ミュージカル『GIRLFRIEND』高橋健介×萩谷慧悟(7ORDER)インタビュー

アメリカのシンガーソングライター、マシュー・スウィートが90年代にリリースしたアルバム『GIRLFRIEND』をベースにした、ポップでロックなジュークボックスミュージカルが日本初演を果たす。トッド・アーモンドによる脚本は、マシュー・スウィートの男性から女性に向けて書かれた歌詞を見事に物語に融合させ、青春の甘酸っぱさ、ほろ苦さを感じさせる二人芝居、二人ミュージカルとして成立させている。舞台となるのは90年代のアメリカ、ネブラスカ州の田舎町。学校に馴染めないウィルと、野球部でスポーツ万能の人気者マイク。それまで接点のなかった二人が高校卒業時、マイクがウィルに渡したミックステープがきっかけで交流が深まっていく……。翻訳・演出を手掛けるのは『ロボット・イン・ザ・ガーデン』『ラビット・ホール』『ファインディング・ネバーランド』『ビロクシー・ブルース』などの繊細で美しく丁寧な演出で、近年高く評価されている小山ゆうな。キャスト6名はいずれも東宝ミュージカルに初登場の新鮮な面々で、ウィル役には高橋健介、島太星(NORD)、井澤巧麻、マイク役には萩谷慧悟(7ORDER)、吉高志音、木原瑠生が挑むというトリプルキャストでの上演となる。これが初共演となる高橋と萩谷に、作品への想いや期待、楽しみなことなどを語ってもらった。

――まず、お二人は今回初共演ということですが、お互いに何か接点はあったのでしょうか。

萩谷 共通の友人というか、ルーツが近い友人がいるというか。

――直接、会ったこともあるんですか。

高橋 7ORDERのライブに行かせてもらった時に、ご挨拶させてもらったことがあります。

萩谷 そうだった。ライブを観に来てくれてて。

高橋 わざわざ、メンバー全員で挨拶しに来てくれたから。

萩谷 そう、グループのメンバーに友人がいる、というか幼馴染みたいな感じなんでしたっけ?

高橋 そうですね。ひとりは幼馴染というか。諸星翔希とは、10代の頃に番組をずっと一緒にやっていたんですよ。もうひとり、長妻怜央とは最近友達になったところで。だから今回は三人目の7ORDERということになるのかも。もうそろそろ僕、7ORDER全員制覇できるんじゃないかな(笑)。

――このミュージカル『GIRLFRIEND』という企画の話を聞き、まずどんなことを思われましたか?

萩谷 僕は以前から、いつかは東宝さんの海外ミュージカル作品を上演する企画に自分も参加できたらいいな、みたいな気持ちはあったんですけど。でもまさか、こんなに早く叶うとは予想外でした。しかも今回は二人芝居みたいなものですからね。舞台上に二人しかいないというのは、朗読劇では経験がありますけれども、舞台の板の上で動く、お芝居をするというのは初めてで。そもそもダブルキャストすらやったことがないのに、今回はトリプルキャストですからね。初めての感覚、初めての挑戦が多いので、今はとにかく楽しみです。


高橋
 僕の俳優仲間でもグランドミュージカルとか、さまざまなジャンルの舞台に立っている方がいるので、いつか自分もミュージカルの舞台には立ってみたいなと思っていました。でもなかなか機会がありませんでした。それで今後のことをマネージャーと話した時に、とにかく一度、東宝さんの作品に参加させてもらって、大勢のベテランの方の中に紛れて現場を知ることから始めたいね、なんて言っていました。


萩谷 普通は、そうですよね。

高橋 なにしろ稽古の雰囲気からして全然知らないので、いろいろ段階を踏んでからと。って、話をしていたはずなのにありがたいことに、各駅停車に乗っていたつもりが急にパーン!と特急電車になっていたことに今はすごく驚き、戸惑いもまだあります。どうしよう?って感じです。嬉しい気持ちより、ヤッベー!のほうが大きい。

萩谷 正直、確かにヤバイですよ!(笑)

高橋 そうでしょ?(笑)

萩谷 僕のマネージャーなんて、ちょっと勘違いしていたみたいで。ビジュアル撮影の前日くらいに「すいません、実は萩谷さんがやる役のほうが、ギターを弾く役らしいです」って。僕もあまり、情報自体をまだしっかりもらっていなかったんで「えっ、ギターを弾く役なの? 初めての二人芝居、それもミュージカルなのに??」と、なんだか急に僕のところにもヤッベー!という気持ちが押し寄せてきて。

