写真左から)上川周作、井之脇海、窪塚愛流、篠原悠伸
松尾スズキが“翻訳”に初挑戦したことでも話題となっていた、フランスの童話作家デビッド・カリ著、セルジュ・ブロック絵の『ボクの穴、彼の穴。』(千倉書房)。この絵本を原作に、ノゾエ征爾が翻案、脚本、演出を手がけた同名の二人芝居がガラッと装いを変えて上演されることになった。これまで “PARCOプロデュース”として2016年に初演、2020年に再演されているが、この夏は“モチロンプロデュース”として、<ボクチーム>は井之脇海と上川周作、<彼チーム>は窪塚愛流と篠原悠伸というペアで交互に“Wキャスト”で上演する企画となる。
まだ本格的な稽古が始まる前の5月末、この4名が一堂に会する取材会が行われ、この作品に感じている魅力や演じる役柄に関する現時点での解釈などが語られた。
――まずは、この『ボクの穴、彼の穴。W』という二人芝居に出演するにあたり、どういう点に魅力を感じましたか?
上川 僕は大人計画所属なんですが、実は松尾さんの作品に出演したことがまだなかったんです。今回の『ボクの穴、彼の穴。』は松尾さんが翻訳をされているので、ここで関わりを持てたということが嬉しいなという思いが強くありました。それに二人芝居をやらせてもらえる機会もなかなかないことですから、役者としてはお話をいただけること自体が本当にありがたいことだと思うんです。チャンスがあるなら手を挙げてでもやりたいぐらいのことですから、今回は前のめり状態で、食い気味ですぐにお返事しました。
井之脇 僕は一昨年に三人芝居(『エレファント・ソング』)をやり、去年は出演者が六人の芝居(『カモメよ、そこから銀座は見えるか?』)をやったんですが、少人数の芝居ってすごく役者の技量が試されますし、またぜひ少人数の作品に挑んでみたいと思っていたところに、この二人芝居のお話が来まして。
――さらに一人減って記録更新ですね(笑)
井之脇 そのうち誰もいなくなったりして(笑)。でも、お話をいただいたのもちょうどそんなことを思っていた時期でもあったので、ご縁を感じてぜひやりたいとお返事しました。だけど、ただ何でもいいから二人芝居をやりたかったわけではなくて。戯曲を読んだ時、戦争の話ではあるけれど、現代を生きる人たちにも響くことがたくさんある本だと思ったのと、今回はWキャストですけど役者のやりようによって、いい意味で全然違うものになる可能性がある本だなと思ったんです。ある意味ライバルでもありますが、いろいろな形を見せられる作品になるだろうと思って、これはぜひ挑戦してみたいと思いました。
窪塚 僕は、そんなお二人にはなんだか申し訳ない気持ちになるんですが、実はすぐお返事ができなくて三回悩んだんです。僕にとっては初めての舞台になるのに、いきなり二人芝居はちょっとヤバい、自分には担えないんじゃないかと思ってしまって。
――三回、悩んだんですか?
窪塚 まず一回目は、ごめんなさいとお断りしようとしたら「もう一度考えてほしい」と言われまして、マネージャーさんと話してみたんですが、でもやっぱり怖くてやる前からビビッてしまっていて。もう一度ごめんなさいをしたら、最後にはノゾエさんと直接お会いすることになり、喫茶店でお茶をしながらお話をさせていただきました。そこで、舞台稽古というものについてや自分の心情まで、僕と同じ目線で寄り添って一緒に考えてくださったので、それで決意することができたんです。でも僕も断れずに迷っていた一番の理由は、やはりこの戯曲がとても面白かったから。自分も、戦争についてこういう視点から考えてみたことはなかったですし、ト書きやセリフにも「あのコンビニってまだあるのかな」とか、現代的な要素が詰め込まれていてグッと役にのめり込むことができたのも大きかったです。
篠原 僕も、お話をいただいてから台本を読んだのですが、もうめちゃくちゃ面白かったです。僕の場合は、断る選択肢はまったく考えませんでしたけど(笑)、逆にこんなに面白い作品に僕が参加させていただいていいんでしょうか?という気持ちでしたね。本の面白さという意味では、「声に出して読みたい日本語」みたいな感じがありました。
――声に出したくなるセリフだった?
