“デキる”のみをものさしに、今後の舞台界を担っていくであろう、注目株の若手俳優をピックアップ。彼らが「デキメン(=デキる男優)」である理由、そして、隠れた本音をロング・インタビューで探る!
【第5回】松田 凌 RYO MATSUDA
のらりくらりやっていても意味がない。
チャンスがあるなら飛びつきたい
Writer’s view
演技未経験のまま、2012年に人気シリーズ舞台の第一作で初舞台初主演を飾ったシンデレラ・ボーイ。他を“凌ぐ”ことを宿命づけられた(?)松田さんが驚異的なのは、その成長のスピードです。そして、作品ごとに異なる魅力を見せてくれること。演技力や持ち前の華に加え、近年の作品では艶っぽい色気や演劇人としての強靭さも発揮しています。底なしのポテンシャルを秘めた彼が、俳優としての勝負どころの舞台「Being at home with Claude~クロードと一緒に~」に挑みます。
取材・文/武田吏都
――まだ俳優デビューから3年ほどというのが信じられないくらい濃密なキャリアを重ねていますが、今年前半は特に濃いお仕事が続いていますよね。
松田 2月頭に「URASUJI2015 綱渡り」が終わって、1ヵ月後に「遠ざかるネバーランド」があり、そのまた1ヵ月後がこの「Being at home with Claude~クロードと一緒に~」で、その3週間後に「メサイア-翡翠ノ章-」があります。ほんと、濃いですよね(笑)。
――特に、人間の心理を深くえぐった「遠ざかるネバーランド」と「Being at home with Claude~クロードと一緒に~」が連続するところに松田さんのタフさを感じます。以前取材させていただいたとき、「スケジュール的には厳しいけど、この2本はどうしてもやりたかった」と言っていましたよね。
松田 ドM感というか(笑)、自分を追い込む形になったんですけど。でも、他の誰にも渡したくないと思ったし、今年しかないと思ったんです。今取り組んでいる「Being at home with Claude~クロードと一緒に~」で言うなら、もし10年後にお話をいただいていたらもっとイージーにできていたかもしれないし、逆にデビュー間もない頃にいただいていたら技量も心構えもなくてたぶんできていない。ちょうど真ん中のタイミングで、できる・できないの狭間でのチャレンジって、役者にとってものすごく成長できるかもしれない賭けなんですよ。負けるかもしれないけど、賭けなきゃ始まらない。役者として頭一つ二つ抜け出すための自信や表現方法を身につけるにはこれぐらいの負荷をかけないと。のらりくらりやっていても意味がないし、そのチャンスを与えてもらえるんだったら、僕は飛びつきたいから。
――そのアグレッシブさはどこから来るのだろう、と。頑張り続けてポキッと折れてしまうかもしれない不安のようなものを感じることはないですか?
松田 実は僕は折れちゃうタイプの人間で、昔は、折れたらほんとに終わってしまっていました。でも唯一そうならなかったのが、この役者という仕事で。いや折れてた瞬間もあったのかもしれないけど、麻痺してたのかも(笑)。僕の場合、デビューがデビューだったので、言ってみれば折れたスタートだったんですよ。その経験があったから、作品や役柄の大きさ、演出家さんによってどんだけ折られても、本当の意味で“折れた”感覚はなかったので。折れずにいたら1本ずつの線がいつの間にか太くなって束になっていた、みたいな。1度折れてからのスタートだったから、より強い芯が残ってくれているように思うんです。
――いま言っていた俳優デビュー作は、初舞台で初主演を務めたミュージカル『薄桜鬼』斎藤 一 篇。大人気のゲームが原作で今も続いている人気の舞台ですが、そのシリーズ第一作、しかもミュージカルに、演技未経験の松田さんが抜擢されました。きっかけはオーディション?
