演劇と映画と音楽が融合した新しいエンタテインメント・ライブシネマ『怪獣の教え』が
21日(水)・Zeppブルーシアター六本木にて初日を迎えた。
初日公演の直前には囲み取材が行われ、演出・脚本・映像を務める豊田利晃、出演する窪塚洋介、渋川清彦、太田莉菜の4名が意気込みを語った。その模様は会見レポートにて。
こちらでは、囲み取材後に行われたゲネプロの模様をお伝えしたい。
<あらすじ>
国家の秘密を暴露して、政府から追われ、島へ逃げてきた天作(窪塚洋介)は
従兄弟であるサーファーの大観(渋川清彦)に船を出すように頼む。
天作の目的は、祖父から教えられた“怪獣”を蘇らせること。
一隻の船に乗り込むと二人は海へ出る。
昨晩、二人が知り合った、島々を転々としながら暮らすクッキー(太田莉菜)は、
怪獣の教えの秘密を知っていた……。
ステージの背景は全面スクリーン。囲み取材にて、初演より大きくなった会場について訊ねられた豊田が「スクリーンも奥行きも広くなったので、その分迫力は増すと思う」と自信を覗かせていた通り。
スクリーンの後ろには「TWIN TAIL」の中村達也(Dr)、ヤマジカズヒデ(Gt)、青木ケイタ(Sax&Fl)がスタンバイ。楽器が照明に反射して、時折きらめくのがスクリーン越しに見える。
静かな波音が満ちる客席に開演アナウンス(初めて本作を観に行かれる方は、声の主も是非お楽しみにして頂きたい)が入り、ステージ中央にはいつの間にか「ディジュリトゥ」(オーストラリアの先住民の管楽器)を操る奏者・GOMAの姿が。その動きは音楽を司る指揮者、あるいは魔術師のよう。ふわりふわりと揺れる手つきに呼び出されるかのように、スクリーンに映像が浮かび上がっていく。
途端、「TWIN TAIL」の生演奏が押し寄せるように始まり、スクリーンの映像も激しく動き出す。天作(窪塚)が独白を終えた頃には、観る者は作品の渦に呑み込まれている。
“ボニン・アイランド”“最後のパラダイス”……様々な呼び名で賞賛される小笠原諸島が本作の舞台。最小限のセットが、スクリーンに映し出される小笠原諸島の美しい夕日と青い海を際立たせる。
小笠原諸島といえば、160万年前の海洋火山が噴火した時の風景が手付かずで残っているといわれる、自然豊かな地。イルカやクジラも泳ぎ、固有種の生物も多い。
夢にしか存在しないパラダイスのようだが、紛れもなく実在する。
それも住所的には東京都内に。
繰り広げられる物語も、架空の国に起こっている話のようでいて、
確かに“今”の問題を含んでいる。
意図的に目を逸らしてきた現実世界の物事が、俯瞰で観るつもりだった異空間で晒されていく。そのなんともいえない心地。まさしく、夢と現実の狭間にいる気分。
作品の中に生きている人々も、決してファンタジー的ではない。
渋川が演じる大観は、島育ちで気ままに生きているようだが、愛嬌たっぷりでピュアな男と見える奥底に、どうしようもない人間の性を持っている。
太田が演じるクッキーは、スラリとした四肢とミステリアスな雰囲気だが、独特の生き方を主張するアイランドホッパーだ。
そして囲み取材で「差がないというと語弊があるけれど、僕そのもの」と窪塚が語った天作。正義感と過去を背負い、胸に激情を宿して故郷に戻ってきた男。
3人共、あまりにも自然でリアル。それでいて言葉の一つ一つ、歩み方や動き方の全てが観る側に伝わる最大値で発せられている。窪塚洋介の才は目の当たりにすると、クラクラした。
登場人物たちに寄り添うように、時には殴り掛かるように降り注ぐ音楽。
それ自体が意志を持つ生物かのように激しく訴えてくる映像。
「TWIN TAIL」の生演奏と、豊田が操るスクリーンのインパクトは自然の脅威のような凄みを備えていた。
音楽、映像、照明、音響。そして役者の熱。
それら全てが感化し合い、倍増してステージから溢れ出す瞬間が、確かにあった。
“演劇+音楽+映画”とタイトルされているが、これは加法どころか
“演劇×音楽×映画”と乗法しているステージだ。
見終えた後、観客が抱える“積”は、とてつもなく大きい。
ネタバレ厳禁のため、抽象的な感想しかお伝え出来ず申し訳ないが、潮風の香りすら感じられるような“島”を醸し出すステージが、東京・六本木で行われているという「劇場」ならではの空間で、稀有な一時を過ごせる舞台である。公演は25日(日)までの僅か7公演。
満員御礼となった初演を惜しくも見逃した方、
タイトルがなんとなく心に引っかかった方、
ライブ好きな方、演劇好きな方、映画好きな方。
見たことのない世界が目の前に広がる興奮、
知らなかった物語が心に刻まれる瞬間を是非、体感して頂きたい。
取材・文 片桐ユウ
撮影 黒川康平
【公演情報】
ライブシネマ 演劇+音楽+映画
「怪獣の教え」
満員御礼の伝説的公演、あの怪獣が東京に上陸!
初演(2015年11月・横浜)で大絶賛された
豊田利晃監督オリジナル脚本、窪塚洋介主演『怪獣の教え』
演劇と映画と音楽が融合した新しいエンタテインメント・ライブシネマ、
待望の東京公演決定!
日程:2016/9/21(水)~25(日)
会場:東京・Zeppブルーシアター六本木
★当日引換券、好評発売中!!