ちょっとクレイジーなアメリカっぽさを
納得できる形で演じたい
1990年代に日本でも映画やCMなどが放送された「アダムス・ファミリー」。独特のゴシック・テイストとブラックユーモアが人気を博し今なお愛され続けているこの作品が、2010年にブロードウェイ・ミュージカルとして上演され、大きな話題を呼んだ。2014年の日本初演も好評を博した本作が、ついに今年10月再び日本で幕を開ける。今回、新キャストに名を連ねることになった村井良大に、本作への意欲を聞いた。
――今回、ミュージカル「アダムスファミリー」に出演されることになりましたが、決まった時のお気持ちをお聞かせください。
村井「僕はずっとパルコ作品に出演したいと思っていたので、それがとにかくうれしかったですね。パルコの作品はいつも上質なものを上演しているイメージがあったので、僕自身もあこがれがあって出たかったんです。だから本当にうれしくて。今回のお話しをいただいて、映画も見返したんですが、やっぱり面白かったですね。ブラックジョークなんかが効いていて、今でも通用する笑いだなと思いましたし、それがミュージカルになったところがすごくニューヨークっぽいというか、海外の作品らしいですよね。もともとの楽曲がとても印象的で、誰もが聞いたことのあるナンバーですし、音楽的な流れがすんなり入ってくるんですよ。そのほかにもタンゴとかちょっとハチャメチャした感じとかが助けになって、とても観やすいミュージカルになっていると思います。やっぱりアダムスファミリーなので、ちょっと変な出来事を期待してしまうかもしれませんが、2つの家族のファミリーミュージカル、それぞれの人間らしさみたいなところがとても楽しい作品なので、そういう部分にも注目していただきたいですね」
――今回演じる役どころは、アダムス家の長女ウェンズデーの恋人であるルーカスです。どんなふうに演じたいと思っていらっしゃいますか?
村井「ルーカスはやっぱり人間なので、人間らしさの部分は大事に表現していきたいですね。コロッと変わってしまうようなアメリカンな人間っぽさは、出していきたい。ルーカス本人は真剣に考えているんですけど、ちょっと優柔不断なところがあるので(笑)。そういうクレイジーな感じや、あなたって最低で最高!みたいなノリってすごくアメリカっぽいですから、その面白さは自分なりに納得できる形にしたいですね。作品として少し物腰の柔らかいミュージカルなので、お客さんにも少し楽な感じで観ていただきたいですし、僕らも少し力を抜いたような気軽さをもって演じることで、面白さが際立てばいいなと思っています」
――アダムス家の多くは再演組ですが、村井さんは今回からの参加になりますね。
村井「そうですね。なのでディスカッションが重要ですよね。特に今回は、人間チームであるルーカスの一家は新キャストばかりですから、この3人でものすごく話すんだろうなと思っています(笑)。そのあたりは演出の白井晃さんとも相談しつつやっていきたいですね。僕は今回、ほぼ全員が初めて共演する方ばかりなんです。橋本さとしさんとは、以前に少しだけご挨拶だけさせていただいたことがあるんですが、まじめで紳士な方で、すごく丁寧。それがカンパニーを引っ張っていく力になるんだろうなということはその時から感じていました。舞台を観ていても自然と頬が緩んでくるような、人柄の良さがにじみ出ているんですよ。ですからきっと、今回も真面目に作っていってくださるんだろうなと思っています。あと、恋人役となる昆夏美さんは…絶対にブラックジョークとかが好きだ、という確信があります(笑)。昆さん自身もウェンズデーのような役が好きなんじゃないかな? 勝手な第一印象ですけど。芸歴も長いですから、いろいろな部分を冷静に見れているような気がするんですよね。そういう方、僕は好きなので(笑)。共演できるのをとっても楽しみにしています。2人で歌うところもあって、それも面白い曲なので楽しんで歌いたいですね」
――アダムス家は独特のしきたりがあって、彼らにとっては普通ですが他から見るとおかしなところがたくさんあります。ですが意外と自分では普通と思っていても、他人から普通じゃない!と指摘されてしまうこともありますよね。そういう部分では、共感できることの多い舞台だと思います。
村井「そうなんですよね。僕の場合、家族がみんな仲が良くて正月とか、特にそういう行事ごとがなくても従妹や親戚20人くらいで集まって過ごすことが多いんですね。そのことを高校の頃に友人に話したら「そんなのありえない!」と言われてしまって…。そのとき、自分にとっては当たり前の幸せなことが、周りにとっては普通じゃないこともあるんだなと衝撃を受けたんですよ。まぁその時期の男にはありがちなことかもしれないですが、ショックでしたね 」
――村井さんは先日、ミュージカル「RENT」を終え、立て続けに本作への出演、来年以降も「TENTH」への出演など、ここ最近はミュージカル作品にどっぷりと浸かっている印象です。ミュージカルの魅力はどのようなところだと思いますか?
