百鬼オペラ「羅生門」 満島ひかり インタビュー!

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芥川龍之介が空の上で叫びだしてしまうような(笑)
それくらいのミュージカルになったらいいな

ミュージカル『100万回生きたねこ』で演出・振付・美術・衣裳を手掛けたイスラエルの鬼才、インバル・ピントとアヴシャロム・ポラック。そんな2人が今回は、なんと芥川龍之介作品だ。「羅生門」を中心に「藪の中」「蜘蛛の糸」「鼻」などを重ね合わせて、芥川の世界を宇宙のように組み上げていくという。そんな奇想天外な作品に挑むのは、『100万回~』にも出演した満島ひかり。歌や踊りでファンタジックに描きあげる『羅生門』に彼女はどのように挑むのだろうか。

 

――今回の『羅生門』は4年前にご出演されたミュージカル『100万回生きたねこ』の振付や演出などを担当していたインバル・ピント&アヴシャロム・ポラックが手掛ける作品になります。出演が決まった時はどんなお気持ちでしたか?
満島 インバルとアヴシャロムが私のことをちゃんと覚えていてくれて、また「ひかり~!」って呼んでくれたのが嬉しかったです。あの時はまだ自己紹介のような気持ちも大きかったので。お互いの人となりを知っていくとか、身体性を知ってもらうとか。私としては「ひかりはマダマダだったな」なんて思われていると感じていたので「また呼んでもらえた!」と嬉しい気持ちが大きかった。

 

――芥川龍之介の作品を2人の演出で歌と踊りの舞台にすると聞いた時の感想は?
満島 えっ、どこからそのアイデア出てきたの?って(笑)。でも羅生門とか、芥川作品全体が、ヨーロッパなどの海外でもよく読まれているって聞いて、そうなんだ!と思いました。このお話があってから芥川作品を読んでみたら、画が浮かぶというか、映像が浮かんできたんです。読み終った後に、文字よりも登場人物の行いや、どうやって歩いていたか、みたいな肉体的なものが残っていて、ちょっとビックリしました。それで、だから芥川龍之介なのか、と納得しました。

 

――原作の中からもインスピレーションがわいてきているんですね。
満島 芥川作品には日本の深い部分や感覚が表現されていると感じたんです。妖怪のこととか、黄泉の世界が現実世界と並行にある感覚とか、異次元、四次元の世界のこととか…。日本の人たちって、そういう世界を知らず知らずに当たり前に受け止めているところがあるじゃないですか。そういうところにフォーカスしたのは、面白いなと思います。

 

――オリジナルのエッセンスとして妖怪がたくさん登場すると聞いていて、美術や衣裳などもインバル&アヴシャロムが手掛けるので、芥川の世界をどう表現していくかも楽しみですね。
満島 インバルが絵に描いているやつを全部登場させたら、どうなっちゃうんだろう?ってドキドキします。本気でこれをやろうとしてるのかな…って(笑)。でも本当に形にしちゃうんですよね、2人は。前回の時も、衣裳の生地を選ぶために、わざわざほかの県に行って買ってくるなど、ものすごく深いところから作っていたみたいです。ペイントなんかも、インバルが私たちが衣装を着たまま直にやっていたりして。そうやって作ったものだから温かさが生まれてきたり、着る人の魅力が増したり、もっと流動的に体が動けるようになったりしたので、本当に素敵だった。ダンサーさんも音楽家も俳優も、顔を見ていると色の付け甲斐がある人が多そうですもんね。

 

――満島さんにはどんな“色”がつけられそうですか?
満島 私が2人に、すごく褒めてもらえたところは“見た目”。「パーフェクト!」って(笑)。白い猫ちゃんとぼさぼさ頭の女の子だったんですが、そういうちょっと怪奇な?恰好がわりと似合うので。血がクオーターだからというのもあるかもしれませんが…。あの時は、見た目だけじゃなく中身も頑張ろうと思いました(笑)。私は大きな舞台が初めてだったので、すこし固くなっていたというか、もっと流動的に動けたらなと悔しい部分もあったので、今回はもっと自分を出せたら。稽古1週間目くらいで『100万回~』の初日くらいのことができたらいいなと思っています。

 

――「アイ ラブ ハプニング」がインバル・ピントの口癖だそうですが、前回はそんなに素敵なハプニングがあったんですか?
満島 インバルの言うハプニングって、気持ちがクロスする瞬間なんじゃないかな。『100万回~』の時は舞台の下に穴が開いていて、私がそこから頭を出したり引っ込めたり、モグラみたりして遊んでいたら、「Wow!So Cute!」ってインバルの声がして。それで、それやろうよ!ってなって実際に取り入れられたりしました。やった、気に入られた!って嬉しかったです(笑)。他にも、お布団を被って足人間みたいになって動いていたら、それもやってみよう!とか。そういうひとりひとりのひらめきとかアイデアが、きらきらしたハプニングになって、それが合わさって形になっていくんです。だから、再演の方々は大変だったんじゃないかな? そのハプニングを共有していれば流れを理解できるけど、そうじゃないとなぞるようで難しいだろうから。

