舞台『夜想曲集』 東出昌大 インタビュー

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3篇の物語で紡がれた、ひとつのストーリー
注目の東出昌大が初の舞台に挑む!

 

東出「舞台はいつかやりたいと思っていました。観るのも好きで、月に1~2本は観ています。知り合いが出ている舞台のほかに、マームとジプシーとか、チェルフィッチュとか、気になる劇団も観に行きますよ」

 そう話す東出昌大。2012年の映画「桐島、部活やめるってよ」でモデルから俳優に転身し、いまや映画やテレビドラマで大活躍の27歳が、いよいよ5月に初舞台に挑む。タイトルは「夜想曲集」。かつてミュージシャンを目指したことかあるという英国の作家カズオ・イシグロの全5篇の初短篇集から、「老歌手」「夜想曲」「チェリスト」の3篇を選び、音楽でつながったひとつの舞台作品として再構築したものだ。

東出「原作を読んだときは、これをどう戯曲化するんだろう?と思ったんですが、とてもきれいにまとまっていて驚きました。僕が原作を読んで素晴らしいなと思ったのは、登場人物の気持ちを明言せずに、ニュアンスで表しているところ。そのニュアンスを、細かい表情まで伝えられる映像ではなく、全身からにじみ出るもので伝えなければいけない舞台で、どんなふうに伝えていくかが、要点になっていくんだろうなと感じています」

 

 一部の登場人物が重なった3つの物語が、舞台上でときに交り合いながら展開していくこの作品で東出が演じるのは、共産圏出身のチェロ奏者ヤン。楽器を扱う役を演じること自体が初めてという東出は、早々にチェロのレッスンを開始したそうだ。

東出「本番までには様になっているようにしたいと思ってはいるんですが、難しいですね。音楽を聴くのは好きでも、弾いたり歌ったりする才能はまったくないので。手足が長いぶん、チェロを抱えて弾くこと自体は、普通の人より楽だと思います。ただ、チェロの先生には“体が大きくて、チェロを持っているように見えない(笑)”と言われました。僕、大きなスマホを持っていても、普通のサイズにしか見えないって言われるんですよね(笑)」

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 そんな東出のチェロ奏者と往年の名オペラ歌手、その老歌手の妻と整形したサックス奏者、そしてチェロ奏者にかつて特別なレッスンをした女性が、ときに切なくユーモラスに織り上げる“音楽の才能”を巡る美しい物語。東出は「帰り道に“いいもの観たな”と思えるような舞台になるんじゃないかなって思います」と自信をのぞかせる。

東出「1カ月以上稽古をすることも、上演時間が2時間だったら2時間、ずっと役に入りっぱなしで芝居をすることも初めてなので、もちろん不安もあります。でも、やる本人がネガティブなことを言っていてもしようがないですから。舞台をたくさん経験なさっている方々とご一緒できることも、小川絵梨子さんの演出も、楽しみです。小川さんに“もういいよ”と言われるくらい繰り返し稽古して、役を自分に染み込ませたいですね。悩むことも含めて、楽しみたいなと思います」

 

インタビュー・文/岡﨑 香
Photo/植田真紗美
構成/月刊ローソンチケット編集部

 

 

 【プロフィール】

東出昌大

■ヒガシデ マサヒロ ’88年、埼玉県出身。高校時代からモデルとして活躍し、’12年に映画「桐島、部活やめるってよ」で俳優デビュー。その後も幅広い活躍で注目を集めている。現在はドラマ「問題のあるレストラン」、大河ドラマ「花燃ゆ」に出演。