DRUM TAO 2024 新作舞台「CLUB TAO3」 江良拓哉・岸野央明 インタビュー

伝統楽器である和太鼓を中心とした日本のエンターテインメントを発信し、世界観客動員数1000万人を誇る「DRUM TAO」。国内外での公演に加え、2020年には阿蘇くじゅう国立公園内に野外常設劇場「TAOの丘」がオープンした。2022年に始動した「CLUB TAO」が三回目の公演を迎えるにあたり、初の演出に挑む江良拓哉と岸野央明にインタビューを行った。

初めて聞く方は新鮮な驚きを味わえるはず

――過去2回の『CLUB TAO』で印象に残っていること、収穫を教えてください

江良 今日やった『FUTURE』が5月にでき、全国ツアーを経て12月にファイナルとして上演します。『CLUB TAO』が7月にできて10月に東京で上演する。毎年、『CLUB TAO』でできた楽曲がいい化学反応を起こし、全体が良くなっている感覚ですね。

岸野 相乗効果で良くなっている感じはあります。ただ、それぞれの公演の特色が薄れてきている感じもあって。今回の『FUTURE』は引き算をしています。そのぶん『CLUB TAO』はクラブ色を強められるんじゃないかと楽しみですね。

江良 以下同文です。『FUTURE』はストーリー重視ですし、『CLUB TAO』はEDMと和太鼓のコラボ。今年は両方の特色をうまく分けて、全く違う作品という感覚になるかもしれないと期待しています。

――EDMとの融合の中で気づいた和太鼓や和楽器の新たな魅力、可能性はありますか?

岸野 一発目の『CLUB TAO』から感じていましたが、すごくマッチしやすくて、フィーリングでやっても意外とハマっちゃうんです。でも、やっているとこだわりが出始めて、どうしたら打ち込みの音と生の演奏混ざりやすくなるか考えたり、音源の作り方も工夫したり、最初の頃とは仕上がりが変わってきた手応えがあります。自分で演奏していても、前はテープに合わせているような感じだったのが、バンドと一緒にライブで演奏しているような自然さになってきました。

江良 太鼓ってドラムだから、ビート感は基本である。EDMって、爆音でビートが聞こえるだけで体がノってくるじゃないですか。それにプラスして和太鼓の振動や波動が合致すると、初めて聞く人は驚きと興奮が味わえると思います。そこに日本古来の篠笛や三味線が加わる。実際にクラブで和楽器とEDMが合致した時って、最初は唖然とされ、それからノリだすことが多い(笑)。日本だけじゃなく海外でもやっていきたいコラボですね。

――SNSなどの影響で和太鼓に興味を持っている若い方も増えている印象です。初めての方にアピールポイントを伝えるならなんでしょう

江良 和太鼓って、どうしても古臭いとか古典的なイメージを持つ人もいると思います。そうじゃなく、「EDMと和太鼓ってコラボできるの?」というところからイメージを変えたい気持ちでやっていまます。今の和太鼓のスタイルやEDMとのコラボを、試しに1回体感してほしいですよね。

岸野 「和太鼓=地元の祭りでたまに聞く」みたいなイメージがこびりついている気もする。言葉で説明するのは難しいので、まずは1回僕らの舞台を生で見て聴いてくださいと。1回見ていただければ、「あ、なんかイメージとちょっと違う」とか「新しいね」といった感想を持ってもらえる自信があります。今回のEDMコラボは若い人にとっても親しみやすいフィールドだと思いますから、興味を持って見にきてほしいです。

演奏者と観客という垣根をなくして一緒に楽しみたい

――見どころになりそうな部分を教えてください

江良:EDMに和太鼓をプラスするんですが、どこかで音楽をかけず、和太鼓と和楽器だけでEDM的なノリを表現できたら素晴らしいなと。それに近しい楽曲が1つできるかもという期待感があります。あと、昔の曲には今と違う魅力が詰まっている。それをもう一度掘り起こしてEDM化してみると、今のDRUM TAOが表現しないようなスタイルになるんじゃないかと思っています。仕上げはこれからなので、あんまり言い過ぎると「あれどうなった?」となりそうですが(笑)。