村井「難しいですね…。でも、ミュージカルなどの舞台って、みんなと同じ時間を共有しているという実感がすごくあるんですよ。芝居や良かったり、悪かったり…、お客さんのテンションが高かったり、ちょっとドライだったり…そういうことすべて含めて、舞台だなと思うんです。舞台そのものだけじゃなくて、ちょっと椅子硬かったねとか、会場の雰囲気が良かったねとか、そういう些細なところまで含めて、共有してほしいんです。お一人でご覧になる方も多いですが、見終わった後にあれはこうだった、とか友人とかと話すことも楽しいんですよね。特に今回のミュージカルは、家族やカップルで観に来てほしい作品です。それぞれに抱えていることがありながらも、いい家族でいようとすることが良いこと、というテーマがありますから。でも“いい”って何だろう?っていうことも考えていくお話しなので。そういうことを気付かせてくれるような引き金になってくれる作品だと思いますね」
――稽古に本番に、忙しい日々を過ごす中でどんなふうに気分転換をしていらっしゃいますか?
村井「気分転換は、今までやっていないことをやることですね。普段は会えない友人と会ったり、まったく別の作品を観に行ったり。そうすることで脳がほぐされるというか。筋肉とかも同じで、やっぱり舞台は毎日同じことを続けていくものですから、同じところが疲れてくるわけです。それでジムとかに行って別の筋肉を使ってやると、体の回転が良くなって逆に疲れが取れるんですよ。なので、なんでも違ったことをやることが気分転換になるし、刺激になりますね」
――今後、挑戦してみたい役などはありますか?
村井「自分として、やりたい役があるわけではないんですが…そういう役を振ってくださったんですね!と思えるような意外な役がやってみたいですね。絶対来ないと思うんですけど…例えばヤクザの役とか(笑)。僕にこの役をやらせてもらえるの?と思えるような役は、新しい自分の発見にもなりますし、どんどん挑戦したい。どんな役も柔軟にやれるようになりたいですね。自分としてはやってみたい役というよりも、参加したい作品というほうが強いですね。役として捉えてしまうと、独りよがりになってしまうような気がするんです。今は、栗山民也さんの演出する作品に出てみたいですね。栗山さんのあの突き詰め方は…稽古がどんな感じなのかも見てみたいですし、本当に毎回、作品が面白いので、いつかそこに飛び込んでいきたいですね」
――最後に、ミュージカル「アダムス・ファミリー」を楽しみにしていらっしゃる方にメッセージをお願いします!
村井「誰もが知っているタイトルだと思います。そして有名な楽曲が頭に流れると思いますが、その世界観を生バンドで体感していただきたいですし、ちょうどハロウィンの時期ですから、気楽なお気持ちで劇場にお越しいただけたらと思います!」
――ちょっとした仮装をして観劇するのも楽しいかもしれないですね。本日はありがとうございました
インタビュー・文/宮崎新之
スタイリスト/吉田ナオキ
【プロフィール】
村井良大
■ムライ リョウタ。1988年6月29日生まれ。東京出身。2007年にドラマ「風魔の小次郎」で俳優デビュー。2012年に舞台「弱虫ペダル」、2015年と2017年にミュージカル「RENT」でそれぞれ主演を務める。舞台、映画、テレビドラマなど様々な分野で活躍中。
【公演情報】
パルコ・プロデュース「ブロードウェイ・ミュージカル『アダムス・ファミリー』」
日程・会場:
10/28(土)~11/12(日) 神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 ホール
11/18(土)・19(日) 大阪・豊中市立文化芸術センター大ホール
11/24(金)・25(土) 富山・富山オーバード・ホール
台本:マーシャル・ブリックマン&リック・エリス
作詞・作曲:アンドリュー・リッパ
原案:チャールズ・アダムス
翻訳:目黒条、白井晃
訳詞:森雪之丞
演出:白井晃
出演:
橋本さとし 真琴つばさ・壮一帆(Wキャスト) 昆夏美 村井良大
樹里咲穂、戸井勝海、澤魁士、庄司ゆらの、梅沢昌代、今井清隆
中本雅俊、小暮キヨタカ、照井裕隆、藤井凜太郎、新井俊一、柏木奈緒美、遠藤瑠美子、田口恵那、岡本華奈、熊澤沙穂