ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』 浦井健治×城田 優インタビュー

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「舞台づくりの物語だから、舞台を作っている側としてはヒリヒリしますね」(浦井)

「僕らには絆がある。福田さんも狙ってのキャスティングではないかと」(城田)

 

「元気?」「元気だよ」と久しぶりのあいさつから仲良しトークが始まった、浦井健治と城田 優。城田が歌い出せば、浦井がすかさず「誰の真似だよ(笑)」のツッこみ。息ぴったりのカップルインタビューは“トークバラエティ番組”を見るかのネタの宝庫だ。そして、このたびふたりがW主演するのは日本初上陸のミュージカル『ブロードウェイと銃弾』。ウディ・アレン自らが1994年公開の映画をミュージカル化した傑作コメディ作品である。アーティスト気質だけど売れたい劇作家・デビッドを浦井が、ギャングのボスの右腕・チーチを城田が演じる。そして演出は福田雄一。おもしろくならないわけがない!

 

――久しぶりの共演ですね。本作の出演が決まった心境は?

浦井「ものすごく久しぶりです。『ロミオとジュリエット』で優とは親友役をやって(城田がロミオ、浦井はベンヴォーリオ)、『エリザベート』をやって」

城田「トート(エリザベート)が最初だね。トート2010年、ロミジュリは2011年。そしてこの作品の上演は来年(2018年)だから、7年ぶり!結構空いたけどぜんぜんそんな気がしないね」

浦井「共通の知り合いが多いし、ちょこちょこ会ってるし」

城田「ロミジュリ初演から考えて6年間の城田 優と、いろいろやってきている健ちゃん。どんな化学反応が起きるのか楽しみです」

浦井「しかも、コメディ。あ、男同士のキスとかないですから(笑)」

城田「しないですよ~、安心してください」

浦井「ハハハ! 優の舞台を見ていると、役者としてどんどん幅が広がっているのがわかるし、彼は舞台の演出もやっているからその経験が出てくると思う。で、僕は勝手に“タキシード仮面”同士の絆も感じています」

城田「懐かしい!『美少女戦士セーラームーン』でミュージカルの“ミ”の字から教わったよね。健ちゃんがタキシード仮面6代目で、僕が7代目。Wタキシード仮面だ(笑)」

浦井「福田組で、この座組。共演できることが本当に楽しみです」

 

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――かなり期待値が高いですが、今回ここまで楽しみになる、過去の共演時のエピソードを聞かせてください。

浦井「ロミジュリ初演時は優とイク(山崎育三郎)がロミオWキャスト。ふたりが座長として成長していくのを親友役として見ていました。チームワークが本当に最高だったんです。目と目で芝居ができるところまで持っていけた、舞台上のあの絆は大きかった。時を経てどんな風に昇華しているのかなと」

城田「あのとき健ちゃんはプリンシパル(主要キャスト)の中で唯一のシングルキャスト。抜群の安定感で公演を引っ張ってくれました。健ちゃんは年上だけど、僕は勝手に同世代のつもりでいます。彼からメッセージをもらうシーンは自然と感情が湧き上がってきましたね。そういう関係性ががっつり築けたロミジュリという作品は、僕らの中で本当に大きくて。『エリザベート』はあまり絡んでないけど……」

浦井「でも、ずっと憶えているって、この前言ってくれたよね。『エリザベート』で『闇が広がる』をふたりで歌ったとき、ある回で拍手が鳴りやまない、いわゆるショー・ストップが起きたんです。生涯忘れられない、あれほどのものは経験したことがないって」

城田「ふたりの千穐楽だよ、2010年10月28日」

浦井「すごいっ!日付まで憶えてる」

城田「ふたりの体がガチンと合わさったまま、ぜんぜん拍手が鳴りやまなくてどうしたらいいんだ?と。目と目でね。体感でとても長かったけど、後から音源を聞いても20秒くらいはありました。どんなにすごい舞台でも、すごい方と歌っても、あれだけ長い拍手をいただいたことはまだない。城田 優の拍手最長記録の相手が浦井健治という」

浦井「優は毎回録音しているんですよ。自分に厳しいんです。内心では圧し潰されそうになっても、現場ではいつも笑っている。たとえばミルクのシーン(エリザベート)で、お客様に見えないのに舞台袖でスタンバイしているキャスト一人ひとりにミルクを注ぐ真似をしたりとか。そうやって緊張をほぐそうとしている。愛されキャラなんですね。優がいると現場が華やかになる」

城田「実は僕が一番緊張してるんだけど。なんか恥ずかしいな。はい、以上です!(笑)」

 

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――いや、もう少し、今度はお互いの魅力を……?

