パルコ・プロデュース「露出狂」
中屋敷法仁×市川知宏×陳内将 インタビュー

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9月30日(金)からZeppブルーシアター六本木で上演される、愛憎×群像×スポ魂活劇「露出狂」。サッカー部の部室を中心に、男子部員たちによる濃厚で複雑な人間関係が入り乱れていく中、人としての傲慢さやエゴなどさまざまな「青春」がぶつかりあう異色作です。今作は、市川知宏、陳内将をはじめとするキャスト総勢32名を3チームに分け、俳優たちの個性がしのぎをけずる仕掛け。23歳以下の若手俳優で構成されたU-23の上演回も用意されています。

そんな中、8月某日に行われた初稽古に潜入しました。当日は、出演者全員が初めて顔を合わせる日。座組みになっての読み合わせを行い、個々が練ってきた役のイメージを存分にぶつけあう緊張感のある稽古に。共演者の仕掛けてくるセリフの読み方に、驚きや笑いが混じり、出演者のボルテージが上がっていくのが見て取れた稽古でした。

今回は、初稽古を終えたばかりの、市川知宏さん、陳内将さん、そして作・演出の中屋敷法仁さんに作品への思いを聞きました。

――初稽古、お疲れさまでした。まずは終えてみてのご感想は?

市川 今日はとても新鮮に感じましたね。同じ役でも、別の人が演じたら、こんなに違うのか、と。セリフひとつの言い方、解釈の仕方など、自分のアイデアにはないものに触れられました。

陳内 昨日までは、家でずっとひとりで台本を読んでいましたが、今日、やっと人と一緒にできたので、寂しさが埋まりました(笑)。印象深かったのは、中屋敷さんが「役者の魅力を丸裸にする」と開口一番言ってくださったこと。これから、どんどん自分の殻を脱がされていくんだなと感じる、まさに「露出狂」というタイトル通りの環境ですよ(笑)。

市川 自分にないものを出してくれる共演者へのリスペクトを感じます。僕と陳内さんは、2つの役をチームごとに入れ替えて演じるので、チームごとに違う呼吸がありそうですよね?

陳内 そうそう。チームによって呼吸は異なるから、役が入れ替わっても、同じように演じることはまずない。実際に稽古でいろんなメンバーとセリフのやりとりをしていくと、家でひとり読み込んでいるときとは違うものが感じられるんです。

中屋敷 今回は陳内さんや市川さんなど、僕が以前から知っていたメンバー以外に、オーディションで新たな出会いを探したんですね。「露出狂」は、これまで2度上演した作品ですから、「この作品はこうあるべきだ」という固定概念も自分の中にでてきていました。それを崩してくれる役者を選ぶことを第一にしましたね。

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――サッカー部が舞台ということですが、実はサッカーシーンがほとんどないですよね?

中屋敷 ないですね(笑)。試合のシーンは2秒くらいであっさり終わるんじゃないでしょうか。試合の思い出よりも案外それまでの練習や日常の思い出のほうが多かったりするものですよね。試合の一瞬よりは、試合までの間、何ヵ月も朝練をして眠たかったこととか。ユニフォームをもらうまでのドキドキ感とか、もらえなかった人が部室でブチキレているハプニングだったりとか。一般的なスポ根は、試合に勝つことで「めでたしめでたし」になりますけど、実は勝った後にドロドロするようなことも実際にはあると思うんです。

市川 確かに、最初は部活の話なんですけど、途中から人間関係が、名実ともに“絡み合い”はじめて、衝撃を受けました。そこからどんどん引き込まれていきましたから。

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中屋敷 たとえばシェイクスピアの「ハムレット」は復讐劇と言われていますが、実際には“復讐できない劇”ですよね。「ロミオとジュリエット」も、“実は恋愛できない劇”なわけです。したいけど、できない。そこにドラマがあるならば、スポーツものの場合は、スポーツしたいけどできないというところが、ドラマとしておもしろいんじゃないかと思うんですよ。

