「生きる」をテーマに、心の栄養になる歌を
舞台のみならず、著書やトークなど幅広く活躍し続けている美輪明宏。その美輪が選曲、構成、舞台美術、照明、衣裳のすべてを手がける、恒例の「ロマンティック音楽会」が9月に開催される。毎回、自身の膨大なレパートリーから、その時代に人々が求める歌を届けてきた。今年は「生きる」をテーマにしたいと語る。
美輪「たとえば道を必死に横切る猫は、車にひかれたくないからそうするわけです。人間も同じで年齢、職業に関係なく、誰もが何とか生きようと頑張っているからこそ、目先のことで精一杯。最近、ずっとそんなことを考えていました。コンサートで全国各地をまわっていても、現実が辛いから、皆さん心の安穏を求めていらっしゃるんです。というのも今の音楽はメロディーもほとんどないし、歌詞もツイッターソングと言われるぐらい、たんなる娯楽、BGMになってしまっているのです。でも実は、お客様は逆のものを求めていて、提供する側と乖離しているんです。ですから古い唄ばかり歌っていると言われようが(笑)、その間を埋めようと。それに若い方には私が表現する明治・大正・昭和の世界がとても新鮮に思えるようです。きゃりーぱみゅぱみゅさんが私の芝居を観に来てくださったり、若いファンの方が年々増えていてうれしいです」
今年のプログラムはどのようなものになるのだろうか。
美輪「4月からNHK Eテレの『にほんごであそぼ』に“みわサン”というキャラクターで出演しており、和歌や俳句を紹介するのですが、幼い子でもちゃんと理解しているんです。これは素晴らしいなと思い、一部では日本語の美しさを伝えて、童心に返っていただける選曲を考えています。あとはサラリーマンと主婦の本音を描いたオリジナル曲、ラテンの『ベサメムーチョ』や『老女優は去り行く』なども入れるつもりです」
取材中、美輪が『愛の讃歌』の歌詞を語り出しただけで、目の前に壮大なドラマが広がるすごさ。日本語の美しさが心に染み入るようだ。
美輪「言葉、話を聞くことが、今の世の中には一番必要です。テレビも人をバカにして笑うような番組ばかりですし、人間を暴力的にさせるゲームなどが溢れていて、人が信じられなくなったり、バーチャルリアリティと現実との区別がつかない人が増えているそうです」
さまざまな人生経験をもとに、人生相談などでも人気を集めている美輪。それだけに話題はコンサートに留まらず、世の中の見方や生き方へ……。
美輪「ツイッターやネットで悪口を書いたり、書かれたりするのが社会問題になっています。ねたみ、そねみ、ひがみというけれど、私はねたましい人なんて世界中どこにいるのかと思うんです。誰もいないです。恵まれているように見える人でも、実は病気を抱えていたり、家族関係に問題があったり、容姿にコンプレックスを持っていたり、みんな何かしら劣等感や悩み、苦しみがあるわけで、何もない人なんていない。お互い様なんです。そうやって世界は成り立っていると知っているから、私はこんなに大きな顔をしていられるのです(笑)」
そう語る美輪の言葉の美しさ、歌の力をぜひ生で体感してほしい。
美輪「今回の舞台は一部はレトロな日本の街並を作り、二部は現実を歌った曲が多いので、逆に星だらけにしようと思っています。星だって同じ物は一つもないの。人もそう。みんな同じ必要はないんです。そんなことも含めて、心の栄養になる歌をお届けします」
インタビュー・文 宇田夏苗
構成/月刊ローチケHMV編集部 8月15日号より転載
【プロフィール】
美輪明宏
■ミワ アキヒロ 長崎県出身。16歳でプロ歌手となり、シンガーソングライターの元祖として「ヨイトマケの唄」など多数のヒット曲を生む。演出・美術・音楽などを手がける総合舞台人としても活躍を続ける。主な演劇作品に「黒蜥蜴」「近代能楽集~葵上・卒塔婆小町」「毛皮のマリー」など。「紫の履歴書」「人生ノート」「ああ政府の法則」など著書多数。
【公演情報】
『美輪明宏/ロマンティック音楽会 2016』
日程・会場:
9/10[土]~25[日] 東京芸術劇場 プレイハウス
10/1[土] 東京エレクトロンホール宮城
10/11[火] 愛知県芸術劇場 大ホール
11/10[木]~13[日] 大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
11/19[土] 習志野文化ホール 大ホール
11/22[火] 福岡市民会館
11/26[土] さいたま市文化センター 大ホール
12/3[土] 府中の森芸術劇場 どりーむホール
’17/1/28[土] 相模女子大学グリーンホール 大ホール
’17/2/28[火] 神奈川県民ホール 大ホール
★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!