映画化もされたスティーヴン・キャラムのヒット作『ザ・ヒューマンズー人間たち』、2025年6月新国立劇場で日本初演!山崎静代ほか全キャスト発表!!

2024.07.18

写真上段 左から)山崎静代、青山美郷、細川 岳
写真下段 左から)稲川実代子、増子倭文江、平田 満

2025年6月に東京・新国立劇場で上演される舞台『ザ・ヒューマンズ─人間たち』。本作は、新国立劇場が2025年にお届けする、社会での最小単位である家族が織りなす様々な風景から、今日の社会の姿を照らし出す作品を集めた、シリーズ「光景─ここから先へと─」。そのシリーズ2作目として、劇作家・脚本家として活躍するスティーヴン・キャラムのヒット作、『ザ・ヒューマンズ─人間たち』の上演が決定。日本初演となる今回の上演では、演出に22年上演の『ロビー・ヒーロー』の記憶に新しい桑原裕子が担当し、山崎静代ほか全キャストも発表された。

マンハッタンの老朽化したアパートを舞台に、感謝祭を祝うために集まったある家族の一夜の物語─。
「ドールハウス」を観察しているかのような感覚にさせる、二階建ての舞台装置の中で、展開される家族たちの会話からは、やがて貧困、老い、病気、愛の喪失への不安、宗教をめぐる対立などが浮かびあがる。また、時折、鳴り響く不穏な音が登場人物たちを、そして観客をも不安に駆り立て、そして人生の大きな不安を描きだしていく本作は、現在のアメリカの縮図であり、私たち日本の現在とも重なる作品だ。

本作は、2014年アメリカン・シアター・カンパニー製作によりシカゴで初演され、2015年ラウンドアバウト・シアター・カンパニー製作によりニューヨーク、オフ・ブロードウェイで上演。2016年にはブロードウェイへ進出。ピュリッツァー賞演劇部門最終候補となり、トニー賞、ニューヨーク演劇批評家協会賞の最優秀プレイ、オビー賞劇作賞を受賞。続いて2021年には、もはやオスカー常連となった気鋭の映画製作・配給会社「A24」製作により映画化、キャラム自身が監督も務め、エイミー・シューマー、ビーニー・フェルドスタイン、スティーヴン・ユァンらが出演し、高い評価を得た。

そしてこの度、この日本初演における全出演者が決定した!ブレイク家の長女で、ガールフレンドと別れたばかりの弁護士エイミーには山崎静代。作曲家を目指す次女のブリジットには、オーディションを経て出演が決定した青山美郷、その恋人・リチャードには細川 岳、認知症により車椅子生活をおくる祖母モモには稲川実代子、母ディアドラには増子倭文江、そして悪夢にうなされ不眠が続く父エリックを平田 満が演じる。この発表に際し、演出の桑原裕子、出演者6名からのコメントも到着した。

以下、コメント。

桑原裕子(演出) コメント
美しくも甘くもない家族。一番近くにいるのに、わかり合えない存在。それでも愛を基軸に成立している家族。内側の腐敗した家屋で、ぎりぎり足場を留めているような不安定さを、「唯一無二の、ありふれた家族」として描くうえで、最高のキャストが揃ったと思っています。舞台はアメリカでも、ここに登場する家族は、今ここにいる、いびつで不安だらけの私たちなのだと、自分事のように体験して頂けたらと思っています。それは恐怖体験かも知れませんが。

山崎静代 コメント
素敵な俳優さんたちとご一緒させていただけることを大変嬉しく思います!!桑原さんのお芝居を拝見した時めちゃくちゃ面白い方だなぁと思っていたので今回演出していただけるということで、緊張しますが一緒にどんなことが出来るのか…今からわくわくしております。いっぱい勉強したいです。生きているといろんなことがあります。私も年を重ねていると、家族の中でいろんなことが起こっています。今まで何もなく健康で過ごせていたことがどんなに幸せだったのかとつくづく感じております。家族というものについて…考えさせられます。

青山美郷 コメント
オーディションで今作品に触れた時、自身と重なることが多く不思議なご縁を感じておりました。
またその時桑原さんと初めてお目にかかり、絶対にご一緒したいと思ったのでとても嬉しく思います。
家族の話のようで人間ひとりひとりの話、普遍的な作品だなと感じております。凄まじいキャストの皆様と共演させていただくということで今から身が引き締まりますが、作品の光と陰をお客様と共有できますよう精一杯努めたいと思います。

細川 岳 コメント
全体を覆っている不穏さがありながらもなんとかぎりぎり家族をやっているバランス感、これはユーモアなのか?と解釈を迷ってしまう辛辣な言葉など、とにかく戯曲がすごく好きだった。お話を頂いた時、これをやれるのかとドキドキしました。この戯曲で怪物のような先輩方とご一緒できることが楽しみでなりません。打ちのめされるかもしれないけれど、とんでもないものが立ち上がる。そんな予感がしています。

稲川実代子 コメント
1970年代初頭、野坂昭如さんが唄う「黒の舟唄」は傷つき途方に暮れていたわたしたちの心に染み入った。この公演の原作を読み終えた時…あまりにも深く傷ついた登場人物たちとあまりにも深く暗い世界が、野坂昭如さんの「黒の舟唄」と重なった…。
さあ、また舟を出そう、舟を漕ごう。この愛しき「ザ・ヒューマンズ」に幸あれ!

増子倭文江 コメント
ごく普通の家族のとてもリアルなお話です。
でも、なんなんでしょう?この不思議な読後感。
一階と二階で同時に進行していく会話。
周囲から聞こえる様々な音がまるでスリラー。
いったいどんな芝居になるのでしょうか?
いやいや、稽古はどんなことに?
全幅の信頼を置いている桑原裕子さん。
一筋縄ではいかない芝居になるのでしょうね。
敬愛する平田満さんはじめ共演者の方々と稽古場でお会いできるのが今から楽しみです。

平田 満 コメント
高齢者のいちばんつらいのは、時代に取り残されることでもなく、親しい者に去られることでもなく、自分の人生が無意味だったと悟る時なんですね。
つらくて哀しい話だと最初は思いましたが、たいていのおっさんはジョン・ウェインでも高倉健でもない、もともとただの凡人じゃないかと思えば、頑張らなくてもいいかもしれない、けっこう楽しいかもしれない、と思う昨今です。

ものがたり

眠れぬ夜を過ごしているエリック(平田 満)は、感謝祭の日、フィラデルフィア郊外から、妻ディアドラ(増子倭文江)と認知症の母モモ(稲川実代子)を連れ、次女のブリジット(青山美郷)とそのボーイフレンド・リチャード(細川岳)が住むマンハッタンのアパートを訪れる。そこに長女エイミー(山崎静代)も合流し、皆で夕食を共にする。雑多なチャイナタウンにある老朽化したアパートでは、階上の住人の奇怪な物音や、階下のランドリールームの轟音がして、祝日だというのに落ち着かない。そんな中始まった食事会では、次第にそれぞれがいま抱える人生の不安や悩みを語り出し、だんだんと陰鬱な雰囲気を帯びてくる。その時、部屋の照明が消え、不気味な出来事が次々起こり……。