今年、2024年は本公演はこれ一本となる、劇団☆新感線の44周年興行・夏秋公演でありつつも、主演の生田斗真の生誕39年を記念するサンキュー公演でもあるという最新作『バサラオ』。舞台は“ヒノモト”と呼ばれる国、南北朝を彷彿とさせる時代の物語となる。5月中旬、都内にてその製作発表会見が行われた。その模様を、ここでご紹介する。まずは座付き作家の中島かずき、主宰で演出のいのうえひでのり、そして出演者からは生田斗真、中村倫也、西野七瀬、粟根まこと、りょう、古田新太、この登壇者8名よりご挨拶。
中島かずき<作>
「以前から斗真くんには「“顔がいいだけで世界を征服する”という話をやりたいね」という話はしていたんです。でも、ここ数年はあまり世の中的にも、悪役が活躍するピカレスクロマンをやるような気分ではなかったので。実は今回もちょっと違うストーリーで考えていたのですがどうにも筆が進まなくて、それで思い切って悪い男を斗真くんに演じてもらおうということにしたんです。すると相対する人物としての倫也くんのキャラクターも自然と見えてきて、そこからはスムーズに書けましたし、自分としても自信作となりました。ぜひとも観ていただければ、と思います」
いのうえひでのり<劇団主宰・演出>
「この企画は2020年の博多座公演が全公演中止になった『偽義経冥界歌』のリベンジからスタートしました。今回は劇場が福岡は博多座、東京は明治座、大阪はフェスティバルホールとなり、非常にエンターテイメント寄りの小屋(劇場)になるので、当初から歌や踊りが入る、楽しい公演にしようとしていたのですが。先ほど「筆が進まなかった」という中島くんの話もありましたが、僕のほうにも「今はもう少々、重い物語をやってもいい時期なのではないか」という空気が出来上がっていたんですね。でも、それでも楽しい歌や踊りのある、お祭り騒ぎ的な舞台をやりたいという想いも残り、結果的にピカレスクロマンでありながらもショーアップした作品となりました。ですからヘビーな物語の流れではありますが、観劇後はスカッとした読後感ならぬ劇後感のあるお芝居になるんじゃないかと思っています」
生田斗真<ヒュウガ:おのれの美貌を武器に天下取りという野望を持つ男>
「“生田斗真の生誕39年を記念する公演”というものを、自分が17歳の頃からずっと憧れ続けた劇団☆新感線のみなさんと共にできることを本当に嬉しく思っています。そして今回の役柄が、自分で言うのもおこがましいですけれども“美しさを武器に世界征服を狙う”というとんでもない役でして(笑)。とはいえ、劇団☆新感線の悪役は以前からいつか演じてみたいと思っていた役どころですので精一杯がんばりたいと思います、よろしくお願いします」
中村倫也<カイリ:ヒュウガの参謀としてバディを組み天下取りを目論むも、なにやら一筋縄ではいかない謎の男>
「今作に出演が決まった時は「斗真くんでやるよ、古田さんも出るよ」みたいな段階で聞いたので「じゃあ混ぜて!」ということで、自分も混ぜてもらいました(笑)。今、ふと気になったんですけど、新感線で劇団員じゃない人の生誕何周年公演って今までやったことあるんですか? ないですよねえ、なんすか、それ(笑)。たぶん『偽義経~』の時の劇団の39周年にかけているんでしょうけど、もっと劇団員の生誕を祝ったほうがいいと思いますよ! まあ、僕も一緒にできることを嬉しく思っています。個人的な話になりますけど、自分が舞台で主演じゃなくて出演するのは久しぶりなんですよ。なので、主演の横にいる人間としてどういう関わり方ができるのかなと楽しみにしていたのですが、昨日、本読みをしましたら主演よりも出番が多かったので、話が違うな、と(笑)。やることも結構多い役だったので、これは気を引き締めて挑まなきゃいけないなと思いました」