篠原 そういう面白さもありましたし、あとダブルキャストということに関しては……。あれ?(窪塚に)僕さっき、何て言ってましたっけ?
窪塚 同じ料理なのに……?
篠原 あ、そうだ、ありがとう(笑)。ダブルキャストって、同じ料理なのに違う味わいのあるものが出来上がるみたいな感じで面白そうだなと思ったんです。それで、僕は「ぜひやりたいです!」と言ってオファーをお受けしました。
――翻案、脚本、演出を手がけるノゾエさんについて、作品から感じる魅力やご本人の印象、演出を受けるにあたって期待していることなどを、それぞれから伺えればと思いますが
上川 ノゾエさんの作品って、拝見しているといつも最初と終わりで視覚的に見えているものが全然違う気がするんです。そこにすごく僕は遊び心を感じていて。今回も、この二人芝居がどういう美術で、どんな舞台になるのか楽しみですし、そこで二人だけで芝居をするとなると、その美術だけに目がいかないようにしたいですし、やっぱりちゃんと意味のあるものをお客さんに伝えていきたいと思っています。僕自身もぜひ早く観てみたい……といっても自分がやっている舞台は観られませんけど、でもついそんな気持ちにもなっています。
井之脇 最初と最後で見え方が変わるところが好きだというのは僕も同じなんですが、基本的にノゾエさんの作品って、舞台美術が激しく入れ替わるわけではなくワンシチュエーションなのに、役者が何か負荷を与えることで見え方が変わっていくところがすごく面白いんですよね。今回もどうなるかはわからないですけど、たぶん穴が二つあることは絶対最初から最後まで変わらないんですけど、その穴の見え方がどう変わっていくかというのが演じる側も楽しみですし、お客さんにも楽しんでもらえたらなと思っています。あと篠原さんがさっき言ってた「声に出して読みたくなる」というのもすごく共感します。句読点の位置とか改行の仕方とか韻を踏んでいたりするところとか、あれがノゾエさんのリズムなのか、考え抜いて書かれていることなのか。ノゾエさんの今までの作品も、とても言葉のチョイスや間が面白かったので、その演出を自分も受けられるというのは今からすごく楽しみです。
窪塚 自分だけが感じていることなのかもしれませんが、ノゾエさんの作品って他の舞台作品と決定的な違いが自分の中にあって。劇場に入ると、自分も同じ世界に入っているような感じがするんです。もちろん舞台と客席の区切りはあるんですけど空間としては区切られていないように思えて、一緒にその物語の世界観にのめり込めるところがすごく好きです。ですから今回も、自分たちのお芝居でお客さんをより深く舞台の世界に引きずり込むイメージでいけたら、と思っています。
篠原 僕は、ノゾエさんとはまだ直接お会いしていないんですが、作品はもちろん観たことがあって。その印象は「ちょっと何を考えているかわからない感じ」でした。あ、これはもちろんいい意味で、です(笑)。思っていたものとは違うものが出てくる気がするんですよね。今回も、どんなアイデアがノゾエさんから出てくるのか、とても気になります。早く稽古がしたいです。
――それぞれの組み合わせで、お互いの印象もお聞きしてみたいのですが。これは、篠原さんからお伺いできますか?
篠原 アイルとは今日で会うのがまだ二回目なんです。最初に会ったのはこのチラシのビジュアル撮影の時で、でもちょっと挨拶したくらいだったんですよね。会う前の印象としては、まだ20歳だと聞いていたこともあり、ギンギラギンに尖っているんだろうなって勝手に想像していました(笑)。だけどご挨拶した時はとても物腰柔らかだったので「ごめんなさい!」と思いました。今日も、こうして話していると本当に優しくて。
窪塚 こちらこそ、そう思っています(笑)。
篠原 僕とは11歳離れているんですよね。さっき「なんて呼んだらいい?」と聞いたら「アイルで」って言ってくれたので「じゃあ、僕もユウシンって呼んでくれ」と言ったら「いや、年齢が違うのでそれはダメです。ユウシン君と呼ばせていただきます」と言われました(笑)。優しいな、とそこでも思ったんですけど、でもやっぱり改めて、本当にユウシンって呼び捨てでいいからね?