高橋 ヤッベーですよね。

萩谷 マシュー・スウィートさんの曲自体は、ロックではあるけどそこにはちょっと青春の淡い甘酸っぱいものが入っていて。これがミュージカルになるということは、絶対にハモリがバチバチにあるんだろうなということが楽曲を聴いていると伝わってくるし。

――きっと、あるでしょうね。

高橋 もう、全部がヤバイです!(笑) だけど新たなチャレンジだらけでもあるので。キャスト全員が、東宝作品に出るのは初めてということは、今までやってきた雰囲気とまた違うところにみんなが飛び込むわけで。だからある意味、この新しい試みをしっかりと成功させたいなという気持ちは強いです。あと舞台上には二人しかいないわけだから、とにかくめっちゃ宣伝するしかないですよね。いっぱい宣伝して、とにかく人に来てもらわなければ。僕なんか既に、まだあまりよく知らないヘアメイクさんにも「来て!」って言ってきたところです(笑)。だってやっぱり、僕らの仕事は観てもらってなんぼ、ですから。こうして取材していただけることも本当にありがたいです。

――がんばって宣伝しましょう(笑)。では、台本を読んでみての感想はいかがでしたか?

高橋 現段階の台本を読ませてもらったら、男二人の作品でボーイズラブ的な部分もあるので、そこはどういう風に、どこまで表現するのかな?ということは、まず考えましたね。

萩谷 もともと海外の作品ですし、海外の文化には日本人には馴染みがない世界観も多いじゃないですか。恋愛にしても日本だと、まずはっきり告白をしてから付き合う流れだけど、映画とかだと海外ではそういう明確な告白シーンとかは普通ないですし。

高橋 ああ、そういえば確かに。

萩谷 ぬるっと次の日にはそれっぽい雰囲気になってて、もう一緒にいるみたいな(笑)。

――フィーリングがあったらもう次の日から、みたいな。

萩谷 そういう文化の違いはありそうですけど、ここでのボーイズラブなところにはどう落とし込まれるか、ですよね。とはいえ、きっとそこはジェンダーレスなものだとも思うんです。その世界観も感覚も。最近ではいろいろなものごとが認められてきている時代でもありますし。でも日本ではまだこういう演劇だったり、作品を通してそこまで踏み込む機会もあまりないように思うんですよね。役者としても、そういう面での表現に触れる機会って少ないですし。

――今回みたいな作品に出る機会でもないと。

高橋 確かにそうかもしれないです。そもそも僕、外国人の役を演じた記憶がないです。その点でも楽しみです。

萩谷 ビジュアル撮影の時、外国人の役なんだということはすごく感じましたね。ビジュアルにしても、ファッションにしても。

高橋 うん。ちょっと昔の雰囲気があって。

萩谷 ヘアスタイルも服も、少し前の年代にスポットを当てている感じのものでしたからね。

――それぞれが演じるウィルとマイクについては、稽古はこれからですが、現時点ではどういう人でどう演じてみたいと思われていますか。

高橋 いやあ、まだまったくわからないです。でも台本を読む限りでは、自分の元々の性格はマイク寄りなんですよ。明るくて人を引っ張っていくタイプ、陰か陽で言うと僕自身は陽だと思うので。でも今回、僕はウィル役、陰か陽で言うと陰を演じることになるから、自分にできるのかな~って最初は思いました。

萩谷 面白いですね。僕のほうもそう考えると逆かもしれない。

高橋 陰側の人なの?

萩谷 陰側ってほどではないけど、人にグイグイ干渉していくことは幼少期からしたことがない気がする。今でこそ趣味が多いから、人に「こういう趣味どう?」ってオススメすることはあるけど。友情でグイグイ引っ張っていくよりは、どちらかというと周りに合わせていることのほうが多かったです。

高橋 じゃ、根本ではそれぞれの役柄とは逆かもしれないですね。

萩谷 だからそこは面白いかも、改めて自分を知れるところもありそうだし。

――ご自分と全然違うタイプの人物を演じることは面白いですか、それとも難しいですか。

高橋 難しいですね。だって理解できないですもん。その人の考えが。だけど難しいからこそ、楽しくもありますけどね。ああ、こう思うこともあるんだっていう気づきもあるし。

萩谷 役者という仕事自体が、それの繰り返しとも言えますよね。

――これから稽古、本番に向かうにあたって、今思っている目標とか、これは成し遂げたいこととかあったりしますか。

高橋 とりあえず今日からハギちゃんと呼ぼう、と思っています。

萩谷 なんて呼ばれてるんですか?

