどう表現されるか、聞くだけでワクワクしませんか? わざわざ馬の中に潜む必要ないんですけど、それぐらい血に飢えた男なので、たぶん血の中に入りたいんですよ。それがジャックの魅力ですよね(笑)。切り裂きジャック役をオファーされたときは、僕のために用意された役でしょうと(笑)。役作りは、馬から出てくるイメージをどこまでできるかですよね。

島田 そうですね。

河内 荒木先生が描かれた絵のようになれれば、もう、切り裂きジャックです。

――帝国劇場でグランドミュージカルとして上演される本作。〈“ジョジョ”×帝劇〉ということに関しては、お二人はどんな感想を持ちましたか?

島田 第1部 「ファントムブラッド」を舞台化すると聞いて、ジャックが馬から出てくるところとか、ディオが壁を練り歩くとか、ワンチェンがディオの首を抱えるところとか……、このシーンどうやってやるのかなって思ったシーンがいくつかあって。技術的にそういう演出が可能なのは、もう帝劇とかになってくるんだろうなとは思いました。荒木先生がイメージして描いてきた世界っていうものを限りなく近い形にできる環境としては、素晴らしい場所なんじゃないのかなと思いますね。

河内 歴史のある劇場に住んでいる魂って、やっぱりあって。それと“ジョジョ”の人間たちの魂は必ずリンクしてくると思うので、100年以上の歴史のある帝劇で“ジョジョ”を上演するというのは、ある種必然だと思うんですよね。やっぱり、いい劇場って精神が宿っているっていうか。

島田 うん。

河内 劇場って生きているじゃないですか。その最たる劇場で“ジョジョ”を上演するっていうのは、やるほうも観るほうもワクワクすると思うんですよね。

――原作の大ファンであるお二人から見て、ジョナサン・ジョースター(通称“ジョジョ”)役の松下優也さんと有澤樟太郎さん(Wキャスト)、ディオ・ブランド―役の宮野真守さんは、キャラクターにハマっていると思いますか?

河内 宮野さんのディオはすごくハマってます。「これ、宮野さん?」って必ずびっくりしますよ。

島田 うん、実際見たら驚くね。

河内 稽古でのディオの息の出方とかね。いや、もう楽しみにしてください。

――“ジョジョ”役の松下さんと有澤さんはいかがですか?

島田 共演するのは初めてなんですけど、全然違うお二人ですね。でも、どちらにもジョナサンを感じるんですよ。優也は普段はみんなを笑わせてくれようとしたりとか、空気をすごく読んで立ち振る舞ってくれる人なんですけど。何かゆるぎないものを持っている人で、鋭いものを感じる。樟太郎はすごく元気。でもただ明るくて元気って意味ではなくて、なんか底知れないエネルギーを持っている、努力の塊みたいな感じの人だなって思います。違うジョナサンが見られると思うので、すごく楽しみですね。

河内 いや~このお二人は、僕たちとは人種が違うんですよ。初めてお会いしたときに、もう光に圧倒されて(笑)。

島田 アハハハハ! 僕らは闇側なんですよね(笑)。

――闇があるから、光が輝くわけですから。

河内 そうですよ(笑)。

河内・島田 アハハハハ!

――最後に、読者と公演を楽しみにしている方へ、意気込みとメッセージをお願い致します。

河内 たぶんね、事件になると思います。“ジョジョ”を好きな方も、何も知らないミュージカルファンの方でも、たぶんびっくりする舞台になると思います。なので、本当に大いに期待して、劇場にいらしてください。

島田 いや~、僕も事件になるって言おうとしたんですよね~。

河内 アハハハハ。

島田 でもね、事件になります、これは。たぶん日本の舞台表現というところにおいても、新しいフェーズに来るんじゃないかなって。本番直前まで、ずっとそこの光を追い求めていきたいなって思いますね。

取材・文:井ノ口裕子

撮影:篠塚 ようこ