窪塚 わかりました(笑)。じゃ、ユウシンの印象は、それこそ初めてお会いしたのがこの作品のスチール撮影で。僕が先にスタジオで撮影していて、時間差でその後からいらっしゃったんです。撮影では、戦争中の話ですから怒りや悲しみや、さまざまな感情を出して撮っていっていたんですが、自分は先に撮影が終わったのでユウシンの様子を見ることができて。まだお互いのことを何も話していない状態ではあったのですが、ユウシンから今回どういう芝居が出てくるんだろうなとものすごく楽しみになってきたんです。びっくりするものがポンポン出てきそうで。お互いにいろいろ出し合って自分たちならではの舞台にできたらいいなって思っています。
篠原 ……なんだか、プレッシャーです(笑)。
井之脇 僕は、上川さんというと『季節のない街』に出られていた時に、あの、ちょっと声が高いところがすごくいいなと思ってとても印象に残っていて。今回ご一緒できることになり、やっぱり僕もそれこそ舞台ではどんな芝居をされるんだろうと興味が湧いて、直接会うまではとても緊張していたんです。それでビジュアル撮影の時に初めて会って話してみたら、僕は山登りが好きなんですけど、なんと上川さんも山が好きということがわかって。
上川 でも、その時点ではまだ登ったことはなかったんです。ちょうど山に興味が湧き始めて登ってみたいなと思っていた時にそんな話になったので、師匠だ!って思いました(笑)。だって百名山のうち、もう22も登っているんでしょう?
井之脇 いや、まだ22です(笑)。でも山好きに悪い人はいないんで! もうその時点で絶対いい人だ!と思って連絡先を交換しておいたら、そのあと本当に「登りに行きます」って連絡をくれて。そうやって山の話をしても本当に行く人って、僕の経験上は少ないんですよ。だからすごく嬉しくて、大好きになっちゃいました!
上川 僕も嬉しいです。海ちゃんはスチール撮影でお会いした時、本当に仁王立ちが似合うなって思っていたので(笑)。
井之脇 そんなこと、初めて言われた(笑)。
上川 正面から、物怖じしない感じがするというか。僕が勝手に海ちゃんには優しげな印象を抱いていたのですが、立ち姿を見た時になんだか大木のような力強いイメージだったので、それで一発で僕は惚れました(笑)。甘え過ぎるのも良くないですけど、とても頼りになりそうですし。でもお話ししてみると、本当に優しくてしっかりと受け止めて話をうまく聞き出してくれる。だからついつい喋り過ぎないように気をつけなければと思っているくらいです。稽古でもこの関係性は大切にしつつ、コミュニケーションを上手に取りながら進めていきたいですね。
――いつか二人で山登りされる機会があるといいですね
上川 行きます!
窪塚 じゃ、その時は僕らも呼んでください。僕、山に登ったことありますし。
井之脇 じゃあ、ぜひ一緒に行きましょう!
篠原 はい!ついて行きます!
井之脇 いやあ、今回は山好きのいい人ばっかりで嬉しいです(笑)。
――ご自分が演じる役のイメージについてや、その役づくりに関しては現段階でどう考えていますか?
