ヨーロッパ企画 最新作『来てけつかるべき新世界』会見レポ!
写真は上段左から上田・土佐・諏訪、下段左から酒井・永野・石田
京都を拠点に、舞台以外に映画やTV・ラジオなど、個々でもマルチな活躍をみせている劇団『ヨーロッパ企画画』。今回、彼らが贈る新作は、実在する大阪の”新世界”という町を舞台に描く、おっさんVSドローンによるSF的コメディだ。そのキャンペーンで福岡を訪れたヨーロッパ企画のメンバーで、脚本・演出を務める上田誠、出演メンバーの石田剛太、酒井善史、諏訪 雅、土佐和成、永野宗典が今作について語ってくれた。
どんな作品になるのか?タイトルからも気になるところだが―
上田「いつかやりたいと話をしていた劇団初の関西弁劇です。今までは抽象的な場所を舞台にすることが多かったのですが、実在の場所を舞台にするのも劇団初。現代はあらゆる場面で人工知能による機械化が進み、2045年には人口知能が人間を支配すると言われるくらいの時代になりました。そんな新たな世界が大阪の新世界という下町的な場所にもじわりじわりと“やって来やがった”=“来てけつかるべき”という、少し汚い関西弁を今作のタイトルにつかっています。大阪・新世界の串かつ屋を舞台に、ドローンと人間の物語を展開させ、古きよき大阪の下町的な“新世界”という町の愛すべきおっさん達が、果たしてこの新たな世界にどう生きるかを描きます!」
会見中に上田も語っていたが、世間では大阪の新世界と聞くと昼間から酔っ払ったおっさんがいるなど、どこか少し怖くて・猥雑的なイメージを持っているところがあるという。ただ、そこには“愛すべきおっさん“たちがたくさんいるようで、彼らに新世界×おっさんのエピソードを尋ねたところ、興味深い話が飛び出した。
永野「僕は地元が九州の宮崎なので、大阪の新世界はなんとなく怖いイメージがありました。通天閣に行ったら、どこで『コラ!』ってドヤされるのだろうかと脅えながら足を踏み入れたんです(笑)。実際に上半身裸でうろついていたり、ギラギラ感があるような野生的な人がいました(笑)。でも、役作りも兼ねて3人くらいのおっさんに話を聞こう!と勇気を出して声をかけたら、皆さんスグに心を開いてくれて、質問しなくてもたくさん話をしてくれました。仕事がないとか、昔はもっと自由やったと嘆いていて、なんだか親近感を持てました。ピュアな人たちばかりで、怖いという潜入感は消えましたね」
土佐「潜入感がすごかった分ね(笑)。今、その話を聞いていて思いだしたんですが、僕は大阪に住んでいて、学生の頃にバイト先から新世界を通って帰っていたら、前から拳銃を持った人が走ってきて、『動くな!』と言っているんです。でも、その直後に『ワッハッハ~!』と笑って去って行きまして・・・。スゴくシャレ効いてんな~という思い出があります(笑)。シャレとパンチが強い町ですね。町中で拳銃を見たのは、それ1回だけですけどね (笑)。あれが本物か偽物だったかどうかは・・・??」
石田「本物・・・っていうギャグだったりしてね(笑)。僕は、エピソードというか・・・、あまり新世界に行く機会がなくて、今回のチラシ撮影で行った時に将棋倶楽部でおじさんたちが将棋をさしているのを見かけたんです。そこには本当におっさんしかいなくて、僕、将棋が好きなんですけど、そこにいるおじさんたちの将棋の棋力(=強さ)が風貌からは想像もつかず(笑)、入る勇気もなかったから、今度時間があったら一戦交えて棋力試しをしてみたいですね」
諏訪「おっさんにインタビューをしに行った時に、駅前のとある柵のところで、勝手に立ち飲み屋のように柵の上にビールを並べて飲んでいるおっさんがいまして(笑)。『昔、ここはこんな柵なかったんやぁ。昔はよかったわぁ』と言いながら柵を使いこなしていましたよ。『新世界の一番好きなところどこですか?』と質問したら、『動物園の裏にある路地が好き』と言っていて、実際に行ってみたらそれらしき路地はなかったんです・・・。かつてあったとかでもないから、あれ?路地もないし・・・さっきのおっさんも本当にいたのかな?と思ったという・・・、SF的・ファンタジーなエピソードがありました(笑)」
酒井「僕も今回おっさんにインタビューをさせてもらったんです。その中に、宝塚から新世界に通って来て、ビリケンさんが置いてある横のベンチに座っている人がいまして。そのおっさんは、自分自身がビリケンさんに願いを叶えてもらったらしく、観光客が来たら御参りの仕方や写真を撮ってあげたり、勝手にお節介をやいている人がいて(笑)。そんな中、他の方にも話しを聞きましたが、共通していたのは新世界に通うのがストレス解消になっているということ。『安息の地だったり、流れ者たちが結局は最後に落ち着く町なんじゃないのか?』とおっしゃっていて・・・」
土佐「なんか最後、キレイにまとめてきたな~(笑)」