岸野 新宿ルミネゼロは、すごく一体感のある独特の空間だと思っています。そこをより意識して、コミュニケーションを多めに取っていきたいです。スタートは本当のクラブで、少人数で演奏しようという企画で、やってみたら好評だしやっている側も楽しくて発見があった。スタートのコンセプトを劇場でもできないかなという思いがあります。

――具体的には

岸野 僕らがクラブで演奏して、10代・20代の若者が熱狂しているというイメージをみんなが共有しているので、それを再現したい。見ているだけというより、一緒に参加して盛り上がるようなものにしたいです。

江良 『FUTURE』はストーリーに準じて表現していて、お客さんとのコミュニケーションを取っていない。『CLUB TAO』はお客さんとの一体感という特色を強めたいです。あと、ここ2年コロナ禍もあって客席に行っていないんです。今なら客席に行く演出もできるのかなと。

――今回は江良さんが初の演出ということです

江良 これまでずっと補佐として関わっていたので、演出といってもそんなに大きな変化はないと思っています。今まで築いてきたものを活かしつつ、さらにパワーアップさせるのがベターだと思います。新しい楽曲は2、3出していきたいし、過去の楽曲もアレンジしていきたいので、そこも含めて聴いていただけたら。

――プレイヤーとしての立場からはいかがですか?

岸野 今の話を聞くと、現状をブラッシュアップさせていくスタイル。でも、テイストが違う、驚くほどの振り幅があるといいなと期待しています。楽曲制作などをみんなでやっていますが、江良くんの曲はいつも新しいアプローチがある。今回で言うと、太鼓の中に歌があるとか。僕らからするとやったことがないし挑戦でもあるんです。楽曲に関する新鮮さをよくくれるんで、演出にも期待しています。

柔軟にチャレンジし続けるのがTAOの強み

――改めて、プレイヤーとしてのお互いの印象はいかがですか?

江良 過去のインタビューと被るかもしれないけど、岸野さんはしっかりしていますよね。舞台に関するテクニカルを全部仕切っていて、今回で言うとLEDの図面を作って、ケーブルの配線とかも全部自前でやるんですよ。1回知識をマスターしてルールを作ってチームに浸透させる。細かい部分まできっちりやるのは見ていてすごいなと思います。その姿勢はプレイヤーとしても通じるものがあるのかなと思います。

岸野 普段はどちらかというとだらしない方ですが、好きな分野は細かく追求しても苦にならないんですよ。江良くんは演技のスピードとキレが素晴らしい。若いメンバーもどんどん入ってきて、江良くんのパートを目指してポジションを練習したりもしている。別働チームで誰かが同じポジションをやることはあるんですが、不動な感じがありますね。もちろん他のみんなも替えはきかないけど、江良くんは彼にしかできないポジションだと思います。

――和太鼓や和楽器のグループは他にもありますが、お二人が考えるDRUM TAOの強みはなんでしょう

江良 基本的に365日ずっとDRUM TAOなんですよ。みんなで共同生活をしていて、常にショーのことを考えているし、舞台に対するところが最終目標。他の方もそうかもしれないけど。

岸野 代表が演奏しない人で、新しいものに対する想いがあり、アイデアが柔軟なんです。僕は小さい頃から太鼓をやっているので「太鼓ってこう」という固定観念もあったんですが、そこに対して違う角度から無茶振りしてくる(笑)。「それは無理でしょ」「そんなことやってる人いない」ということをやっているうちにスタンダードになったり認められたりして今があります。タブーを恐れずに挑戦するのはTAOならでは。音楽的な話でも、見たり聞いたりしたことからヒントをもらって取り入れつつ、自分たちらしいものにしていくのが強みだと思います。

――まとめとして、昨年30周年を迎えたDRUM TAOの今後の構想、『CLUB TAO3』への意気込みを教えてください

岸野 『CLUB TAO』のつながりで言うと、去年は大型フェスにも出していただいた。クラブの企画で海外フェスに行きたいと話していたのが実現できそうになっているので、行きたいなというのがあります。

江良 あと、TAOは今3チームで動いていて、全国ツアーのチームと僕ら『CLUB TAO』をやるチーム、色々なイベントに出演する若手チーム。もっと海外での活動をしつつ、日本でも今まで通り全国を周り、『CLUB TAO』みたいに斬新なこともどんどんやって、いろいろなところで活動したいですね。

取材・文/吉田沙奈