浦井「まず、城田 優というと身長が高くて」

城田「見ればわかる、みんな知ってる!」

浦井「ロケをしていても、街にいても、優くんだ!ってすぐわかる、要はスターなんですよ。でも、実は対峙するときは繊細で、心細いよう、ヤダようって弱音を、心を開いた人には見せてくれる。ギャップ萌え、ですね」

城田「萌え!?」

浦井「彼は萌えの天才児。役者としては自分に厳しく、エンターテインメントとしてお客様をどう楽しませるか、何を要求されているかを突き詰める努力家でもある。あっけらかんと飄々としているようで、すごくシビアな目を持っているのが優です」

城田「この持ち上げが気持ち悪いんですけど(笑)。じゃ、僕の番ね。健ちゃんは、基本的にいつもハッピー。浦井健治と言えば? ♪ハハハハハァ~!と、だれに聞いても答える」

浦井「♪ハハハハハァ~!って、文字にしてくださいね(笑)」

城田「健ちゃんは芝居を繊細に作り上げていく。ふわふわしてそうに見えて、しっかり考えている。ふわふわキャラクターが彼の魅力です。年下からも慕われ、ファンにも愛される、その意味が一緒にいるとよくわかります」

 

――信頼し合うおふたりが本作ではぶつかるところから始まります。どうなりそうですか?

 

浦井「僕が演じる脚本家のデビッドに、いろいろと意見を言ってくるのが優のチーチ。なんで邪魔するんだとムッとして最初はバチバチだけど、結局は彼の才能を認め、一緒に素晴らしいエンターテインメントを立ち上げていく。絆が生まれる友情物語でもあるから、優とだったら普段の関係性も乗ってきて自然体でいける。福田さんもそこを狙ってのキャスティングじゃないかなと」

城田「映画を見ましたが、ふたりで語るバーのシーンが好きですね。平気な顔で殺人とかグロい話をしながら繊細な脚本づくりをするチーチがすごくシュールで、彼(デビッド)はビビりながらもコイツすごいなと思っていて。芝居作りにおいて惹かれ合っていくふたりの関係性がうまいこと出せたらいいなと思います。初めましての関係だったらまた違うけど、昔から知っている健ちゃんと僕だから」

浦井「周りにいるのが結構突飛な人ばかり。僕(デビッド)は振り回されるほうだからオドオドしていたらいいかな(笑)」

城田「板挟みになって翻弄されるデビッドは、物語の芯にいて、こうやってグニャグニャと(手で表現)。でも、折れないしなり方をするのが浦井健治という役者。僕らは力を加える側だから自由ですよ。周りが遊んでいる中でちゃんと芯を持ち続けて話を成立させていくのは非常に難しい。健ちゃんの背中に付いて行こうと思ってます」

浦井「振り回す側と、振り回される側、W主演とはそういう意味ですね」

 

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――福田さんの演出はおふたりとも経験者ですよね。

浦井「福田さんの現場は遊びに行くような感覚になります。とにかく笑えて、稽古時間の半分は雑談(笑)。ただ、気をつけなければいけないのが、本番10日前切ったくらいで急にぜんぶにダメ出しを始める。それまでは泳がせて……、というのが福田さんのやり方かなと」

城田「映像ではあるけど、舞台の福田さん演出は初めて。10年ほど前に一度チャンスがありましたができなかったので、今回は念願叶ってなんです。福田さんとの人間関係はもうできているから、あとは実際の稽古場で乗っかるだけ。10日前に……というのは怖いですけど。心配性なもので」