上川 僕はこの台本、読み始めると止まらなくなっちゃうんです。だからそのせいで視野が狭くならないように、のめり込み過ぎないように、ちょっとブレーキをかけながらやっていかないとと思っていて。なんだか、自分のことが書かれているような感覚になってしまうくらい身近な話にも思えるし、戦地で過ごしているはずなのに気づくと戦地のことを意識しない瞬間があったりもしますし。だけど今の僕自身の感覚、日常的に生活していて「ご飯がおいしい」とか「こういうことやったらダメだよな」とか、ふだんの生活の積み重ねみたいなものって、戦争に行くとなるとすべて奪われてしまうわけなので。そういう日常から何からすべてをなくして身一つで鉄砲だけ持って、みたいな感じになるのだろうから、考え方もどんどん極端になっていきそうですよね。でもそこでの葛藤を作るためには気持ちのグラデーションを、今の僕の自分の気持ちも使いながらできたらいいなと思っているので、そこはあまり極端になりすぎないように考えたいなとも思っています。
井之脇 まさに僕も、その戦場での孤独というものをどこまで探求できるかが大切になりそうだと思っています。もしかしたら孤独というものは不安だけじゃないのかもしれないですよね、どこか縛られた生活から解放された喜びというものも最初は感じたかもしれないですし。一人でいることで、たぶんいろいろな感情が生まれると思うんです。それってこの現代ではなかなか味わえないものでもあって。台本を何度も読み込んだり、参考になりそうな映画を研究したりということは当然やるとして、それ以外にはそれこそ山に行って実際に一人で寝泊まりするのもアリかもしれません。
窪塚 僕は正直、まだそこまで台本を読み込めていないんですが、その中でもこの作品はそれほど時代を遡らないというか、今の時代にも充分置き換えられる物語だと感じています。だから昔の時代の当たり前の概念を、とかそういうことではなく、今の時代を生きる僕たちが思う日常生活の感覚を大切にして臨むほうが、より若い世代の方々にも響くかもしれないと思いました。自分の思う当たり前や、日常や価値観を振り返ったり…それがどう生きるかはわからないですが、大切にしながら作品に向き合いたいと思います。
篠原 僕もまだそれほど読み込んではいないんですけど、ただこの台本を読んでいて思うのは、思っていることを全部言葉にしてる人たちだなということで。僕自身はふだん思ったことはここまで口に出さないから、これはとてつもないカロリーを消費することになりそうです(笑)。だからこそ、まずはちゃんと体力をつけたいので、稽古前に山登りにもぜひ行きたいですし、あとはご飯をいっぱい食べて体力をつけておきます。
――みなさん映像のお仕事もされているので、映像と演劇との違い、そして演劇ならでは感じる魅力についてもお聞かせいただければと思うのですが
上川 映像では何回も同じことを本番で繰り返して、それを繋げていって作られるものですけど、舞台は何回も同じ稽古はしますけど本番としては一回できる、そこが大きな違いのように思います。それに舞台は始まったらもう止めることができませんから、そこにスリルがありますし。自分としては、舞台に関してはそういう部分が好きですね。
井之脇 映像と舞台で一番違うのは、同じ台本なのに違う芝居ができるところでしょうか。映像はワンシーンを基本1日で撮るんでその時のみんなのベストがそこになりますけど、舞台は何十回と本番を繰り返す中で同じセリフを言っても昨日と今日で感覚が違うんですよね。それはもう天気とかでも左右されますし。
――その日のお客さんの醸し出す空気でも
井之脇 変わってきます。だけどそうやって同じ本のはずなのに毎日違うというのが、舞台の面白いところだなと思っています。
――窪塚さんは初舞台ですけれど、演劇にはどんなイメージがありますか?
窪塚 裸で出ていくというか……。あ、本当に裸になるという意味ではないです!(笑)。隅々まで出せる、というか。映像だと、監督さんが作る枠の中の世界があって、その枠から出ている部分はあまり重要視していない方も多かったりするんですが、自分がモットーとしているのが空間全体を使ってお芝居することなんです。その作品の枠の外に広がる世界全体を使って芝居をする、というか。
――フィルムに映るのは枠内なんだけど、もっと広いところも意識している
窪塚 舞台は、まさにその全体の空間を使って芝居をするわけじゃないですか。舞台のお稽古はもう少し先ですが、そこからきっとまた新たな発見ができそうな気がしますし、やっぱり舞台はお客さんに直接届けることが一番の醍醐味だと思いますから。
――まさに、そこも大きく違う点ですね
窪塚 今までの自分はお客さん側として、その芝居の空間にいることを楽しんできましたが、今回はみなさんが僕らと同じ世界で生きているように感じられる、そういう芝居ができたらいいなと思っています。
篠原 僕もやっぱり、違いはあると思っていて。映像だと、観てくださっているお客さんの顔や表情は全然わからないじゃないですか。だから、監督とかカメラマンさんとか一緒に出ている方の表情を見て、そのリアクションを糧にして演じているみたいなところがあるんですけど、舞台だとライブですから面白ければ。
――笑い声も、直接聞こえますし
篠原 つまんないなと思われていたら、重い空気を感じたりもしますし。そうやって、お客さんの反応を感じながら、会話を交わしながらできるところも舞台の面白さだと思ってやっています。
――この作品、台本によると登場人物は<ボクA>と<ボクB>で、名前はありません。この二人の存在やキャラクターや関係性については、みなさんはどのように感じていますか?