 

――今作では柄本佑さん、吉沢亮さんとの共演になります。舞台初共演となりますが、お2人の印象は? 2人とも舞台での歌と踊りは初挑戦となりますが…。
満島 そうなんだ! じゃあ私は先輩だ(笑)。例えるなら、柄本佑くんはおじいちゃんの杖で、吉沢亮くんは岩って感じ。佑くんとはドラマの姉弟役で共演していて、もともと大好きなので。せっかくだから、見たことのない佑くんを見てみたいな。歌と踊りは初めてらしいので、その時点でもう見たこともない部分ですけど(笑)。佑くんは、フニャフニャしているようで、精神的なの支柱で居てくれるはず。私が、軸がありそうでない、軸なし人間なので(笑)。なので佑くんのような俳優さんが居るとすごく心強いです。面白いことの起こる予感しか、ないです。

 

――吉沢さんはいかがですか? 岩、とのことですが…。
満島 まだポスター撮りでお会いしたくらいなんですが、吉沢くんはどっしりしていたんです。私は本当に落ち着きがないタイプなんですけど、信じられないくらい落ち着いていて、動じない感じ。もしかしたら動じているのかも知れないけど、それが表に出てこなくて、そこがなんだか可笑しかった(笑)。本人にそのつもりがなくても、なんだかシュールな面白さがある人なんじゃないかな? でも打てば火花が散りそうだなというか、中にマグマが沸き立っているんじゃないかとか。そういうのが見える気がしています。

 

――まだ稽古に入る前ではありますが、今回はどんなふうに演じていきたいと思っていますか?
満島 台本がまだなので、まだイメージだけですけど…。自分が持てる限りの身体表現や日常の中では出しちゃいけないような感情の起伏とか、そういう部分がうまく乗っていければいいなと思っています。日本だけの観念で動かないように。そこは飛び越えていきたいですね。たぶん、女性らしさを演じていくことになると思うんです。女性ならではの激しさとか、おぞましさとか。芥川龍之介の作品が背負っている女すべてを、と考えると相当ですよね。銀(粉蝶)さんと抱き合ってやっていくしかない(笑)

 

――芥川に影響を与えた女と考えると、確かに相当な役になりそうです。
満島 芥川龍之介が雲の上からケラケラ笑っちゃうような、もしかしたら憤慨して「やめろー!」なんて叫んじゃうような(笑)。それくらいでいいのかも。いやむしろ、そのほうが丁度いいんじゃないのかな? たぶん想像するに、奇想天外に解釈して、奇想天外にやっちゃうカンパニーだと思うので。

 

――(笑)。芥川が叫んでしまうくらいの激しい舞台になりそうですが、最後に意気込みをお願いします。
満島 男も女も年齢も関係ない、想像の中の平行世界が目の前に現れる舞台になるはずです。私の末弟が『100万回~』を観に来てくれたんですけど、本当に魅了されてしまってカーテンコールの時に泣いてしまったらしいんです。「人が作ってたんだ!」って思ったって(笑)。観ていると、ふいに温かさがこみ上げてくるパワーがインバルとアヴシャロムの舞台にはあると思います。そんなスペシャルな時間を作っていきますので、ぜひ楽しみにしていただけたらっ!

 

©奥山由之

 

【プロフィール】
満島ひかり
■ミツシマヒカリ 1985年生まれ。97年に音楽ユニット「Folder」でデビュー。その後、俳優に。出演作ごとに大きな注目を集め、数々の映画、ドラマ、舞台で活躍を続けている。近作は7月公開の主演映画「海辺の生と死」、アニメーション映画「メアリと魔女の花」など。

 

【公演情報】

百鬼オペラ「羅生門」

 

日程・会場:
9/8(金) ~25(月) Bunkamuraシアターコクーン(東京)
10/6(金)~9(月) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール(兵庫)
10/14(土)・15(日) 富士市文化会館ロゼシアター 大ホール(静岡)
10/22(日) 愛知県芸術劇場大ホール(愛知)

原作:芥川龍之介
脚本:長田育恵
作曲・音楽監督:阿部海太郎
作曲・編曲:青葉市子/中村大史
演出・振付・美術・衣裳:インバル・ピント&アブシャロム・ポラック
照明:ヨアン・ティボリ
演出家通訳:角田美知代
振付助手:皆川まゆむ
演出助手:西 祐子
舞台監督:山口英峰

出演:柄本 佑、満島ひかり、吉沢 亮、田口浩正、小松和重、銀粉蝶 
江戸川萬時、川合ロン、木原浩太、大宮大奨 
皆川まゆむ、鈴木美奈子、西山友貴、引間文佳

ミュージシャン: ミュージシャン: 青葉市子、中村大史、権頭真由、木村仁哉、BUN Imai、角銅真実

 

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