2018年1月、少年社中×東映 舞台プロジェクト『ピカレスク◆セブン』が上演される。
絶賛放送中の『宇宙戦隊キュウレンジャー』にてメインライターを務める毛利亘宏が主宰する劇団・少年社中の20周年記念作品の第一弾。少年社中×東映の舞台プロジェクトとしては、2016年2月に上演された『パラノイア★サーカス』に続く第二弾作品となる。
この1年間、正義の味方を描き続けてきた毛利が自身の劇団・20周年記念に選んだ題材は、なんと“ダークヒーロー”。
時は江戸時代。冥府より蘇った“トクガワイエヤス”によって征服されてしまった日ノ本を救うべく、立ち上がった7人の救世主“極悪人”の活躍!!
……のみならず、一筋縄ではいかない“極悪人”たちの思惑を描く。
混沌とする世界、“悪”対“悪”の最終決戦(ラグナロク)の果てに誰が生き残るのか?
物語の主人公は“マクベス”と“トクガワイエミツ”。
日ノ本を奪還するために召喚された極悪人たち=“ピカレスク◆セブン”の一員でもあり、過去のトラウマに縛られながらもこの世界の王の座を狙おうとする“マクベス”を演じるのは鈴木勝吾。
この時代の将軍でありながら、自らが蘇らせた祖父でもある“トクガワイエヤス”によって将軍の座と天下の泰平を奪われた男“トクガワイエミツ”を演じるのは宮崎秋人。
数々のドラマ・舞台で活躍し、ミュージカル『薄桜鬼』、舞台『東京喰種-トーキョーグール-』等では共演している盟友の2人が、この作品の中心に立つ。
そして、ミュージカル『薄桜鬼』にて脚本・演出を務め、彼らと共に歩んできた毛利。
今回、この3人によるスペシャルなクロストークが実現した。
―― 「ピカレスク」=スペイン語ピカロ(picaro)で「悪党」。“ピカレスク小説”や“ピカレスクロマン”という言葉でも有名です。なぜ今回の題材に“ピカレスク”を選んだのでしょうか?
毛利「とにかく“悪役”を描きたい、という気持ちがここ数年ありました。悪役ってセクシーだし色っぽい。純粋にカッコイイことをやりたいなというのがひとつあったんですよね。最近『キュウレンジャー』という正義の味方をずっと描いておりましたので、僕の中では、ある意味“対”にもなっているというか。「悪とは何か」ということを改めて書きたいと思ったんです。もちろん、悪いことをしたら罰せられなくてはならないという倫理観はありますけれど、その中でギリギリに追い込まれていく人間、最後のきらめきを描きたいなという想いでした。」
―― 鈴木さんと宮崎さんのお2人は、配役と内容を聞いた時にどう思われましたか?
宮崎「まず勝吾くん、ドギツイのやるなあと。これはぶっ放すだろうなと思いました。」
3人「(笑)」
毛利「この人(鈴木)がぶっ放さない時ないでしょ(笑)。」
鈴木「この間のテレスコープス(※2017年8月に上演された少年社中・東映プロデュースの舞台『モマの火星探検記』で鈴木が演じたアンドロイドの役)は大人しかったじゃないですか!」
毛利「結果として、大人しく攻めたって感じでしょ?」
鈴木「まあ、そうでしたね(笑)。僕が演じる“マクベス”は……どうなるだろうと思います。シェイクスピアの戯曲の中でのマクベスはありますけど、今回の“マクベス”は、その後のマクベスということなので。毛利さんとも少し話していたんですけど、僕はシェイクスピアの戯曲のマクベスって浄化されて死んでいるイメージがあるんです。なので、そこからどういう感情で蘇ってくるだろうということがまず気になりましたね。」
―― 蘇った“マクベス”は極悪人たち=“ピカレスク◆セブン”のひとりでもあります。
鈴木「ミュージカル『薄桜鬼』の時に風間千景を演じた時、毛利さんが「ダークヒーローにしたい」と仰っていたところがあったので、ヒントめいた物があるのかなと言う気はしています。でも「悪とは何か」の掘り下げがどこに行き着くのかにもよるので、台本をいただくのを楽しみにしているところです。」
―― 一方“イエミツ”は、元凶となる“トクガワイエヤス”、さらに“ピカレスク◆セブン”の悪人たちを蘇らせる人間。
毛利「どちらかと言うとヘタレです。」
宮崎「やらかした人っていうことですね(笑)。大好きな祖父でもあった“イエヤス”を蘇らせちゃうし、そのせいで世界が混乱したら“極悪人”たちを呼び寄せちゃうし……。その中で“イエミツ”という人間がどう変わっていくかを描きたいと毛利さんが仰ってくださったので、その変化を逃さずに演じられたらと思います。」
毛利「そんな“イエミツ”も“悪”になるというか、起こしたことにケジメを付ける、自分のケツを拭くという意味で、“マクベス”と“イエミツ”、2人の対決も物語の中で描くつもりです。」
宮崎「思うのが“悪役”ってちゃんと散っていくじゃないですか。その散り際まで描いてもらえるのが“悪役”ならではでいいなと思います。それと、僕は今まで悪い役を演じたことがないんです。なので、僕の初めては毛利さんに捧げることに……。」
3人「(笑)」
毛利「責任重大!」
―― 鈴木さんも“悪役”を演じるのは風間以来でしょうか?
