月刊「根本宗子」第10号『もっと超越した所へ。』 根本宗子 インタビュー

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素直に幸せを受け入れない不器用女子を描く

月刊「根本宗子」待望の第10号作!

 

 おいしいごはん、それなりのお金、好きな洋服とすてきな恋人。それらを目の前に用意されて、「さあ幸せになりなさい!」と促されたとして、果たして人は幸せになれるのか。彼女と話していると、そんなことを考えてしまう。

根本「おいしいものを食べて『幸せ!』って言えちゃう人がいるじゃないですか。ああいうのがうらやましくて。私は「おいしいな」とは思うけど、わぁっ!とテンションが上がるところまでは行けない。「幸せ」と「うれしい」の境い目がわからないというか」

 

 25歳である。周りの友だちも、次第にそれぞれの道に散りはじめるころだ。

根本「お芝居をしていると年上の人と接することが多いから、たまに学生時代の友だちと話すと新鮮で。本当に平均的な25歳なんですよ。25歳を、すごく満喫している人たち。そして、満喫できていない私(笑)。それらを見詰める第三者的な目線で、お芝居を作っている気がします」

 

 今までは「ダメ恋愛もの」を得意としてきた根本。けれどその心境に、なんらかの変化が生じてきたようだ。

根本「今までの自分の恋愛を振り返って、いつも自分より面白い人の傍にいたいと思って探して付き合いはじめるんだけど、いずれ結局飽きちゃうんですね(笑)。飽きるって言うと語弊があるけど、すごく日々面白いと思うことが変わってしまうから。時が経つにつれ面白くなくなっちゃう。あと、あまりにも私が『面白いよ!』『面白いね!』って言いすぎて、相手をダメにするっていうパターンもある(笑)。だから相手に面白いことを期待して付き合うのはやめて、むしろその人が面白くないことを前提にして付き合ってみたらどうなるんだろう、って思うんです」

 

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 面白くても面白くなくても成立する関係。大人への第一歩である。

根本「だいたい、人の心って、変わるじゃないですか。お芝居を作っていても、企画したときと台本を書くときとでは、思ってることが全然違ったりする。ニュースを見ていてもそうですよね。昨日は白だと思っていたものが、今日は黒だったり、普通にするじゃないですか。そこをちゃんと書きたいなと思っていて」

 

 すべては移ろいゆくものだということを、彼女は知っている。世界のすべては、変わるし、終わる。だから彼女は、軽やかに飛躍する。自分の作風とか、題材とか、なんらかのパターンを踏襲することを好まない。

根本「今までの公演を観ていただいた方からは、ヘビーな、とんでもない後味が残るものをやるんだろうな、みたいな期待感をじわじわと感じるんですけど、でもそうそう期待どおりのことはやらないぞ、って思ってます(笑)」

 

 今回描くのは女性の幸せ。しかし、疑り深く、幸せの基準がわからない人々ばかりが出てくるようだ。

根本「自分で見たり聞いたりしていなくても、まるで見てきたかのように語られてしまうことってあるじゃないですか。『これこれこうらしいよ……?』が「これこれこうなんだよ!」に変わっていく様が恐ろしいなと最近思っていて。私はたぶん人より疑り深いたちなんですよ。幸せみたいなものが訪れても疑ってしまう。でも今回は、そういう疑り深い人が、頑張って、幸せを信じようとするお話なんです」

 

 根本宗子が一歩踏み出そうとしている。その行く手にあるものが、幸せであろうがなかろうが。作家の変わり目をじかに目撃できることが、演劇好きの喜びのひとつだ。

 

インタビュー・文/小川志津子
Photo/山本倫子
構成/月刊ローソンチケット編集部

 

▼根本宗子さんのコメント動画も到着!!▼

 

 

 【プロフィール】

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根本宗子

■ネモト シュウコ
’89年、東京都出身。’09年に月刊「根本宗子」を旗揚げ。創刊号「親の顔が見てみたい」の旗揚げ公演以降、年2回の本公演を重ねながら、作家、俳優、他劇団への客演など、多岐にわたる活動を展開している。

★ただいまローチケ演劇宣言!にて「根本、ローチケで演劇コラム書いてるってよ。」連載中!!★

 

【公演情報】
月刊「根本宗子」第10号『もっと超越した所へ。』
日程:2015/5/9[土]~5/17[日]
会場:下北沢 ザ・スズナリ
料金:指定席¥3,800 自由席¥3,500

※プレリクエスト抽選先行受付中!3/5[木]12:00~3/9[月]23:59まで。
 詳しくは下記「チケット情報はこちら」のボタンから!