「黄金狂時代」「街の灯」「モダン・タイムズ」などでも知られる世界の喜劇王、チャールズ・チャップリンの不朽の名作「ライムライト」が、半世紀以上の時を経て、音楽劇として世界で初めて舞台化される。チャップリンが演じていた老芸人・カルヴェロ役を担うのは、舞台はもちろん、映像での活躍も目覚ましい石丸幹二。もともと石丸は、チャンプリン作品の大ファンであり、伝記など通じて彼の人間性についても興味をもっていたという。
石丸「2年前は(今作の上演台本も手がけた)大野裕之さんのもとで、『スマイル・オブ・チャップリン』という短編舞台にも出させていただいたんです。その作品では、チャップリンの秘書を務めていた高野虎市さんに光をあてるなど、あまり知られていない角度から、チャップリンの素顔に迫っていきました。ただ今回は、ほかでもないチャップリンの代表作の舞台化。映画をよく知る観客の方々を、いい意味で裏切らないといけないですね」
「『やってやる!』しかないです」と笑う一方で、舞台版ならではの構成に対する自信ものぞかせる。
石丸「実は、チャップリンには『フットライト』という日本では未発表の小説があるそうなんです。その中には、カルヴェロの若き日のエピソードや彼が恋するテリーという女性とその姉とのエピソードなんかが描かれているらしい。それを今回の『ライムライト』には入れ込んでいます。登場人物たちの人物像がより深くなっているんです」
ライムライトとは、かつての照明器具からくる“名声”の代名詞だ。その名声をほしいままにしていたものの、今は落ちぶれ、酒漬けの生活を送っている元芸人のカルヴェロは、ある日、将来を悲観して自殺を図った無名の若きバレリーナのテリーを救う。次第に芽生える愛情。だが、カルヴェロは彼女の愛を素直には受け入れようとしない。やがてテリーは才能を開花させ、名声を得ることになるが……。
石丸「年の離れた男女のあいだでは特に、同じ立ち位置で愛し合うのではなく、若い相手の才能をくみ、磨き、開花させるという愛の形が確かにあると思います。しかもカルヴェロは、才能ある若い男性とテリーを結ばせようともして……。究極の愛ですよ。でも、考えてみると、若手の才能を見出し、世の光に当てていくというのは、男女の恋愛においてだけでなく、人間としてあるべき行為かもしれませんね。今、私もこの年になって、『後進にしっかりとバトンを渡す』ということについていろいろと考えさせられますし(笑)。いわゆる時代の流れから外れていくってことは、時代が動いていく以上、仕方のないことです。それが世の常でもある。厳しく切ない。とはいえ、結末は伏せておきますが、カルヴェロは幸せだったと僕は信じています」
映画で流れる、かの有名な「エターナリー」をはじめ、音楽の使われ方も気になるところだ。
石丸「映画では、観客を前にしたコント上でしかチャップリンは歌っていないんですが、劇中であの名曲がどう絡んでいくのか、僕自身も楽しみです。楽しみと言えば、初めてお会いしたときから、清楚だけど自信あふるオーラがテリーとピッタリと重なった野々すみ花さん、久しぶりにご一緒する先輩の保坂知寿さんはじめ、共演者のみなさんとの化学反応も本当に楽しみ。私たちが描く『ライムライト』、みなさんの心深くに響く舞台を創ります!」
インタビュー・文/大高由子
Photo/工藤隆太郎
ヘアメイク:高橋貢
スタイリング:Shinichi Mikawa
構成/月刊ローソンチケット編集部
【プロフィール】
石丸幹二
■イシマル カンジ ’65年、愛媛県出身。劇団四季を経て、現在は舞台、ドラマ、映画、音楽など幅広く活躍中。最近の出演に、舞台「レディ・ベス」「兵士の物語」「くるみ割り人形」、ドラマ「花燃ゆ」「アルジャーノンに花束を」、「スケープゴート」、映画「王妃の館」など。
【公演情報】
『音楽劇 ライムライト』
日程&会場:
東京:2015/7/5(日)~15(水)
大阪:2015/7/18(土) ~20(月)
福岡:2015/7/23(木)
佐世保:2015/7/24(金)
鹿児島:2015/7/26(日)
名古屋:2015/7/28(火) ~7/29(水)
富山:2015/7/31(金)
長野:2015/8/1(土)
【発売情報】
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