浦井「本番が開いても、お客様の反応を見ながら手を加えてくる」

城田「それ、映像でも同じ。テストでおもしろいと本番でも絶対やってとか、テストでやりすぎると鮮度が落ちるから本番まで残しておいてとか。信頼する役者を選んで任せて遊ばせる。だから、ギリギリまで泳がせて楽しんで、いいところだけつまんでいくスタンスなのかなと。僕も今回は稽古からいろいろやると思いますよ。共演の先輩方がすごいので、みなさんがどう作ってこられるのかは怖いけど……!」

 

――作品の感想はいかが?

浦井「テーマはモノづくりだから、モノを作っている側の身としては結構ヒリヒリしますね。福田さんは脚本家であり演出家であり、まさに僕が演じるデビッドの状況。福田さんの思いみたいなものがどんどん乗っかってくるんじゃないかと思っています」

城田「映画は滑稽でおもしろかった。とにかくキャラが濃い。キャラが濃いって月並みな言い方でよくあるけれど、これは本当にすごいんです。過食症でずっと食べてるとか、キーキーうるさい女とか、いつも犬を連れているとか。こんな人たちで舞台ができるのか!?(笑) 軽快で、斬新で、スピード感もあって、いまこそウケるスタイリッシュ感のある作品だと」

 

――それを福田さんが演出すると?

城田「福田さん自身がやりたいと思っていたんじゃないかな」

浦井「いまや福田さんと言えばコメディ界の代表ですからね」

城田「これを日本初演でやるなら、福田さんしかいない。ぐちゃぐちゃでわけわかんないおもしろさじゃなく、それぞれの役のキャラクターにちゃんと添ったおもしろさで」

浦井「全員が飛び道具です。(鈴木)壮麻さんなんて出てくるだけでオチですから」

 

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――そのクセのある共演者への期待感は?

城田「浦井さんは女優さんと不倫します」

浦井「そうそう!……って、やめて!芝居の中で、です。発言に気をつけてよ(笑)」

城田「話の中では真実でしょ?(前田)美波里さんとね」

浦井「美波里さんとキスシーンがあるんです。役ではなく僕個人として、美波里さんとキスするんだ!……という段階で固まっています」

城田「チョーおもしろい。楽しみだな!」

浦井「あゆっち(愛加あゆ)は『王家の紋章』で僕が演じたメンフィスに恋い焦がれる役だったけど、今回は結ばれるのよねって話をしました。相思相愛から崩れていくんだけどね。平野(綾)さんは初めましてですね」

城田「僕も平野さんは初めて。美波里さん、保坂(知寿)さん、あゆさんも女性陣はみなさん初めまして。僕(チーチ)は綾さん(オリーブ)の監視役につくんだけど、映画を見た限りでは本当にムカつくキャラで、監視役で近くにいたらフラストレーションが溜まりそう。でも、それが絶対におもしろくなりそうだから、僕、笑っちゃいけない役なので絶対に笑わないようにがんばらないと(笑)。実は、男性陣もご一緒するのは初めてです」

浦井「そうなの?絶対みんなとどこかでやっていそうなのに」

城田「ポスター撮影のときトムさんに、デカいね!って言われたよ。自分より大きい人になかなか会わないって(笑)。トムさんは僕のボス役で、とにかく命令に従わないと」

浦井「トムさんはアーティストさんのイメージで、どの作品でも存在感が大きく、福田さんが愛しているんだなって感じます。独特の言い回しとリズム感。やってきたことが普通の人とは違うぞ、人生が違うぞ感が半端ない。尊敬しています。壮麻さんとは『エリザベート』で親子の役だったのでパパって感じだから、過食症のパパを心配していこうと(笑)」

 

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――ソング&ダンスもたくさん出てくるそうですね。

浦井「優はタップダンスをやるんだよね」

城田「もうやめたい(苦笑)。今日まで何回か練習しましたが、チョー難しい! もともとダンスは得意じゃなくて、いつも居残り練習してなんとか本番に立っているんですが、そんなの非じゃないくらい本当に出来ない。みなさんにもぜひやってもらいたい! ヒップホップやジャズダンスは、カッコいいか悪いかは別として、やれば絶対できるんです。でも、タップは無理!」

