末満健一による「TRUMPシリーズ」最新作
『グランギニョル』に繋がるミステリー
劇作家・末満健一がライフワークに掲げ、2009年から展開する「TRUMPシリーズ」。15周年記念作品として上演される最新作『マリオネットホテル』は、2017年に上演した人気作『グランギニョル』の前日譚となる物語で、すべてがイニシアチブの糸で支配された奇妙奇天烈なホテルで巻き起こる“クローズド・サークル・ミステリー”だ。
『グランギニョル』でもダリ・デリコを演じた染谷俊之が再び同役を演じ、数々のTRUMPシリーズに出演してきた愛加あゆと共演。さらに、瀬戸かずや、梅津瑞樹など多彩な出演者が名前を連ねるほか、末満自身が役者として久々にステージに上がる。
染谷 この作品が発表されたときに『ダリちゃん』や『マリオネットホテル』という言葉がトレンド入りしていたんですよ。それだけこのシリーズを好きな方が新作を喜んでくださっているのかなと思うと、こうして再び携われることが嬉しいです。
愛加 『グランギニョル』が終わった頃から末満さんはこの前日譚について考えていらしたようなので、それが何年か越しに実現できることが嬉しいですし、時を超えて再びこの世界に入れることにすごく不思議な思いがあります。
『グランギニョル』では濃密な稽古をともにした二人は、コンビネーションもばっちり。
愛加 私は殺陣が初めてだったので、全然できなくて。家に帰っても自宅マンションのエレベーター前でひとりで日傘を使って練習していました(笑)。染ちゃん(染谷)が私の動きまで全部覚えて動画に収めてくれたので、それを観ながら必死に練習をしたのを覚えています。本当にありがたく、頼れる存在でした。
染谷 『グランギニョル』では、実は場当たりが最後までできないままゲネプロを終えて、ぶっつけで初日を迎えたんですよ。ラストの20分くらいは初めてが初日という状況でした。なので、かなりドキドキしたという思い出があります(笑)。でも、そうした大変なこともともに乗り越えてきたからこそ絆が深い。愛加さんはストイックで美しく、歌もお上手で、凛とされていて素敵な方。今回の稽古も楽しみです。
今作でも芝居でガッツリ絡む二人。それぞれの役柄についてはこう答える。
染谷 ダリは貴族ですが、『グランギニョル』では貴族っぽくない振る舞いをしようと思って演じていました。破天荒な部分がありながらも、どこかににじみ出る“貴族感”が大事だと感じていて。ただ、その“貴族感”は周りの人たちが作ってくれるものだとも思います。今回は、そうした“貴族感”ももちろんですが、ミステリーとして台本の流れを意識したいと考えています。
愛加 ネタバレになってしまうので、詳細はお伝えできませんが、いい意味で裏切れたらと思います。新たな気持ちで挑みたいと思っています。
「TRUMPシリーズ」は、シリーズを通して描かれてきた確立した世界観が魅力のひとつだが、今作ではそれに加え、ミステリーや会話劇も楽しめる構成となっている。
愛加 これまでは私は、「TRUMPシリーズ」の中でもミュージカル要素の強い作品に出演することが多かったので、どうしても譜面に追われていました。ですが、今回は会話が飛び交う台本に向き合っています。これまでとは違う、また別のアプローチを末満さんがされているのを感じています。でも、最終的には私も大好きな『グランギニョル』に繋がっていきます。とても印象的な終わり方だなと思います。
染谷 ミステリー的な要素もある作品なので、台本を読み始めると展開が気になってサクサク読めました。意外なイニシアチブの使い方が出てくるのも面白いと思います。まさに『マリオネットホテル』という題名がぴったりです。『グランギニョル』をご覧になっている方はもちろん、まだ観たことがないという方も楽しんでいただける作品になっていると思います。
愛加 私が「TRUMPシリーズ」に出会った、原点でもある『グランギニョル』は私にとってもとても大事な作品です。その前日譚である本作にまたこうして戻ってこられたことが本当に嬉しいです。熱狂的なファンの方もたくさんいらっしゃる作品ですが、この作品がきっかけでまた新たな出会いもあるのではないかと思っています。
インタビュー&文/嶋田真己
撮影/中田智章
※構成/月刊ローチケ編集部 7月15日号より転載
※写真は誌面と異なります
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
染谷俊之
■ソメヤ トシユキ
舞台、ドラマ、映画と幅広く出演。近年では外国映画やゲームなど声の出演にも活動の幅を広げている。
愛加あゆ
■マナカ アユ
元宝塚歌劇団雪組トップ娘役。’14年8月に宝塚歌劇団を退団。その後は舞台を中心にドラマなど映像作品でも活躍している。