少林寺現役武僧×現代アート&ダンスが魅せる極限の芸術
アクロバティックパフォーマンス『sutra スートラ』日本初上陸!
「少林寺」と聞いて何を思い浮かべますか?
強靭かつ柔軟な肉体を華麗に操る少林拳。優れた武術であると同時に、精神鍛錬の修行の場。映画でも多く題材にされ、少林寺を知らない日本人は少ないのではないだろうか。
でも、「少林寺とコンテンポラリーダンスの融合」「現役僧侶によるアクロバティックなパフォーマンス」となると、途端に“未知との遭遇”だ!
『sutra スートラ』は、2009年にロンドンで初演以来、世界60都市で大絶賛の旋風を巻き起こしてきた作品。現在もワールドツアーを継続する中、いよいよ日本初上陸を果たす!
世界で唯一認定される本家嵩山(すうざん)少林寺の現役武僧と、国籍を異にする西洋のコンテンポラリーダンサーが融合。そこに、躍動感みなぎるライブ演奏、前衛的かつ幻想的な舞台美術と装置、アーティスティックな照明が加わり、前代未聞の“ステージアート”を創り上げた。演出・振付は、パリ・オペラ座作品から、シルク・ドゥ・ソレイユ「Michael Jackson ONE」の振付まで手掛ける、世界でいま最も多忙な舞踏家・演出家のシディ・ラルビ・シェルカウイ。日本では森山未來出演作品「テヅカ」「プルートゥ」を手掛けている。
10月の日本初日を前に、本作の海外公演で主演を務めたダンサーのアリ・タベと、初演から出演している少林寺僧侶のファン・ジャハオとグアン・ティンドンが緊急来日。直撃インタビューをした。
最年少のグアンは1度目、僧侶のリーダーであるファンは2度目(「テヅカ」に出演!)、アリはなんと5度目の日本。日本に好印象を抱いてくれている3人に、『sutra スートラ』で少林寺のなにが表現されるのかを聞いた。
ファン ステージでは、まず、我々の日常生活をお見せします。規律正しく生活している日々の所作、それこそ歩いたり、座ったり、寝たりの動きが盛り込まれています。そして、日々鍛錬を積む武術をとおして、少林寺の伝統、文化、武術によって鍛える人々の心身の健康など、少林寺のことをもっと知っていただきたいです。また、我々人間と舞台装置では、お寺の形や、仏教に深く関係する蓮の花の形なども表現します。
グアン 中国の武術と西洋の舞踊。このアートの融合をお見せしたいです。武術には様々な種類がありますが、私たちの少林拳ではこんなこともできるのか!という驚きを感じてほしいです。
アリ 西洋のダンサーは、身体と精神を別々にトレーニングする傾向があります。なぜ自分は踊るのか? なぜ体を鍛え同時に精神も鍛えるのか? それを一人で探さなければいけない職業です。一生探し続けても見つからない答えかもしれませんが、探すことが西洋のダンサーには大事です。少林寺にお邪魔して共にパフォーマンスし、気づいたのは、彼らは身体と精神を二つに分けて考えていない、差異を持たず修行されていることでした。動きの中にすでに精神が組み込まれている。私は仏教徒ではありませんが、動きと精神が共存していることに非常に大きなインスピレーションを受け、学ばせてもらいました。
現代アート界の巨匠アントニー・ゴームリーによる舞台装置は、無機質なまでにシンプルだ。ひとりに一つ、わが身が収まる大きさの箱が与えられ、全員で自由自在に組み合わせ、変化させていく。静謐な瞬間と、躍動の瞬間が入り乱れる。一斉に咲き誇り、それは蓮の花になる。なんとも想像力をかき立てるではないか!
日本公演の注目点は、演出のラルビ自身が主演ダンサーを務めることにもある。ラルビとアリは実際に少林寺に約3ヵ月滞在し『sutra スートラ』を構成した。10年来の仕事仲間であるからこそ知るラルビの魅力を、アリが語ってくれた。
アリ 彼は自分自身を包み隠さないオープンな人。監督の立場でありつつ、迷いは必ず私とシェアしました。監督と演者の関係からいえば少々不安でもありますが、でも、監督が一人で解決するのを待つスタンスではなく、一緒に解決する点は、私としても大きな挑戦。最初に少林寺に滞在してクリエーションした時点では、どんなものができるかまったくわかりませんでした。出演僧侶は5人なのか、10人、20人なのかもわからない。彼は常に一切の偏見がなく、自らのバックグラウンドをも脱ぎ捨て、好奇心とたくさんの質問を持って少林寺に行き、自分の目で見たものから答えを紐解いていく。私たちはディスカッションを重ねて創作していきました。正直、ロンドンの初演は不安でした。いい作品になっているのか、観に来てくれる人はいるのか、と。でも、こんなに成功し、私も驚いています。
世界60都市、8年間のロングラン公演は現在も続行。この事実がすでに、『sutra スートラ』の素晴らしさを雄弁に物語っている。グアンは、初期は「少年僧侶」だったが、成長した今回は「大人僧侶」の群舞に入る。彼自身も本作の歴史だ。
グアン 少年僧侶はわんぱくな役。大人のそばで遊んでいる気分でした。箱にのぼったり、箱ごと大人に引きずられたり、迷宮の中を探したり。おもしろくて、ラルビ監督とも一緒に遊んでいる感じです。私が、こんなこともできるよ、こんな風にも動けるよと体を動かすと、ラルビ監督も箱の中に入ってきて、監督が上、私が下と、遊ぶように一緒に動きました。でも、大人のチームに入ると、箱の操作をミスしてはいけない緊張感が……。難度が上がりました。コンディションを整えてステージに臨みます。
ファン 言葉は通じなくても、ラルビ監督のやり方に賛同できます。監督だからと意見を押し付けることはなく、私たちのアイデアやアドバイスを本当に大事にしてくれる。一緒にやってきた8年間は、私自身の人生の成長過程そのものでもありました。西洋の音楽、ステージの技術、照明からも影響を受け、すべてが私の成長になった。ステージ以外の生活の中でも、お互いに勉強し合いました。西洋の方々にカンフーを教えたり、逆に、ラルビ監督の友人からストリートダンスやヒップホップを習ったり。世界各国を公演で回りながら現地の文化に触れ、ライフスタイルを見聞したことも人生経験です。
演者同士の「信頼」という融合が、舞台上の「アート」の融合を、より完璧なものにする。
少林寺とコンテンポラリーダンス、精神と肉体、異国の文化。あらゆる壁を超える『sutra スートラ』の威力を、その目で見届けてほしい。
インタビュー・文/丸古玲子
★10/1(土)19:00公演終了後には、シディ・ラルビ・シェルカウイ×森山未來 スペシャル・アフタートーク開催決定! こちらも見逃せない!
【公演情報】
『sutra スートラ』
日程・会場:
2016/10/1(土)・2(日) Bunkamura オーチャードホール
2016/10/5(水) 愛知県芸術劇場 大ホール
2016/10/8(土) 北九州芸術劇場 大ホール