上川 キャラクターについて、ですか。うーん……。街を歩いていている人が、そのままAとBになっていてもおかしくないくらい、誰にでも起こり得ることだというのはすごく感じていて。だからバックボーンは意外と自分自身と照らし合わせてキャラクターを作っていくのかもしれないなとは思っています。あと、Aにはいじめられていた過去があり、Bは戦時中に大切な仲間を失っていて。置かれている状況は違いますが、AがBになることも、BがAになることも、可能性としては全然ありえることで、だけど生き残るためにはどうしてもずっと平行線でわかり合えない関係でもあって……。うーん、答えになっていないですね、難しいな……。
井之脇 僕が思うのは、でもこれが正解ではなくていろんな意見があっていいんですけど、まず固有名詞を使わないというのは、誰かであり、誰でもないということだと思うんです。特定の誰かを意図して演じてほしいのであれば名前を付けることもできるけど、誰にでも起こり得ることで見ている人が当事者になるかもしれないし、僕らが当事者なのかもしれないし。そして、それが二人いるというのは、おそらくそこには大差はないということ。だからつまり二人は鏡であるし、二人で一人の人間のいろいろな面を表現しているのかもしれない。それに「隣にいる人はモンスターだ、敵だ」って言っているけれど、自分のことをモンスターだと言っているようにも思えてくるんです。そして、何にでも慣れてしまう怖さ、みたいなものも体現できたらなと思います。とはいえ僕らがそれを演じるわけで、そのためのバックボーンも少しは書かれている。その散りばめられたヒントを集めて、たくさん想像して組み立てていくしかないですね。二人芝居だと、相手がいることで自分の役が見えてくるようになりそうな気がするので、そこも魅力なのかもしれないなと思いました。
窪塚 確かにAもBもあまり変わらないなと思うんです。自分を見ているようでもあって…思っている気持ちも置かれている立場も一緒なので。二人で会話しているように聞こえるかもしれないけれど、それこそ本当に自分自身と対話している感覚にもなるんです。なので、あまりAとかBとか気にしていないというか…もちろん稽古が始まったら、またいろいろと解釈が変わってくると思いますが。
篠原 僕も一緒で、台本を読んだ時にAとBの間にそれぞれの違いはあまり感じなかったです。ずっと孤独だった人と、後から孤独を知った人、という違いはあるかもしれませんけどね。でも基本的には僕は一緒だなって感じていました。自分が演じる役がどっちか決まった時も<ボクB>ですと言われて「Bなのか~」とも思わないし「ヤッタ、Bか!」ともならないし。どちらも同じような存在だと、自分では思っていたんだろうなと思います。
上川 役としての違いはないとしても、演じる人が今回はダブルキャストですから、そこには違うものが出て来そうな気がします。演じる人がいればいるほど、違う面が見えるのがこの<ボクA>と<ボクB>であって。僕としては、今回来てくださったお客さんに、より面白い部分を届けるためにはどうしたらいいか、これからの稽古でみんなと一緒に頑張って見つけていきたいと思っています。
取材・文/田中里津子
写真/ローチケ演劇部
ヘアメイク/大和田一美(APREA)
スタイリング(井之脇海)/坂上真一(白山事務所)
スタイリング(窪塚愛流)/上野健太郎
スタイリング(上川周作、篠原悠伸)/チヨ