西野七瀬<アキノ:ゴノミカドの守護役>
「私は2021年の『月影花之丞大逆転』ぶりの劇団☆新感線さんへの出演です。また一緒に舞台ができると知った時点から、すごく嬉しかったです。前回はダメじゃなかったんだと思えて、初めてお声をかけていただいた時よりも嬉しさが大きく感じられて。前回の公演時はまだコロナ禍だったこともあって、キャストの人数も少なめだったのですが、その楽しかった思い出を持ちながら昨日の本読みに参加したら、めちゃくちゃ人がいっぱいいたので、ものすごく緊張して汗ダラダラでした(笑)。前回より規模感も公演数もとんでもなく大きいので自分が最後まで立っていられるかという心配もありますが、このみなさんと一緒に作っていくんだなと思い、改めて気が引き締まりました。身体に気をつけつつ、まずは稽古を明日からがんばりたいなと思います」
粟根まこと<キタタカ:鎌倉幕府執権>
「今回は幕府の執権、つまり時の政治の最高権力者の役ということになります。ですから、他の出演者たちの方々によってできる限り見事に滅ぼされていければいいな、と思っております。よろしくお願いします」
りょう<サキド:男丈夫な女大名>
「新感線のサンキュー興行であった『偽義経冥界歌』の時に、私も斗真さんとご一緒させていただいておりまして。今回はそのリベンジとして始まった作品ということで、私もその時その場にいましたので、今回呼んでいただけて本当に嬉しいなと思っています。斗真くん、どうもありがとうございます(笑)。私も、がんばります!」
古田新太<ゴノミカド:沖の島に流刑となった帝、ヒュウガ、カイリと対峙することとなる>
「うちの劇団で、りょうちゃんとなぁちゃん(西野)とは既に共演しているんですけれど、何回か出演していただいていた斗真と倫也とは劇団公演で一緒にやるのが今回初めてなんです。オイラ的には、斗真と倫也とりょうちゃんとなぁちゃんがいるのならぜひ“下ネタミュージカル”がやれたらいいなと思っていたんですけど、今回は“ピカレスクロマン”だということなので、ちょっとオイラは場違いだなとも思いながら。昨日、本読みをしたところ、どうやらインチキ臭い関西弁をしゃべるという、最も自分が苦手なお芝居をすることになりそうです。実は関西弁、あまりうまくないんですよね(笑)」
以降は質疑応答となり、既に息もピッタリ、カンパニーの仲の良さが大いに伝わるやりとりが繰り広げられた。
――生田さんと中村さんは新感線の公演では古田さんとご一緒するのが初めてとなりますが、今、どんなお気持ちかを教えてください。
生田 僕は17歳、高校2年生の時に初めて新感線に出てから、これで5度目の出演なんですけれども。古田さんとご一緒する機会がずっとなかったので、ようやく念願叶ったという気持ちです。本当に数々の俳優さんたちが「古田さんとお芝居をするのは楽しい、楽しい」とおっしゃっていたので。ようやく一緒に出られることが、とても嬉しいです。
中村 僕は2011年の『ロッキー・ホラー・ショー』という舞台で、古田さんとご一緒させていただいておりまして。全国、いろいろなところでそれこそ下ネタというかアホなミュージカルをやり、毎日飲みにも連れて行っていただきましたし、その際に芝居のことをさりげなくアドバイスしていただいたりもしていました。あれから十何年か経ちますが、『ロッキー~』の時って、何歳でしたっけ、古田さん?
