歌舞伎三大名作の一つ『義経千本桜』を、30-DELUXが豪快にアレンジ!
30-DELUXが、この夏放つ新たなエンターテインメント「新版・義経千本桜」
主演の水夏希、そして30-DELUX主宰する清水順二氏に話を聞いた。
――30-DELUX「新版・義経千本桜」に水さんご出演となったいきさつは?
清水 僕が、昔から水さんの舞台を拝見してました。今回一緒に製作委員会を組んでいる会社の中に水さんとつながりのあるところがあって、ダメ元で企画を見ていただこうということになり。「ほんとに出てもらえるんですかね?」なんて半信半疑なところがあったりしながら(笑)。
水 30-DELUXさんの作品は出演が決まってから、前作の「オレノカタワレ」を観たんです。殺陣がヤバいなと思いました。
清水 ヤバいなって(笑)。
水 やっぱり、スピードと手数の多さがすごい。宝塚で殺陣の経験がないわけじゃないですけど、やっぱり宝塚は女子だけだから、大変じゃないけど見栄えのいい動きをつけてくれるんですね。それが、男性が多くて殺陣の得意な人がいっぱいいるとなると、これだけスピーディーでこんなに見せ場も多いんだなと。「あー、エラいこっちゃ」という感じでした。
清水 特に「カタワレ」は(早乙女)友貴くんがいたので、我々も「負けねえ!」っていうガチの対抗心があったので(笑)。でも水さんは基礎を習ってみたいということで、ウチの劇団が運営している道場にも早い段階から来てくださったりして。
水 前転、後転に始まり。マット運動なんて20年ぶりだよ!みたいな(笑)。マイ木刀も買いました。振り回して止める、とか言われても「いやいや、止まんないでしょ」って。ずっとやっていると腕が上がらなくなって、「お、お茶が飲めない……」みたいになるんです(苦笑)。やっぱり踊りとは体の使い方が全然違うんですよね。だからなかなか手も覚えられないし。
清水 いやいや、めちゃめちゃ早いですよ、(殺陣の)振り覚え。踊りをやっている人はやっぱりとても早い。でもそこから本当に斬っている様に見せるのが……
水 そうそう、そこがすごく難しい!
清水 ただ振るのと、プスッと斬るのとは違うので。でもどこに気をつけたらいいのかって要点を伝えると、ちゃんとやってくれる。吸収がすごく早いですね。
水 和物自体の経験は、宝塚時代もほとんどないんです。「星影の人」(07年)という作品で剣の達人の沖田総司をやりましたけど、達人とは名ばかりで。今回本格的なものをやる限りは、ちゃんとした殺陣さばきをお見せしたいと思いました。だからそういうレッスンがあるのはすごくうれしかったですね。
――30-DELUX初となる、歌舞伎が題材の作品となったいきさつは?
清水 3年前にミュージカル「薄桜鬼 斎藤一篇」で初めて原作モノ(ゲーム)に挑戦しました。我々はオリジナルばかりやってきたんですけど、原作モノに立ち向かっていかないといけない時代なんだなと。じゃあ次にやるとしたらなんだろうと悩んでいたところに、作家の西森(英行)さんが「義経千本桜」を提案してくれたんです。西森さんは歌舞伎のラジオドラマに携わっていたりして、歌舞伎にすごく精通していて。「画期的ですよ! (30-DELUXに)絶対に合いますし」「そうだね? よくわかんないけど画期的だ!」「あれだったら殺陣もいっぱい入れられます」「だね? 壇ノ浦の戦いまで戦ってるからね!」「いや、壇ノ浦が終わった後の話なんです」みたいなやり取りもありつつ(笑)。
水 最初「義経千本桜」と聞いたときは「はて? 難しすぎてよくわかんない」って感じだったんですけど、上がってきたプロットは長い物語のオイシイところ、各キャストの見せ場を上手い具合につないであるストーリーで。しかも義経に1本筋が通っていてしっかりしたドラマになっている。だから歌舞伎をご存知の方はもちろん、見慣れていない方でも楽しめる、幅広い人たち向けのエンターテインメントになるだろうなというのがすごく楽しみです。
清水 いやぁこれ、脚本作るのは大変だったと思います。正直、ただのダイジェスト芝居になったらどうしようってちょっとビクビクしてたんですけど……感動しましたね。歌舞伎に精通した上で、30-DELUXのやりたいことを完璧に理解してくれている西森さんだからこその脚本です。
――水さん演じるのは言わずと知れた源義経ですが、実は女性という設定です。
清水 水さんが義経をやってくれることが決まったとき、今のように女性という設定でいくのか、男性として出てもらうかっていうのは正直悩みました。どっちもできちゃうんで(笑)。だからこれは水さんに相談しようと。ご本人の意向も合わせて決めました。
――水さんご自身は、女性の設定の方がいいと。
水 そうですね。やっぱり宝塚を辞めてからは、男役をやる必然性というのが自分の中にも必要なので。もし男性の義経としてやるんだったら、男性キャストがやった方が絶対に面白いだろうし。そうじゃなくて男として生きていて、他のみんなは知らないけど、女性であるという葛藤を抱えていて……という方がいいなと思いました。
清水 宝塚の男役みたいな表現じゃなくて、普段の水さんのままでやってくれれば、この作品の義経になるんじゃないかなって思うんですよね。
水 自分でも、男役のときとはちょっと違う表現になるだろうなと思います。
清水 男気があって、でもやっぱり女性らしいところも兼ね備えていて。水さんと初めてお会いして話したときに、「これは勝てる!」と思いました(笑)。
――そしてやっぱり殺陣も楽しみです。清水さんと水さんが剣を交えるシーンもありますか?
