僕自身も〈Season鳥〉を楽しみたい
3/30[木]、東京・豊洲に新劇場「IHIステージアラウンド東京」がいよいよオープンする。巨大な円形客席が回転し、その客席を舞台が取り囲むという画期的なシステムのこの劇場は、オランダ・アムステルダムに続き世界で2つ目の劇場となる。そのこけら落とし公演として上演される、劇団☆新感線の人気作『髑髏城の七人』は、“花・鳥・風・月”の4シーズンに分けそれぞれシーズンごとにキャスト、脚本、演出が入れ替わることでも話題を呼んでいる。第1弾“Season花”に続く“Season鳥”で、物語の中核を担う捨之介を演じる阿部サダヲにスペシャルインタビュー!
「花・鳥・風・月」という4シーズンに亘りロングラン上演されるこの企画。トップバッターを飾る〈Season花〉に続き、そのバトンは〈Season鳥〉へと引き継がれ、円形状の客席が360度回転する「IHIステージアラウンド東京」での上演など、依然として高い注目度を誇っている。
阿部「こういう企画に参加出来ることは正直嬉しいです。新しい劇場でお芝居ができるのは楽しみですし、『髑髏城の七人』を1年以上かけて上演するというのも凄い。舞台経験のある役者だったら誰もがやりたいと思うんじゃないですかね。そういえばこの前、テレビの仕事で八嶋智人さんと一緒になった時、『いいなぁ、髑髏城…俺も出たいわぁ』って言われました(笑)。それくらい、世の舞台俳優たちに『出たい』と思わせる企画なんだと思います」
新しい劇場で行われる他に類を見ない新しい試み。
その場所に主演として立てる喜びは、俳優にとって大きな誉れだろう。
阿部「俳優というか、新しいオモチャをもらった子供みたいな、そういう嬉しさもありますよね。お客さんの期待にも応えたいし、僕自身も凄く楽しみたい。その楽しみ方を教えてくれるのは演出のいのうえ(ひでのり)さんだから、あとはその中で、どうやって僕なりに楽しもうかと。(演出面に関する)色々な噂は聞いていて、〈花〉よりも歌と踊りが強化されるらしいのですが、(森山)未來くんは踊れる人だし、振付は『恋ダンス』のMIKIKOさんがつけてくれるということで、そういうところも楽しみです。今の時点ではあまり想像がつかないけれど……、ちょっとポップな『髑髏城の七人』になるのかなぁ? 色んな要素が混ざって面白くなりそうですね。〈花〉は骨太なイメージだけど、そういう意味で〈鳥〉はガラッと変わるかもしれないです。基本的に見比べてもらった方が楽しいと思うんですよ。お客さんもそのつもりで観に来るでしょうし、〈花〉に関わった人たちにも『そっちもいいな』と思われたい。観た人をびっくりさせたいし、『ああ〜、ココから攻めてくるんだ⁉』みたいな、意外性のある見せ方が出来たらいいなと思っています」
『髑髏城の七人』は劇団☆新感線の代表作。阿部サダヲ演じる捨之介も、過去に古田新太、市川染五郎、小栗旬が演じており、多くのファンを魅了してきた。
阿部「捨之介と言うと、やっぱり古田さんの印象が強いです。独特の色気があるというか、あの着流しの感じ。あれが好きなんですよ。着物の裾から脛が出ていて、男の色気ってやっぱ脛だと思う。でも、僕の捨之介は忍者みたいな格好で、宣伝用の写真を撮った時に『あっ!』と思いました。『捨之介イコール着流し』のイメージがあったけれど、これは忍者だぞと。脛は、当然隠れちゃいます(笑)。その衣裳の捨之介が他の登場人物とどう関わるのかも楽しみです。今回、僕の殺陣は逆手になるんですよ。前に出させていただいた『朧の森に棲む鬼』(2007年)では逆手の殺陣をやったし、『レッツゴー!忍法帖』(2003年)では忍者の役をやったので、新感線ファンの方にも観やすい阿部サダヲ、観やすい捨之介になると思います。そして、『髑髏城の七人』と言えば、何と言っても百人斬りが大きな見せ所ですよね。その殺陣を新しい劇場でどうやってみせるんだろう?ぐるぐる回っていたら百人どころかもっと沢山出てきそう。斬っても斬っても終わらない、とか(笑)。そこに贋鉄斎役の(池田)成志さんがどう絡んでくるのか、僕と成志さんの百人斬りがどうなるのか、しかも殺陣は逆手だし……みたいなことをよく考えます。本当に楽しみです。それから、〈花〉を観ていただいたお客さんが〈鳥〉を観に来てくださる時のワクワク感。〈花〉とどれだけ変えられるか、変えていないけれど変わっている感、そういったところにこだわりたいです。僕がいのうえさん演出の芝居に出させていただいたのは『天保十二年のシェイクスピア』(2002年)が最初ですが、その時に『何かリクエストはありますか?』と聞かれて、『少なくとも三回位は歌いたいです』と言ったら、実際その通りやらせてもらえました。歌ったり踊ったりというのは新感線の魅力だと思うし、今回の『髑髏城の七人』でも、是非そういうことをやりたいですね。メタルを歌っている新感線は、観ていて凄く格好いいんですよ。だから、まず僕自身が新感線を堪能したいと思っています。今はとにかく、〈花〉が観たいです。回る劇場なんて、みんな初めてですもんね」
未知数故の魅力。実績ある人気劇団故の魅力。そして、舞台中央に立った時の、阿部サダヲの底知れぬ魅力―︱。数多くの魅力が並立し、それが大きな期待へと繋がる。『髑髏城の七人』ロングラン公演で二番手を託された〈鳥〉が、2017年の夏を華やかに舞う。
インタビュー・文/園田喬し Photo/村上宗一郎
構成/月刊ローチケHMV編集部 3月15日号より転載
掲載誌面:月刊ローチケHMVは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
阿部サダヲ
■アベ サダヲ ’70年、千葉県出身。俳優。1992年より大人計画に参加。舞台、ドラマ、映画と幅広く活躍中。バンド「グループ魂」では、ボーカルの”破壊”としても活動している。
【公演概要】