 

――夢見がちではなく、リアルなものを描くことで、おもしろみがあるドラマが浮き彫りになるということですね。

中屋敷 実際に、野球部出身の部活経験者に聞いたことがあるんです。野球の感動的な青春スポ根なら、勝利に向けて熱いやりとりが交わされるように思えるじゃないですか。でも実際は、恐ろしい監督や先輩に不条理な罵声をあびせられながらやっているという話も多々あります。その話を聞いたとき、社会的な教育倫理はともかくとして「あれ、それってすごくリアルじゃない?」と思えた。「やった、優勝した! みんな、ありがとう!」なんていうのは、長い部活動の時間の中でのほんの一瞬のことですよね。日本の部活動に関わっている人たちの大半は、つまんないことでもめたり、部室の中でお互いの本音を、それこそ汚い言葉で出していたりするんじゃないか。輝かしい青春エピソードではなく、耳触りの悪い話だって多いんじゃないだろうか。そういう部分を描き出したいですね。

 

――演出としては、役者にどんな期待をしたいですか?

中屋敷 陳内さんは、今回の芝居では一番“壊し屋”としての期待が高いですね(笑)。芝居がありきたりのものにならないように、いい意味で芝居を壊して共演者たちをリードしてほしい。市川さんは、どれだけ自分の責任をのみこんで、頭がおかしくなるかが勝負です(笑)。セリフを受けることが多い役になるので、チームごとに違う受け方をしていたらいっぱいいっぱいになるんじゃないだろうかと思います。そこでこんがらがって「ウワーッ」となったときに出てきたものをつかみたい。

陳内 なんかコワくなってきましたけど(笑)。僕は2012年のパルコ版も「柿」(「柿喰う客」)の女性版も観ましたが、一度観ている作品の模倣には絶対にしたくないですね。

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――今回は若手の台頭も気になる仕掛けがあるそうですね。

中屋敷 U-23という23歳以下のチームをひとつ作りました。初舞台の人も何人かいます。彼らがどんな冒険をしてくれるのか、可能性に満ちたキャストのアプローチを見てみたくて。クオリティ重視ではなく、感性で芝居を広げていってほしいですね。これは僕の中でのテーマですが、いかに共演者に興味を持てるか。それを楽しめるか。上手下手ではなく、どんな関係性を作り、舞台に色を付けられるか。そこをぜひ楽しみにご観劇いただけたらと思っています。

陳内 今日読み合わせをして思ったことですが、U-23の人たちは読み方がとても素直。それを見ていると、「僕はもう素直じゃなくなってしまったんだな」って思ってしまいました(笑)。それがひとつの気づきにもなっていますから、逆に学びをもらえそうです。

市川 確かに、ストレートな芝居をしてきますよね。

陳内 U-23って、今回のチームの中で一番大化けする可能性があるチームかも。稽古を重ねていくと勢いが増すんじゃないかと思います。U-23は3ステージしかないぶん、1ステージごとにすごいパワーを込めてきそう。脅威というか、いいライバルになれそうですね。

中屋敷 演出としては、その人の新しい面を見せていくのも僕の仕事だと思っていますから、役柄と演技者の間に必ずズレというか、大なり小なりミスキャスト感を持たせています。だから出演者は、自分の想像通りのリアクションを相手がしてこないことの方が多いはず。チームごとに、また公演回ごとにすべてお芝居が違ってくると思います。その違いを見るのも今回の楽しみの一つでしょうね。「露出狂」という芝居には人間関係とか社会の構造、縮図を描いているつもりなので、多種多様な人間模様を楽しんでいただきたいと願っています。

 

インタビュー・文/新田哲嗣

 

【公演情報】
パルコ・プロデュース公演「露出狂」

日程・会場:
2016/9/30(金)~10/10(月・祝) Zeppブルーシアター六本木