日本発かつ日本初の言葉を使わないノンバーバルパフォーマンス『ギア-GEAR-』。ロングラン6年目に突入した京都に続き、12月22日より千葉ポートシアターでEast Versionを開幕させるのに先駆け、公開ゲネプロが行われた。京都ではわずか100席という小さな劇場でありながら、観客動員数15万人以上、公演回数2000回突破と驚異的な記録を打ち立てた本作。関東初進出となるEast Versionの模様を早速レポートする。
物語の舞台は、荒廃した未来のある工場。元々はおもちゃを作っていた場所で、人間型ロボット「ロボロイド」が今も働き続けていた。ある日、かつてこの工場で作っていた人形「ドール」がロボロイドたちの前に現れる。ロボロイドとドールは異物に対する解析機能を通じて「好奇心」と「遊び」を獲得していくが…。
キャストは日替わりで、公演の度に組み合わせも変わるのが『ギア-GEAR-』の面白さのひとつ。ゲネプロでは、ドールパートをでんぱ組.incの藤咲彩音、マイムパートをK-POPカバーダンス世界大会に出場した経験をもつTAKUYA、ブレイクダンスパートを国内外のダンス大会で優勝経験をもつHIDE、マジックパートを文化庁第26回国民文化祭で京都特別賞を受賞した橋本昌也、ジャグリングパートをジャグリング全国大会(JIF)個人部門で優勝している森田智博が演じた。日替わりながら、そのジャンルにおけるハイレベルなプロフェッショナルが揃っていることも大きなギアの魅力だ。
上演前の諸注意アナウンスから、早くもギアらしさがたっぷり。劇場に訪れた際はロボロイドたちをうっかり壊してしまわないように、よく聞いておこう。また、希望者には目を保護するためのゴーグルも配布される。なにぶん古い工場なので、不意に強風が吹いてきたり、何か紙的なものが飛んできたりすることも無きにしも非ずということなので、不安な人は恥ずかしがらずに手をあげて受け取っておこう。
工場が始業を迎え、ロボロイドたちがドアを開けてヒョコヒョコと現れる。その姿はちょっとコミカルでかわいらしく、それぞれの道具を使って仲良く働き始めるも時々ドジをしてレバーやバルブを壊してしまう。ドタバタとしているうちに、箱に入ったドールを見つけたロボロイドたち。箱から出てきたドールはロボロイドたちを振り回しながら、興味の赴くままに動き始める。
言葉の一切ない舞台ながら、動きや表情が豊かでロボロイドたちの驚き、好奇心いっぱいのドールの気持ちが手に取るように伝わってくるのはさすが。それぞれが世界レベルのパフォーマー、第一線で活躍してきたアイドルだからこそ、言葉はなくとも伝えるパワーが大きいと感じた。
そして、ドールがロボロイドの手に触れると閃光が走り、ロボロイドはまるで人間のように自由に滑らかに動けるようになる。ロボロイドたちのパフォーマンスはブレイクダンス、パントマイム、マジック、ジャグリングのどれもが見事で、瞬きを忘れるほどに惹きつけられる。そのテクニックもさることながら、プロジェクションマッピングや最大1600万色のレーザー光線など、最新技術による光と映像の演出によりさらに幻想的に仕上げられていた。途中、ドールの真っ白い衣装がカラフルに彩られる場面では、ちょっぴりキュートな洋服に変わることもあるのでぜひ注目しておこう。また、マジックやジャグリングでは客席のほうまでロボロイドやドールがやってくることも。運が良ければロボロイドたちを手助けしたり、ドールと握手したりすることもあるかもしれない。
ワチャワチャと楽しく過ごしてきたドールとロボロイドたちだが、夢中になりすぎてついには工場をメチャクチャにしてしまうような事態を引き起こしてしまう。客席にまで影響をおよぼすような状況は、予想をはるかに超えるものだった。確かに、念のためゴーグルは受け取っておいた方が良いかもしれないと感じた。そして、その後訪れる静寂。その後の展開は、思わず目頭が熱くなる人もいるだろう。ちょっぴり切ないその結末は、ぜひ劇場で楽しんでほしい。
ゲネプロ終了後、出演者による囲み取材も行われた。
各コメントは下記の通り。
ドールパート:藤咲彩音(でんぱ組.inc)
「これまでキャストのみなさんと、2カ月3カ月とずっと練習してきました。月日が経つのがあっという間で、本当にできるかどうか不安なときもありましたが、みなさんに助けていただきながらなんとかこの日を迎えることができました。特に、盆(ステージ上の大きなギア)が回る場面では苦労しました。遠心力で体がふられてしまって机から落ちそうになってしまって…トラウマになるほどだったんですが、みなさんが『周りにいるから大丈夫だよ!』と何度も練習に付き合ってくれました。明日から精一杯頑張りますのでどうぞよろしくお願い致します!」
マイムパート:TAKUYA
「僕自身、マイムが初めてだったので、周りのスタッフの方々、(キャストの)みなさんに支えていただいて本当に感謝しています。本当に素晴らしいメンバーがそろっていて…ありがたい気持ちでいっぱいです。いっぱい稽古をして、みなさんにぜひ見ていただきたい、お見せできるものを作ってきたので。お越しいただきたいと思います」
マジックパート:橋本昌也
「大筋は京都のギアと一緒なんですけども、若干変わっているところがあるので、今までのギアを観たことがある人も楽しめると思います。京都のキャストとは違う、千葉のオリジナルキャストもたくさんいて、京都にはない面白さをたくさん持っている方々なので、パフォーマンスにぜひ注目していただきたいです」
ブレイクダンス:HIDE
「ギア自体、全く喋らないという面白い舞台。それでストーリーが伝わる舞台というのは日本発で日本初なんです。京都でずっとやっていたことを、関東でもやれるというのは本当に快挙だと思っています。いろんな個性がひとつになった、まさに歯車がかみ合う瞬間をお客さんにぜひ観ていただきたいと思います。絶対に観に来てください!」
ジャグリング:森田智博
「ジャンルの違う5人がひとつの舞台をつくることってなかなかないこと。それがひとつにかみ合って、お客さんに届けられるのは本当にいいことだなと思っています。また、それぞれのパートでいろんなキャストがいて、それぞれが日替わりでいろんな形のギアが観られるんですね。1回1回、成長していける舞台だと思います。なので、1回来た人も何度も足を運んでいただければと思います」
インタビュー・文/宮崎新之
【公演概要】
©Yoshikazu Inoue
『ギア -GEAR-』East Version
会場:
Chiba Port Theaer(千葉県)
日程:
2017/12/22(金) ~ 12/30(土)
2018/1/4(木) ~ 1/29(月)
2018/2/1(木) ~ 2/26(月)
出演:East Versionオリジナルメンバー
【ドールパート】
藤咲彩音(でんぱ組.inc) 亀井理那
【マイムパート】
金子しんぺい 小山修人 TAKUYA
【ブレイクダンスパート】
HIDE ASHITAKA HIRONAGA
【マジックパート】
YOURI 川上一樹 紙磨呂
【ジャグリングパート】
森田智博 ボンバングー CONRO 小林智裕 KaNaTa
ほか