浦井「そんなこと言わずにがんばって」

城田「いや、弱音を吐きますよ。休憩も取らずやっているのにできないの。できない自分にムカつく」

浦井「タップは基礎、なんだよね。基礎ができればその先もできる」

城田「踏める楽しみは、まだぜんぜんわかりません。苦戦してます。いまの時点でこんなわたしが、どんな素晴らしいタップをお見せするか乞うご期待!……と、いつもこうやって自分の首を絞めています。浦井さんにもやってもらいますよ」

浦井「ええ!?」

城田「今日、さっそく福田さんに連絡する。浦井さんもタップやったらおもしろいですよって。デビッドが脚本を書きながらいきなりタッタカタッ!と。福田さんなら喜ぶんじゃない?」

浦井「無理だから! でも、踊りのシーンはたくさんあってもちろん僕も踊ります。福田さんは踊るシーンが好きなんですよ、いきなり踊らせますから。ラインダンスも、このメンバーでやるって考えるだけですごいですよね」

 

――最後に意気込みと読者にメッセージをお願いします。

城田「健ちゃん以外は初めての共演ですが、コメディをやるのにふさわしい個性的なみなさんが揃ったと思います。そして僕は、浦井健治を信用して付いて行きます。正直、僕はミュージカルの舞台に立つことにプレッシャーや苦手意識が強いんですが、福田さんとやることで払拭され、新しい楽しみ方が自分の中に芽生えたらいいなと。相手役が信頼する浦井健治で良かった。ぜひ見に来てください!」

浦井「みんなが楽しめるカンパニーになると信じているし、福田さんも望んでいると思います。デビッドとチーチの友情もしっかり立ち上げていきたい。何より、エンターテインメントに関わる人間として、舞台に、ミュージカルに捧げる愛をみんなと分かち合い、お客様に福田ワールドを楽しんでもらいたいです。公演は来年2月。まだね、新年明けて間もないタイミングの時だから、お祭り騒ぎをしていただければ!」

 

インタビュー・文/丸古玲子

 

【プロフィール】

浦井健治

■ウライ ケンジ 1981年、東京都出身、俳優。2000年『仮面ライダークウガ』で俳優デビュー。以降、ミュージカルからストレートプレイ、映像まで数々の話題作に出演。主な出演にミュージカル『エリザベート』(2004)『アルジャーノンに花束を』(2006)『ヘンリー六世』三部作(2009)、劇団☆新感線『薔薇とサムライ』(2010年)、NODA・MAP『MIWA』(2013)、『デスノート The Musical』(2015)『王家の紋章』『あわれ彼女は娼婦』(2016)ほか多数。2017年12月に『ペール・ギュント』出演も控える。

 

城田 優

■シロタ ユウ 1985年、東京都出身、俳優。2003年に俳優デビュー。2004年にD-BOYSに加入。テレビ、映画、舞台と幅広く活躍。主な出演にドラマ『ROOKIES』(2008)、『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(2016)、ミュージカル『テニスの王子様』『エリザベート』『ロミオとジュリエット』『ファントム』、地球ゴージャスプロデュース公演 Vol.14『The Love Bugs』(2016)、ストレートプレイ『令嬢ジュリー』(2017)ほか多数。映画『亜人』(2017)、2017年12月にはミュージカルコンサート『4Stars 2017』公開も控える。

 

【公演情報】

ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』

原作・脚本:ウディ・アレン
オリジナル演出・振付:スーザン・ストローマン
演出:福田雄一
出演:
浦井健治
城田 優
平野 綾
保坂知寿
愛加あゆ
ブラザートム
鈴木壮麻
前田美波里 ほか

 

日程・会場:
2018/2/7(水)〜28(水) 日生劇場(東京都)
2018/3/5(月)〜20(火) 梅田芸術劇場メインホール(大阪府)
2018/3/24(土)〜4/1(日) 博多座(福岡県)