高橋 ケンスケ、が多いですね。

萩谷 じゃあ、僕もケンスケって呼びますね。どんどん距離は詰めていきましょう。

高橋 僕は今回ハギちゃんと初共演だったから、いろいろと周りの人から話は聞きました。そうしたら「寄り添えば寄り添うほど、きちんと返してくれる人」だと教わったので。

萩谷 ハハハ! その情報のソースはモロかな?(笑)

高橋 その通りです(笑)。諸星が言っていたのは、筋トレをするにあたってプロテインについて詳しいからと。

萩谷 それって、めちゃくちゃ最近の話じゃん(笑)。

高橋 それでプロテインを教えてと言ったら、LINEの画面が埋め尽くされるぐらいの情報量が送られてきたらしくて。

萩谷 いや、自分が使ってるものを教えてよ、そのまんま買うからって言われたんですよ。まんま買うのもいいけど、わからずに使うのも危ないから、一個一個の成分を全部説明したんです。

――優しいんですね!(笑)

高橋 そうなんです。だから俺も、歌のこととかわからないことが出てきたら、ガンガン聞いていけばきっと真面目に返してくれるから、と教えてもらったわけです。

――それは、とても心強いかもしれません。

高橋 いやいや、心強すぎますよ!

萩谷 その点で言うと、感性とインテリという部分でもマイク役とウィル役が、やっぱり上手いこと逆になっているのかもしれないけど。

――素のやりとりと、お芝居の上でのやりとりにギャップが生まれそうです。

萩谷 今のやりとりのバランスだけでも、逆な感じがしますし。この記事を読んでくれた人が観に来てくれた時、そういう僕らの素の部分の背景的なところも想像してもらうと、ちょっと面白いかもしれない。

高橋 確かに。ウィルって、ちょっとウジウジしたりする部分があるから。でもそんなウィルの感覚を演じることは、すごく楽しみなんですけどね。

萩谷 「もう、いけばいいじゃん!」みたいに思っちゃう。

高橋 そう、思っちゃう、思っちゃう(笑)。

萩谷 「なんでそこでドモるんだよ!」みたいな。

高橋 そうそう(笑)。俺は、どちらかというと大体のことはなんとかなるよ!と思っちゃうタイプなもんで。

――では最後に、お客様へのお誘いメッセージをいただけますか。

高橋 基本的に僕のファンの方、僕を応援してくれる人はマストで、業務として観に来てくださるはずだと信じて(笑)。加えて、今回この記事を読んで初めて僕や、この作品を知った方へ言いたいことは、ともかく一回、騙されたと思って観ていただきたいです!!きっとみなさんも、さまざまな青春時代、学生時代を送って来られたことと思います。この舞台を観ていただいた時、私たちにもこんな時代があったなと思い出したり、ちょっとクスッとしたり、ほっこりとした気持ちになれる作品にしたいなと思っていますので。ヘンに気合いを入れて、シアタークリエで舞台を観るぞ!というのではなく、ちょっとフラッと来るような軽い気持ちで観ていただけたら嬉しいですね。

萩谷 でもホント、青春っていいことばかりじゃないじゃないですか。青春といっても人の数だけあるから、いいものもあれば悪いものもあるだろうし、むしろ青春がなかったと感じている人だっているかもしれないし。だからその時代をどう過ごしたかは人それぞれだとしても、この作品はその時の淡い記憶であるとか、振り返るとあれが自分の青春だったのかなと思ったりとか。もしかしたら黒歴史で、思い出したくないことも人によってはあるかもしれないですけど。

――苦い思い出がある人は、そうかもしれませんね。

萩谷 この『GIRLFRIEND』もきっと、そういう作品だと思うんです。ただ綺麗なことだけじゃないと思うから。その中で自分の青春を思い出したり、あの時こうだったなと振り返られるきっかけになるような作品になったらいいなと僕も思うので。ぜひとも、そういうステージをしっかりと届けられるように、まずはギターと歌をめっちゃ練習しようと思っております! 劇場でお待ちしています!!

取材・文 田中里津子