古田 50歳にはなってなかったか、40代かな。
中村 自分はあの時20代前半だったので、そう考えると当時の古田さんの年齢に自分がだいぶ近づいてきているわけで。そういう意味も込めて今、一緒に舞台に出られることがとても嬉しく思います。
古田 二人とも舞台以外のお仕事では共演しているので、付き合いとしてはめちゃくちゃ長いんですよ。斗真は高校生の時からだし、倫也は『ヤンキー君とメガネちゃん』の時は、いくつだったっけ。
中村 22、23歳ですかねえ。
古田 だからかなり長い付き合いなのに、うちの劇団に出てもらっていたわりに一度も一緒にやっていなかったので。でも、本当はさっきも言いましたけどできれば下ネタで一緒にやりたかった(笑)。まあ、でもそれはまた次の機会ということで楽しみにとっておきます。
――昨日、行われたという本読みの感じではいかがでしたか。
古田 倫也も言っていましたけど、ホント、倫也のほうが忙しいんですよ。でも斗真も斗真で、セリフが本当にバカバカしくってね。「おまえ、何様のつもりだよ」っていうセリフばかりなので。そこはお客さんも、斗真のファンも、斗真のファンじゃない人も、アンチ斗真の人も(笑)、ものすごく楽しめるんじゃないかと思いますよ。
――西野さんとりょうさんは、今回お二人とも結構なアクションシーンがあると聞いています。準備のほうは、いかがですか。
西野 準備は……これから稽古をしながらかな、と思っています(笑)。本読みの時は、短いト書きは飛ばしてどんどん読んでいくスタイルだったので、「実際はここですっごい大変なアクションがあるんだろうな」と想像するしかできなくて、私としてはちょっと不安な気持ちのほうが今は大きいです。
りょう 確かに、たった一行のト書きが、数分のアクションシーンになったりしますからね。今回も、気をつけないと。
中村 みんなで、気をつけましょう(笑)。
りょう もう、新感線の作品といえば本当にアクションがかっこいいので。それで私、軽々しく「アクションをもっとやりたいです!」って言ってしまったんです。それで今回、私もアクションが多めになっておりまして(笑)。でもそうやって、チャレンジをさせてくださるところって、なかなかないですからね。やりたいと言っても「やめとけ」って言われることが多いのに、こうしてチャレンジできるという環境にいることが本当にありがたいなと思っております。できるだけのことを、やります!
――何か準備はされてらっしゃるんですか。
りょう トレーニングとしては以前からずっと続けているベースのものがあるのですが、今回はアクションのことを考えて、さらに下半身を強化したトレーニングをやろうと思っています。身体を動かすことはもともと好きなので、思いつくことはいろいろとやっていくつもりです。
――粟根さんは、新感線の公演で生田さんと共演する機会が多いようですが。
粟根 生田斗真くんが出られている全部の公演でご一緒しています。古田くんがいない公演ばかりでしたのでその分、劇団員の中でも古株が生田斗真くんのお守り役としてついている感じだったので。でも今回は敵対する役でお守りはできませんから、39歳のままがんばっていただければと思っています。
――20年以上のお付き合いになるわけで、成長ぶりなどはいかがですか。
粟根 そうですよね、22、23年の月日を共にしてきたことになりますから。そもそも、斗真くんに初めて出ていただいた『スサノオ』という舞台ではカゼヨミという役をやっていただいたんですけど、その作品の初演では私がカゼヨミ役だったんです。同じ役をやるという因縁は感じていましたが、まさかここまでしっかり成長するとは! 今回は、39歳になってもなお美しさを保ち、お客さまだけでなく共演者をも魅了していただければ、と思っています。
――中島さんにも、今回特に意識していることなどを伺っておきたいです。
中島 斗真くん演じるヒュウガという主人公は基本的に悪役ですから、あまり出来事などを説明しないキャラクターで。それで先ほど倫也くんも言っていましたが、説明する役まわりが全部倫也くんになり、出番も多くなってしまってごめんなさいね、という感じです(笑)。そして登場人物がみんなそれぞれ他人の話を聞かないような人ばかりなので、そういう意味ではいのうえ歌舞伎ではあっても明るいものにというか、それほど陰湿な話にはなっていないというか。なので、今の時点では「悪い人たちが元気でがんばっているな!」みたいな話になるのかな、と思っています。
――いのうえさんが今、考えている演出プランとしてはどういうイメージでしょうか。
いのうえ 先ほども言いましたが、お祭り騒ぎというイメージです。前回公演の『天號星』の時に客席通路をバンバン使ってやったのがすごく楽しかったので、今回の芝居でも客席をバンバン使おうかなと思っているところです。
古田 え~。
中島 場内、広いよ?