清水 僕の役は語り部でありつつ、本番まで正体は明かさないという感じなんですが、対決の有無も含めてお楽しみに! ただ、水さんの殺陣の量がむちゃくちゃ多いかっていうと、そうでもないと思うんですよ。
水 いやでも、私のこれまでの舞台からすると考えられない多さだと思います!
清水 素人の方にはピンと来ないかもしれないですけど、ウチの芝居だと、2時間半くらいで1500~2000手ぐらい殺陣の手をつけるんです。
水 (聞き手に)何言ってるかわかんないですよね?(笑)
清水 で、そのうち主演の方が背負う手数は500~600。今回の水さんは半分くらい、それでも300は優に超えると思いますけど。
水 だって宝塚だったら20とかそれぐらいですから、どれだけ大変かわかりますよね!? 実際やれば、きっと想像以上だと思うんです。でもそこを必死でやることが役作りにつながっていくんじゃないかって。殺陣でどこまで見せられるかが今回、自分への挑戦だったりもしますね。
――「自分の生き様を決めるのは、自分だ」というキャッチがリリースに書かれていますが、水さんご自身もこの言葉に共感しますか?
水 すごくそう思います。自分が決めなくて誰が決めんの?だし、私自身そう生きてきました。やるやらないは自分次第だし、自分が決めない限り完成しない。そしてやるならやっぱりやり通したいしってすごく思うので。
――殺陣のハードなこの舞台に出演を決めたのも水さん自身、と。
水 そうなんです!!
清水 自分自身で決めるといっても、実際はなかなか難しいですよ。周りが良かれと思ってしてくれるアドバイスに揺らぐこともありますし。水さんだからできるっていうのもあると思う。水さんぐらいのキャリアと実力なら映像の世界に転身という選択もあると思って、一度聞いたことがあったんです。でも「私は今は、とにかく舞台!」って。僕はそこにもすごく共感しました。水さん自身が作品のテーマにすごく合う人だし、やっぱりこの公演、絶対成功する自信がありますね(笑)。
■公演情報■
30-DELUX 「新版 義経千本桜」
歌舞伎三大名作の一つ『義経千本桜』を、30-DELUXが豪快にアレンジ!
セリフと殺陣で物語を紡ぐ“アクションプレイ”が魅力の30-DELUXが、“歌舞伎作品”を新たなエンターテインメントとしてお届けします。
源平合戦のその後を描き、源氏と平家の移りゆくさま、戦乱の時代に翻弄される庶民たち、その人間ドラマを、
新しい視点と解釈でもって上演!!
『義経千本桜』の作品の魅力を活かしつつも、30-DELUX流の“笑って、泣けて、考えさせられて、かっこいい”ステージを
堂々披露いたします。
この夏、30-DELUXの新たな挑戦に、乞うご期待!!!
[劇作・脚本]西森英行 [演出]伊勢直弘 [音楽]和田俊輔
[出演]水夏希 / 新垣里沙 / 佐野岳 / 聖也(Wキャスト) / 武藤晃子 / 谷口敏也 / 大山将司 / 枝尚紀 / 川口莉奈 / 金田瀬奈 / 中村悠希 / 加藤雅人 / 田巻篤 / 村瀬文宣 / 伊与田良彦 / 小笠原健 / 清水順二 / 坂元健児 / 田中精 / 馬場良馬 / 他