酒井「いやっ、本当に(笑)。高架下で流しをしている方が、以前は阿倍野にいたけど、あべのハルカスが出来ることになって阿倍野を追いやられたらしくて、『昔はよかった』と言っていたんです。地元からも遠くからも、いろんなところからおっさん達が新世界に集まっているんですよ。だから“おっさん”率が高い町なんだなって思いました」
上田「皆さんが共通して『昔はよかった』と言われていたというのが、感慨深いなぁ」
それぞれが味わった新世界での”おっさん”エピソード。彼らが感じたおっさん像など、演技プランが気になるところだが―
永野「歩いている姿がものすごく印象的だったんですよ。目的がない歩き方というか。これは絶対マスターしないといけないなと(前傾姿勢で歩いてみせる)。何かに向かって歩いているんですが、あえて酷い言い方をするとしたらですけど・・・まるで犬を見ているかのような気持になるというかね(笑)。宮崎出身で関西弁はハンデがあるんで、いかに動物的に振る舞えるかという、容姿の部分から“おっさん”に近づけていけたらなと思いますね。」
土佐「お芝居での関西弁と普段使いはちょっと違うんで、関西弁で芝居するのがなんか照れくさいんですよね。だから、ヨーロッパ企画ならではの関西弁劇が作れたらいいなとは思いますね」
石田「僕は“将棋”でいくしかないなと思いますね!」
土佐「将棋、いくな~(笑)」
石田「いや、今作で取り上げる人工知能的な話でいくと、人間が人工知能に負けるということがプロの将棋の世界でも実際にあるんですよ。一般の世界でも、オンラインで将棋対決をしていて対面してないのをいいことに、ある人がこっそり別の強いコンピューターに次の一手を考えさせて、いかにも自分が打っているかのようにして勝ち続ける・・・ということなんかがあるらしいんですよ。でも、分かる人にはコンピューターの攻め方が分かるらしいです」
上田「演じ方の話やで?違う話になってる(笑)。じゃあもう、ギブアップってことで(笑)」
諏訪「今回、打ち合わせで新世界に通っていて、次第に怖さも消えて、ある時『僕も飲みたいな』と思って昼から一人で飲んだことがあったんです。その時にものすごく酔いが回って、このまま路地に腰掛けて飲み続けたら、本当に“新世界のおっさん”になれそうな気がしたんです。本能に近い部分にいけばスゴく居やすい場所だったから、演じるというよりはどれだけ素を露わにしていけるかが演じるポイントになるんじゃないかなと思っています」
酒井「僕はこの中で一番年下で、年齢よりも若く見られがちでして・・・。“おっさん”ってどこか声も低くてガサガサしている印象がある分、自分は声も高めだから“おっさん”を演じきれるか心配も大きかったんです。でも、実際に新世界に行ってみると、声高なエキセントリックなおっさんもいたんで、声は大丈夫だなと(笑)。だから、人工的に体内にナノマシーンを埋め込まれて若さを保っている・・・とか、機械の方に寄せることでおっさんになれないかな~と考えています」
上田「おっさん像が一番難しいところなんですよね。実際に稽古してみた時に、関西弁で演じてもらったら意外とおっさんっぽくなったんですが、それは酔っ払っているのがいいのか?歩き方がポイントなのか?そのあたりで、ヨーロッパ企画ならではのおっさん像を作らなければならないと思っています。関西弁だけではおっさんらしくならないから、関西弁×ドローンといったSF的な違和感のある言葉がぶつかることで、おもしろさを出していけたらと思っています」
ヨーロッパ企画の『来てけつかるべき新世界』は、京都・東京・広島を回って、10/1 (土)・2(日)の福岡が公演間近!その後は10/5(水)~11(火)までの大阪公演に続いて、四日市・高知・横浜・名古屋へとまだまだ公演は続く。ローソンチケットでは、各地のチケットを発売中。ヨーロッパ企画が生み出した“おっさん”たちに会いに行こう!
取材・文/ローチケ演劇部(シ)
【公演情報】
ヨーロッパ企画第35回公演『来てけつかるべき新世界』
[作・演出]上田誠 [音楽]キセル
[出 演]石田剛太 酒井善史 角田貴志 諏訪雅 土佐和成
中川晴樹 永野宗典 西村直子 本多力/金丸慎太郎
藤谷理子 福田転球
【公演日】
10/1(土)・2(日) 福岡・西鉄ホール Lコード82147
10/5(水)~11(火) 大阪・ABCホール Lコード53094
10/21(金) 高知県立県民文化ホール グリーンホール Lコード63054
10/27(木)~30(日) KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ Lコード34570
11/2(水) 名古屋市東文化小劇場 Lコード42902
※各地、公演日時の詳細は下記『チケット情報はこちら』よりご確認ください
※四日市市公演の取扱いなし