古田 いのうえさん、客席を使うのが好きなのはいいんだけど、自分は走ってないから言えるんだよ。やめてほしいなあ。
いのうえ いやいや、意外に狭いと思うよ、大丈夫、イケる!(笑)
――そして、今回は生田さん演じるヒュウガが美貌を武器に天下取りを狙うお話ですが、それにちなんでみなさんそれぞれの俳優としての武器は何だとご自分では思われますか。
りょう 武器ですか、難しいですねえ。私は、丸腰ですね。いつも、完全なる丸腰です。
西野 自分で思ったことはないですが、人から言っていただいたものですと「自分、つまり西野の部分をだいぶ消して役を演じられているね」と言われた時は、すごく嬉しかったです。
粟根 私は目つきの悪さです。昔から言われ続けていることですが、もはや武器になってきました。
古田 “便利”だということかな。いろんな演出家さんや監督さんに「古田さんは便利だな」と言われてきましたから。NGがなく、なんでもすべてイエスなので。「この役はそういう気持ちにならないと思う」とか、そういうことを絶対に言わない俳優なんです。だいたい、そう言うことを言う俳優のことが大嫌いです(笑)。
生田 僕も、武器というものはないんですけど、強いて言うなら……美しさ、色気、でしょうか。
中村 本当~にそうだもんね!(笑)
生田 違う違う!
中村 すごいよね!!
生田 やめて!!(笑) とにかくがんばります!!
中村 僕も、いろいろ考えたんですけど、ただ早く帰るにこしたことがないと思っているので……(と、ここですかさず古田、生田がOKサイン)。マル、いただきました!(笑) その分、真面目にセリフを覚え、真面目に準備してやっておくところは長所かもしれないですね。
――では最後にそれぞれから一言ずつ、公演への意気込みをお願いいたします。
中島 昨日、本読みをやったのですが非常に手応えを感じました。本番も大いに期待できると思っています。とても派手な舞台になりますので、ぜひみなさん劇場のほうにお越しください。
いのうえ 劇団としてもなかなか、この規模でこれだけ歌とか踊りも入ってチャンバラも見せ場もいっぱいあるいのうえ歌舞伎ができる機会というのは、今後何回あるだろうと考えると非常に貴重な一回になると思います。どうか見逃さずに楽しんでいただければ、と思います。
中村 あまりこういうこと言わないほうなんですけど、今回はちょっと面白いものになると思っております。だって単純に、圧倒的に美しいもの、見たくないですか? これまでの人生でみなさんが見た、圧倒的に美しいもの、ポンって浮かびますか? ……(生田を指差し)それ、になります!(笑)
西野 観ていただいた方にはもちろん「面白かった!」と思っていただきたいですし、やっているこちら側もみんなで楽しんでできるようにがんばります。夏で暑いと思うので劇場の中で涼みながら(笑)、でもステージからはきっとアツイ熱気が伝わると思いますので、ぜひそれも楽しんでいただきたいです。
粟根 昨日の本読みで改めて思ったんですが、この作品って本当に自分勝手な人しか出て来ないんですよ。相当それぞれ好き勝手やりますので、その分だけ相応に派手な舞台になると思います。その派手な舞台を楽しみに、劇場にお越しください。
りょう そう、本当に自由奔放な人たちばかりなんです。でもそこがまさに人間っぽくイキイキと、パワフルに描かれていると思いますので、ご期待いただきたいと思っております。みなさん、ぜひ観にいらしてください。
古田 ここに登壇している人間だけじゃなく、他のメンツもそうなんですけれども、とにかく非常に賑やかな作品になると思います。昨日の本読みでも、すごく楽しい現場になりそうだと思いました。ここはなんとかして、二つくらいは下ネタを入れていきたいと思っています(笑)。
生田 本日はありがとうございました。福岡・博多座から始まりまして、東京・明治座、大阪・フェスティバルホールと、大変に長い公演になります。動員数も本当に多くなる予定で、15万人、東京ドームでやるとしたら3回分に匹敵するという、とんでもない規模の舞台となります。みんなで力を合わせ、乗り切りたいと思っておりますので応援よろしくお願いします!
演じ手も作り手も全力でこのお祭り騒ぎを楽しもうとする姿勢が、充分に伝わってくる会見となっていた。歌も踊りも殺陣も全部盛り込んだ、新感線史上最もド派手な作品になりそう、どうぞお見逃しないように。
取材・文/田中里津子