元禄港歌-千年の恋の森- 高橋一生 インタビュー

初演から36年、伝説の舞台が豪華キャストでよみがえる

 

作・秋元松代、演出・蜷川幸雄のタッグで1980年に生まれた「元禄港歌—千年の恋の森—」。再演を重ねてきた今作が初演から36年を数える来年1月に再演される。元禄の世を舞台に、結ばれない男女や秘密を背負った親子など、いくつもの運命が絡み合ってゆく。今作で大店筑前屋の放蕩息子・万次郎を演じるのは、ドラマ「民王」での好演が記憶に新しい高橋一生だ。主人公であり、三味線を弾いて各地を転々とする瞽女(ごぜ)の“母親”として女たちを見守る糸栄には、市川猿之助が女方として扮する。高橋はもともと猿之助と親交が深く、「亀さん(猿之助の前の名・亀治郎から)」「いっちゃん」と呼び合う仲。

高橋「大河ドラマ『風林火山』でご一緒して以来、親しくしていただいています。先日もこの作品について『よろしくお願いします』とメールしたら、なぜか『いっちゃん、あごのラインきれいだね』って返事が帰ってきたんです。『元禄港歌』のチラシで横を向いていたから、それを見たのかもしれません。『亀さんこそめちゃめちゃ痩せましたよね? そんなことより稽古が始まったらご飯食べに行きましょう』って送ったら、返信が来ませんでした(笑)」

 

高橋一生は2008年にも蜷川作品に出演している。シェイクスピアの「から騒ぎ」。この作品はオールメール・シリーズと呼ばれるうちの一本で、登場人物をすべて男性が演じる。高橋はここで、知事の姪ながら男性と丁々発止のやり取りをするベアトリスという女性を演じた。このとき、高橋は猿之助に相談をしていたのだという。

高橋「初めての女性役だったので、『どうしたら女性に見えますか?』って相談したんです。そしたら『男性の肉体を持っているから、女性よりも女性らしく見せることが必要になってくる。そこはたぶん、いっちゃんがいままでやってきた感情に重きを置いた芝居とは別の方法を使ったほうがいいんじゃないかな』ということを、今言ったよりもずっとラフに、軽い感じで伝えてくださったんです」

そのアドバイスは、高橋にとって大きな助けになったという。

高橋「亀さんには頭が上がらないです。今回、女形を演じる亀さんを間近で見ながらお芝居でご一緒できるのは、本当にうれしいことです」

 

高橋は最近、“芝居の基本”に立ち返ることをしているのだという。

高橋「相手の呼吸を感じるとか、セリフで会話をするということ。そういうお芝居の根本原則みたいなものをもう一度見直してみたいと思っているんです。頭では大切なことだと分かっていても、本当に体感できていなかったかもしれない。相手の言葉を、咀嚼(そしゃく)しないで飲んでいたような気がする。今作は昔の戯曲で、言葉がしっかりしているので、その『噛み噛みごっくん』がどれだけちゃんとできるかを大きな課題に掲げて、みなさんの胸を借りて万次郎を演じたいと思います」

 

インタビュー・文/釣木文恵
Photo/篠塚ようこ
構成/月刊ローソンチケット編集部 11月15日号より転載

 

【プロフィール】

高橋一生
■タカハシ イッセイ ’80年、東京都出身。15歳から本格的に俳優の道に。以来映画・ドラマ・舞台と幅広く活躍。「軍師官兵衛」(NHK)、「Dr.倫太郎」(日本テレビ)、「民王」(テレビ朝日)など多数の映像作品に出演している。