シアターコクーン・オンレパートリー2014+大人計画
『キレイ―神様と待ち合わせした女―』 @シアターコクーン
のっけから終演後の話。
3時間半の公演を終えた熱気むんむんの劇場を一歩出て、外気の冷たさにひぇっとなったわたしのそばを、30代後半くらいの男女が歩いていった。男性は、パートナーとおぼしき女性にむかって興奮気味に「おれ、これの前回の公演を観てさー…」と話しながら楽しそうな笑顔。
今回が初見のわたしはその姿を見て、ああ、年月を経て再演するってこういうことか、再演されるような作品を続けて観られるなんてうらやましいな、としみじみ思った。
歳を取るというとマイナスイメージが先立つけれど、歳を取らなきゃできないことには価値がある。わたしのような若造には絶対に追いつけない価値が。
さて、『キレイ』。
キャラクターひとりひとりが愛おしい。方向は間違ってるかもしれないけれどみんながてんでにまっすぐで愛おしい。
楽曲と歌詞がいい。……ここに書くと怒られそうな歌詞がいい。
初演から変わらず「カミ」を演じつづける伊藤ヨタロウの存在感がたまらない。あの「カミ」の前ではケガレもわたしもただのひよっこだ。
2000年初演、2005年再演、そして今年の再々演。今回しか知らない自分がいまあらためて悔しい。過去の『キレイ』といまの『キレイ』を見比べることができる、あの男性がうらやましい。
松尾スズキ作品を何度も観たくなるのはなぜだろう、って考える。
やらないほうがいい(やっちゃいけない)ことになっているオブラート(暗黙のルール)にくるまったものを、惜しげもなく取り出してみせる。言いたいことは言う。大声で。やりたいことはやる。容赦なく。みせられたわたしは、やらないほうがいいと上っ面で取り繕っていたものが目の前で湯気を立てているのが痛快でしょうがない。あまりにもその湯気が生々しくて、痛快なんだけど気疲れしている。しまいにはいかに自分がうわべだけ取り繕っているか気づかされて、呆然とする。
大好きな食べたいものをたくさん食べて胃がもたれるみたいに、心がもたれる感じ。それがクセになるから、また観たくなるんだな。そんな答えを出した。
*当日券情報*
東京公演は~12月30日(火)まで。当日券情報etc.詳細は公式サイトから。
個人的にシアターコクーン中2階の立見はなかなかおすすめ。上演は長時間ですが体力に自信のある方はぜひ!
⇒ http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/14_kirei/index.html
文・ローチケ演劇部(た)