鈴木「扱いとしては、そうなりますかね。僕はミュージカル『薄桜鬼』シリーズの中でやらせていただいた舞台初主演が毛利さんの作品なので、僕の初めても毛利さんですね。」
3人「(笑)」
鈴木「まあ、風間は悪役?って感じもしますけど。」
毛利「そうそう、風間は敵対していただけだからね。」
鈴木「ダークヒーローって、誰かにとっての善行を表立たずにやる人かなと思っているんです。そう思うと「悪役とは何か」は、ますます考えるところですね。」
宮崎「確かに。“悪役”って難しいな……。」
―― 今回のキャスティングに関してはどのように?
毛利「東映さんといっしょにやっている舞台では、僕がやりたい役者の方に声をかけていただいています。集まっていただいた顔触れと今やりたい作品との方向性を見て、この人にこの役が似合うだろうな、とキャラクターを当てはめていきますね。完全にキャスティング先行です。」
鈴木「急に電話かかってきました(笑)。」
毛利「(笑)。「この人のココが絶対にステキだから、こういうところを見てもらいたい!」ということを念頭に置いて配役しています。それに「僕が思っている以上にお客様も見たいハズ!」だと。特にこのお2人に関しては「他の演出家には負けない」「俺が2人の良いところを一番知っているぞ」と思っているところもあるので。」
―― 毛利さんが知っている、お2人の良いところとは?
毛利「言葉にすると難しいですが……宮崎秋人は本当に芯が強い。表に見えている明るさと芯の強さのギャップというか、一歩ギアを入れて男らしい瞬間を出す時がカッコイイところですね。」
鈴木「それ、分かります!」
毛利「鈴木勝吾はね、何が飛び出してくるのか分からない感じ(笑)。全力で球を投げてくるから面白いんですよ。だから僕としては、ストライクでもボールでも何でも、全力で投げてくれればいいよというスタンスで臨んでいます。前回の『モマ~』では、「消える魔球が完成した!」と思ったら、バックネットに入っているっていう時もあったんですけど。」
3人「(笑)」
毛利「勝吾と一緒にやる作劇はスリリングで何が生まれるのか分からない。それに作家脳というか、ものすごく詩人だと思うんです。美しい言葉で感情を流しているので、いつも見惚れてしまう。ギリギリの人間性を見たくなる、魅力的な役者です。」
―― 宮崎さんから見た鈴木さんは?
宮崎「勝吾くんをひと言で言うと、“壊れた四次元ポケット”。」
鈴木「やめとけや!」
3人「(爆笑)」
毛利「今、ツッコミ早かった~! でも分かる。何が出て来るか分からないところがね(笑)。」
宮崎「自分でも制御しきれないんだろうなって思うんですよ。とりあえず手をツッコんで色々出すんだけど、とんでもないモノを手にしていたり(笑)。あの手この手、様々な感情……「そこにそれだけ詰まっていますか!?」って驚くくらいのモノが勝吾くんからは飛び出してくるんです。本番中も昨日と違うことをやっているし、同じことをやろうと思っても出来ないところもあると思うけど(笑)、そこが尊敬出来るところであり、不器用だなと思います(笑)。センシティブだし、自分に素直な方。」
鈴木「めんどくさい先輩っていうことでしょ(笑)?」
宮崎「いやいや!ステキですよ。100%褒めていますよ!」
毛利「悪口に聞こえるかもしれないけど、コレ純粋に褒めているんだよね。」
宮崎「はい!活字にすると伝わりずらいかもしれないけど!」
鈴木「(笑)」って付けておいてください(笑)。
宮崎「でも正直に憧れはあります。真似出来ないですもん。プライベートでもお世話になっているんですけど、なんてことない話でも「そんな風に考えているのか」って驚くこともありますし、居酒屋で一緒に飲んでいても急に立ち上がって「ここの演技がさー」って言い出すこともあって(笑)。本当に熱い男で、本能の赴くままに生きている人だからステキだなって思います。」
鈴木「……ひとつも否定できない。」
宮崎「(笑)。そして何がすごいかって、それが出会ってから今まで1ミリも変わっていないところですよ!」
毛利「ブレない!」
宮崎「出会ってから6年が経とうとしていますけど、その面に関しては全く変わらなくて、むしろどんどんその翼が大きくなっている気がする。」
鈴木「松田凌からも言われたソレ。ダメだよね(苦笑)。僕から見た秋人は逆に“野心を隠せない少年”。」
宮崎「それ、ずーっと言われている(笑)!」
鈴木「可愛らしさの中に無骨な部分も持っているんだけど、その野心を全く隠せていなくて。それが、おこがましいですけど彼がステップアップしていく中で、すごく身になっていっているなと感じますね。自信というか根拠というか、あるいは表現するスキルが付いてきたのか……。とても頼もしくなったなと思いました。さらに不動感も出てきているし、20代半ばを過ぎてくると、自分のキャラというものをひとつ見つけるんだなと思います。そして、“謙虚”と“野心”が常にケンカしているコ! 両方を高次元で持ち合わせている人の気がします。」
毛利「分かる、分かる!」
宮崎「(笑)」
後半につづく
取材・文/片桐ユウ
【公演概要】
©少年社中・東映
少年社中20周年記念第一弾
少年社中×東映 舞台プロジェクト 「ピカレスク◆セブン」
日程・会場:
2018/1/6(土)~15(月) 東京・サンシャイン劇場
2018/1/20(土)・21(日) 大阪・サンケイホールブリーゼ
2018/1/27(土) 愛知・岡崎市民会館 あおいホール
脚本・演出:毛利亘宏
出演:
井俣太良 大竹えり 岩田有民 堀池直毅 加藤良子 廿浦裕介
長谷川太郎 杉山未央 山川ありそ 内山智絵 竹内尚文 川本裕之
鈴木勝吾 宮崎秋人/椎名鯛造 佃井皆美 相馬圭祐 丸山敦史
唐橋充 松本寛也 細貝圭/大高洋夫