演出家・栗山民也からの「しのぶちゃん、古典をやってみない」の誘い文句が実現した舞台『フェードル』。
大竹「栗山さんは立ち位置とかも含めてとても細やかな演出をしてくださる。それがこの骨太で大胆でっていう大きな戯曲のときにどんな演出になるんだろうっていうのが楽しみです」
ギリシャ悲劇「ヒッポリュトス」を題材に、17世紀のフランスの劇作家ラシーヌが著した傑作。アテネ王テゼの妻フェードル(大竹)は若く高潔な継子イッポリットへの恋情に身を焦がしているが、アリシーという娘を密かに想う彼は、義理の母フェードルをきっぱりと拒絶する。
大竹「フェードルは“むき出し”という感じで、『なんなんだろう、この人』と思わないでもないんですけど(笑)、女の持つ感情のいろんな部分を表しているから面白いです。奥ゆかしい妻、愛に目覚める女、激しい嫉妬の顔……。こういう激しい役、私はやっぱり好きですね」
フェードルが立場も顧みず愛を捧げる相手・イッポリットには平岳大。その彼の想い人だが、結ばれない関係にあるアリシーには門脇麦。フェードルの夫テゼには、主にミュージカルで活躍し重厚な持ち味が光る今井清隆。
大竹「平さんとは蜷川(幸雄)さんの『火のようにさみしい姉がいて』(2014年)で一緒だったんですけど、同じシーンがなかったので初めてのようなもの。すごく真っ直ぐで真面目な人なので、この役にピッタリですね。今井さんや麦さんとは全くの初めて。麦さんが出演している映画や舞台を観たことはあって、お芝居が真っ直ぐで素敵だなと思っていました」
初顔合わせの顔ぶれが多い中、フェードルの乳母で相談相手のエノーヌは、キムラ緑子が務める。「『私があなたを取り上げたんですよ』みたいなエノーヌの台詞もあって(笑)。『なんで私が乳母なんだ!』って緑子ちゃんの声が聞こえてきそう」と笑うが、前作『三婆』ほか共演作多数で、プライベートでも仲が良いキムラとの息の合ったやり取りは見どころのひとつとなるはず。
蜷川幸雄演出『エレクトラ』(2003年)など、古典は何作か経験している。
大竹「やる前はなんか難しそうでとっつき難い印象は正直あったんですけど、やってみたらこんなに面白いものはないと感じて。古典って、装置も何もないところで自分の肉体を通じて出てくる言葉と感情だけで観せてきたものだから、そこがやっぱり潔い。『ここから始まったんだ』っていう、演劇の原点である実感がすごくありました。台詞の中に実際“神”という言葉もたくさん出てくるんですけど、地上と天をつなげて、舞台上で神様と対話できるような感覚があるのが、古典をやるときの一番の喜びです」
自身の経験も踏まえ、「古典も難しくないって思ってくれたらいいな」と呟く。
大竹「解放された役者の身体に、愛や憎しみの感情で血が激しく巡っているのを生で観れば、観る人もドキドキやワクワクを感じてもらえるはず。それが演劇なんだなと思うし、血が滾るみたいな、そういうところを見せないときっと意味がない。そのために必要なのは、言葉の持つ力に感情のエネルギーがマッチしていること。そこは私たちがちゃんとやらなきゃいけないですね」
インタビュー・文/武田吏都
構成/月刊ローチケHMV編集部 1月15日号より転載
掲載誌面:月刊ローチケHMVは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
大竹しのぶ
■オオタケ シノブ ‘57年東京都出身。昨年は舞台「ピアフ」、映画「後妻業の女」など話題作に多数出演
≫演出 栗山民也インタビューはこちら
【公演情報】
フェードル
日程・会場:
2017/4/8(土)~30(日) 東京・Bunkamuraシアターコクーン
2017/5/6(土)・7(日) 愛知・刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
2017/5/11(木)~14(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
作:ジャン・ラシーヌ
翻訳:岩切正一郎
演出:栗山民也
出演:大竹しのぶ 平 岳大 門脇 麦 谷田 歩 斉藤まりえ 藤井咲有里 キムラ緑子 今井清隆
★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!