読売新聞創刊150周年記念 よみうり大手町ホール開場10周年記念舞台『罠』|上川隆也 インタビュー

2024年は読売新聞の創刊150周年であり、よみうり大手町ホール開場10周年でもある。2つの周年を記念して上演されるのが、ロベール・トマの名作『罠』。6人の男女によるスリリングな物語を、演出・深作健太、主演・上川隆也、藤原紀香、渡辺大、財木琢磨、藤本隆宏、凰稀かなめという実力派キャストで描き出す。

公演に向け、主演を務める上川隆也の取材会が行われた。

――『罠』は幾度となく上演されてきましたが、舞台を観たことはあるでしょうか。なければ、脚本を読んだ感想をお聞かせいただきたいです

拝見したことはないんです。だからこそ新鮮な気持ちで脚本を読ませていただきました。出演にあたって物語の背景、周辺情報なども調べ、歴史や経緯に改めて驚いた次第です。

――どんなところが面白いと感じましたか?意気込みもあわせて教えてください

まずは邦題で『罠』としたセンスが見事だと思いました。通して読んだ上で冒頭に戻ると、幕が開いた瞬間からお客様に向かって罠が仕掛けられている。それこそが60年以上にわたり上演され続けている理由の一つだと思います。読んだだけで間違いなく面白いと思える作品を、今回の座組で、お客様に楽しんでいただけるものに仕立てていく。その過程から楽しもうと思っています。

――上川さんが演じるのは事件の捜査を行うカンタン警部です。どのような人物に見せたいと考えていますか?

個人的な感想ですが、この作品において一番振り幅を設けやすい人物ではないかと感じました。初日までに、ためつすがめつしてまいりたいと思っています。

――翻訳劇についてはいかがでしょう

『ウーマン・イン・ブラック』を斎藤晴彦さんと務めさせていただいた経験はありますが、数で言うと圧倒的に少ないです。だからこそ身の引き締まる思いです。

――翻訳劇に感じる魅力を教えてください

「翻訳」という言葉をどこまで受け止めるかだと思います。別の作品を例に出して申し訳ありませんが、シェイクスピア作品を日本の装いで演じることも珍しくない。見せ方の可能性を持っていると思います。(『罠』の舞台となっている)1960年のフランス・シャモニーという文化を設定することもできるでしょうし、そこから離れて演じることも現代では可能でしょう。ある意味の自由度があるものを、深作さんと僕らでどうディスカッションして作っていくのか。それが今回の醍醐味の一つだと思っています。

――作品について、深作さんとお話はされましたか?

まだ顔合わせもしてない段階ですが、アメリカを舞台にした『渇いた太陽』でご一緒したことがあります。深作さんの携わり方は目の当たりにしていますから、何の不安もありません。さらに深作さんは本作を何度も手掛けてらっしゃいますから、磐石の思いを持って挑みたいと思います。

――前回ご一緒した中での深作さんの印象、今回に関する期待はいかがでしょう

『渇いた太陽』での僕の役は、放蕩者の快楽主義者といった人物で、それまで僕が巡り合ってきた役柄とは随分趣が異なっていました。そのため、役に歩み寄り、いちから作っていきました。深作さんは僕の歩みをきちんと見極め、受け止めてサジェストしてくれた。一人で作ったものではなく、相手役の浅丘ルリ子さん、深作さんを含めた皆さんに作っていただいた役だという思い出があります。今回も一筋縄ではいかない物語でしょうが、深作さんの知見を頼りに構築していきたいと思っています。

――演じる上での思いを教えてください

60年も上演され続けている物語ですから、本筋や結末を秘匿するというのも難しいことではあると思います。でも、初めてご覧になるお客様も少なくないでしょうから、きちんと“罠”を仕掛けられるかどうかですね。この物語の根幹、6人のキャラクターによる「罠」の一翼をしっかり担っていきたいと思っています。

――キャストの皆さんの印象、共演において楽しみなことはありますか?

舞台でも映像でも常々思いますが、闇鍋です。それぞれの具材や調味料をよく知っていても、鍋に入れて煮てみないと味がわからない。それがお芝居の底知れない面白さだとも思います。だから、「以前ご一緒した時こうだったから今回こうだろう」という予測は立てずにいようと思います。演出・スタッフ・キャストで試行錯誤をして、1つの鍋を作っていきたいですね。

――主演として心がけたいこと、座長としての思いはいかがでしょう

これまで様々なお仕事に携わらせていただき、座長と呼ばれることも少なからずあります。でも、そういった作品とそうじゃない作品に対する向き合い方は何も変わらない。自分が何をできるのか、作品に対して座組みんなでどう向かっていくのかが全てです。今回も同じで、みんなで膝を突き合わせて、深作さんの目指す方向に進んでいきたいです。

東京公演は2024年10月4日(金)~10月20日(日)までよみうり大手町ホールで上演。
大阪・北九州・高松・岡山・愛知・富山でも公演が行われる。

インタビュー・文/吉田 沙奈