指揮・総監督:井上道義、そして演出:野田秀樹。
日本のクラシック界と演劇界がコラボレーションする、“誰も見たことのない”新たなオペラと話題になっていた本作品が、ついに開幕!
公演初日の金沢歌劇座から、舞台写真と初日レポートが届きました。
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何が飛び出してくるかわからない!?
『フィガロの結婚』金沢での初演をリポート
井上道義×野田秀樹によるモーツァルトの歌劇『フィガロの結婚』が5月26日、金沢歌劇座で幕を上げた。これから観る方のために、実演に接したリポートをお届けしたい。
野田の演出でまずお伝えしたいのは、どこから何が飛び出してくるのかわからないので、観客は一瞬たりとも油断できないということ。舞台が18世紀のスペインから開国期の長崎に移されているのは事前公表のとおり。〝西洋文化に出会った日本人〟を西洋芸術のオペラで表現している。様々な日本の生活風習や古典芸能の要素が用いられており、発見する楽しみがあるし、ひびのこづえによる衣装も、このコンセプトを表現する上で大きな役割を果たしていた。
特徴は8名の演劇アンサンブルが出演し、身体を使って様々なアイディアを表現すること。彼らは常に舞台のどこかで何かを表現しているので存在感は予想以上だ。人は多いが、堀尾幸男による舞台美術はシンプル。極限まで絞り込んだアイテムであらゆるものを表現する点が日本人の発想を表現しているようにも感じた。
野田の身上である言葉のセンスは、今回も歌詞に台詞に字幕にと大いに発揮されている。事実、観客が言葉に反応した場面も多かった。筋について行けるか不安に感じている人もいるかもしれないが、庭師役が物語を整理しながら進行するので心配はいらない。しかし、舞台には次々といろんな要素が現れて、ラストへ至るまでにいくつもの伏線も張られているので、油断していると通り過ぎてしまう点は要注意だ。とにかく情報量が多く、一度に全部をキャッチするのはなかなかに難しい。何度も繰り返し観て、小ネタを拾っては誰かと語り合いたくなるような作品になっている。
満員となった金沢の初演では、当地のオペラでは珍しくスタンディング・オベーションが起きた。終演後席を立つとき「面白かったね」という声があちこちから聞こえて来たのも、観客が密度の濃い3時間をたっぷり楽しんだ表れだろう。
(音楽ジャーナリスト 潮博恵)
満員御礼で幕があき、観客からは笑いやどよめき、また素晴らしいアリアや重唱の後では大きな拍手が湧き、観客席と舞台が一体となり、カーテンコールは金沢では珍しいスタンディングオベーションで出演者らをたたえ、終演となりました。
観客も老若男女、世代さまざま、オペラファンから演劇、野田ファン、美術などいろんな人が、金沢での初演に立ち会えたという喜びと満足感、そしてちょっぴり自負も感じながら劇場を後にしていきました。
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全国ツアーは6月17日(水)の神奈川公演をもって、前半日程が終了。
入れ違うように、6月13日(土)には後半日程の山形・宮城・宮崎公演の一般発売が始まります。
前半日程に行くことができなかった方、もしくは、迷っていた方、まだまだ観劇のチャンスはあります!
クラシックと演劇が、東洋と西洋が、見事に融合するステージをぜひ劇場でご覧ください。