舞台『未来少年コナン』│椎名桔平 インタビュー

舞台版リメイクではなく、新しい名作誕生の予感!

宮崎駿初監督アニメ『未来少年コナン』が舞台化される。躍動感あふれる描写や、世界観など、その後の宮崎 駿作品へと受け継がれている要素がぎっしり詰まった名作だ。主人公コナンの育ての親おじいと、ヒロインラナの祖父ラオ博士の二役を演じる椎名桔平に作品への思いを聞いた。

「本当に普遍的な物語で、基になった原作はさらに昔の外国小説ですが、現代に当てはめても非常に胸に迫ってくる、今やる意義が強くあると思わせてくれる作品です。もし子供の頃に見ていたら、未来ってこんな風になっちゃうのかなとリアルに感じていたかも。1978年の作品ですが、地球を滅亡させるような化学兵器が登場していて、地球はこうなってしまうのではないかと考えられていた。実際に長きにわたって戦争が起こっていますし、現実が作品世界に追いついてきていて、すごい時代になっていると思います」

演じる二役について、稽古に向けて考えを巡らせているという。

「ふたりとも地球や人類に対して思うことがあるので、それをそれぞれのキャラクターで表現していければ。僕にも14歳の子供がいますが、子を持つ親として近いものがあればと思います。映像作品で二役演じた経験はありますが、役によって面白さはいろいろ。今回は全然違うキャラクターなので、二役を楽しみたい。中途半端にならないように、しっかりふたつの役を作りたいと思います」

ミュージカル『100万回生きたねこ』や村上春樹原作の『ねじまき鳥クロニクル』などを手掛け、その唯一無二の空間演出で観客を魅了し続けているインバル・ピントが、演出・振付・美術を手掛ける。

「ストレートプレイしか経験していないので、人間を掘り下げて会話の中で物語を紡いでいく作品が多かったのですが、今回はインバル・ピントさんの劇空間の中で、人物像をどのように作っていけばその世界観に当てはまっていくのだろうと。『ねじまき鳥クロニクル』はファンタジックな空間で舞台芸術という言葉が浮かんできました。身体はどのくらい使うのかなど気になりますね。海外の方とは映像でご一緒する機会がありましたが、やはり芝居を通して分かり合えるものなので、それが大事なコミュニケーションになります。舞台で通訳さんを通して演出を受けるのは初めてですが、芸術という意味においては世界共通ですし、新しい刺激をいただけるのではないかと楽しみです」

椎名は様々な映像作品で活躍しているが、舞台にも数年に一度くらいの頻度で取り組んでいる。自身にとっての舞台表現とは?

「始まりから終わりまで、お客さんと一緒に体験していくのは、映像と全く違う表現です。時間をかけて稽古して、一旦舞台に上がればやり通さなければいけない大変さがありますが、お客さんの前での生の緊張感を経験していきたいと思っています」

最後に楽しみにしている方へメッセージをもらった。

「原作ファンの皆さんの期待を裏切らず、逆にリメイク的なところに終わらない、新しい名作として誕生できるように僕らも頑張らなければいけません。今、宮崎駿さんの新しい作品が世界的にも注目されているタイミングです。宮崎駿さんのちょっと懐かしい作風が、全く違う世界観で楽しめると思うので、新しい体験を求めて劇場に足を運んでください」

※宮崎駿の「崎」の字は、(タツサキ)が正式表記

インタビュー&文/岩村美佳
Photo/森山将人 スタイリスト/飯嶋久美子 ヘアメイク/冨沢ノボル

※構成/月刊ローチケ編集部 3月15日号より転載

掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
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【プロフィール】

椎名桔平
■シイナ キッペイ
映画、テレビドラマなど数多くの映像作品に出演する実力派俳優。映画『罪と罰』が公開中。