松田 実はウラで……ってよく聞く話だったりしますけど、僕の場合、ほんっとにオーディションです。技術も何もないのに、当時はバカみたいな根拠のない自信に満ち溢れていて(笑)、「俺を見ろ!」ぐらいな感じでオーディションを受けたんです。でもまさか受かるとは思っていないので(笑)、マネージャーさんから電話をもらったときは「これは夢だ……」って感覚でした。
ミュージカル『薄桜鬼』斎藤 一 篇(2012年)
©アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会
――新人だけれども主演として作品に取り組む中で、その“根拠のない自信”とかいろいろなものが最初に折られていったんですね。
松田 結果論で言うと、「斎藤 一 篇」は最高の形で終われました。千秋楽がそれまでで一番やり切れて、だから僕にとっては悔いもないし。だけど、千秋楽一歩手前まではどうしようもない日々が続いていたと思います。思い出したくないぐらい、失敗の連続でした。同じところで間違ったり、思うお芝居ができなかったとき、本番中に楽屋まで駆け下りてボロボロ泣いていたときもあったし。ガキといっても二十歳の成人男性がですよ?(笑) なんかもう、常に苦しかった。自分を褒めるじゃないけど、よくやったなと今だから思えますね。
――そこからミュージカル『薄桜鬼』シリーズで斎藤一役を昨年まで演じ続けて、回を重ねるごとに成長した姿をまざまざと見せてきました。もっと言うと、その初舞台から2ヵ月後の舞台2作目「露出狂」を観たとき、「ものすごい成長している!」と感じて強く印象に残っています。成長が早いというか、1作ごとの変化がとても大きい方だなと。そのモチベーションを知りたいです。
松田 初めの頃、今よりもっと何もできない状況の中で、求められるものの高い役が続いていました。でも当時の自分では届かなくて、もう何回台本を投げ捨てたいと思ったか(苦笑)。実際、届いていないときもあったと思うんですけど、自分としてはギリギリ指1本はつかめるぐらいの感覚は常にあったんで。“ギリギリ”でずっとつなぎ合わせてきたんですよ。今もそう。僕の場合は、余裕がないのがいいんだと思います。高い壁を登りきったと思った瞬間に、次の壁がある。当然辛いし、その間隔はもうちょっと空いててもいいんじゃないかなと思うときもあるんですけど、もっと大きな壁に挑んで日本の芝居を引っ張っていっているような人たちなんて、僕なんかには想像もできないキツくてしんどいことをやっているはず。そういう若手俳優で言うと、例えば山田孝之さん、小栗旬さんとか。僕はそういう人たちが羨ましいし、その背中を追っているし。逆に言うと、僕のこの背中でさえ、羨んで見ている人たちがたくさんいるんだと思います。自分が笑っているとき、後ろで泣いている誰かが絶対にいるんですよね。斎藤一にしても「クロード~」の“彼”(役)にしても、「絶対にこの役を演じたかったのにお前に取られた」って泣いてる役者がいるかもしれない。そういう責任は、しっかりと感じなきゃいけないと思っています。
――正直、もっとコツコツと成長したいと思うことはなかったですか?
松田 僕自身は事務所に所属したとき、じっくりとある程度の下積みを重ねて、そこからの勝負だと思っていたんです。でもミュージカル『薄桜鬼』のオーディションに受かって、チャンスをたまたまつかんで。だから遅いペースで進むのもひとつの人生だったと思うし、そしたらどうなっていたかわからないですけど、僕はこのやり方がベストだったし、そう信じたい! そうだったかもしれないっていうのはあっても、もうちょっと遅く成長したかったとか、もっとじっくりお芝居を突き詰めたかったって感覚は一切ないです。むしろ早かったから、「仮面ライダー鎧武/ガイム」の吉田メタルさんとか「遠ざかるネバーランド」の松村雄基さんとかといった大先輩とがっつりお芝居させていただけたり、この年では普通できないようなことを経験させてもらっているし。その立場になれる人間って一握りだと思うんですけど、そこに行きたくて必死にもがいてきた自信もあるので。
――その立場に見合う努力はしてきた、とはっきり言い切れるということですよね。
松田 そうですね。言えます。もしかしたらもっと早く走れたかもしれないけど……でも悔いはないです。
――そのストイックさとアグレッシブさに本当に感心します。
松田 なんの嘘もなく、僕この仕事が大好きで。だから仕事に対しては、真面目だと思います。休みがあってもうれしいけど、続くとやっぱりイヤで、関西の実家に帰っても3日で帰ってきちゃいたくなるタイプ。普通に生きることが一番の幸せだってわかっているんですけど、やっぱり刺激を求めちゃうんですよね(笑)。たぶん、最初に板(=舞台)の上に立ったとき、最初に画面に映った自分を見たときに変わったんだと思います。中毒なんですよね。「うわ、俺の居場所はここだ!」と思って、生きる道はここしかないと思いました。「クロード~」の稽古している今、特に感じているんですけど。僕なんかが言うとめっちゃ陳腐で薄っぺらい言葉になっちゃうのがイヤだけど、このためなら死ねるなって思えるのは、役者という仕事ですね。
――今年前半の作品を少し振り返っていただけますか? まず「URASUJI2015 綱渡り」は、なんといっても松田さんが俳優を目指すきっかけになった舞台「URASUJI」シリーズの最新作に、デビューから3年足らずで出演できたという重みがありますよね。
松田 今年の始まりから濃かったですね。自分の人生を変えた作品というのもあるんですけど、やっぱり思っていたよりも上の景色に立ったなという感じです。めちゃくちゃいい役をいただき、ものすごく素敵な先輩方と一緒にやらせていただいて。でも稽古中は出鼻をくじかれたというか、僕の自信は今年始まって早々、すぐに折れちゃったんで(笑)。「もう1個2個階段上がりてぇんだろ? だったらそんな甘くねぇぞ」ってことを教えてもらいました。辛い経験だったってことじゃなくて、いい意味で自信を削いでもらえました。
――松田さん演じた新五郎には、ザ・スズナリの小空間には収まりきらないような華や色気、体のキレがあって素晴らしかったです。あの百戦錬磨のベテランに混じり、想像以上の健闘でした!
松田 「良かった」って言ってくださった人が多かったのはものすごくうれしいです。ただきれいごとに聞こえちゃうかもしれないけど、それは僕の力じゃなくてスタッフさんや一緒にやらせてもらった先輩の方々がとにかく素敵だったから、僕はそこに乗っかるだけだったんですよ。もうほんとに、皆さんがすごかった。「URASUJI」の世界ってすっげぇ泥臭いんです。とんでもなく華やかな世界を知っている人たちばかりだからこそ、泥臭くて人情があってハチャメチャな、あの異次元のエンターテインメントをやれるんですよね。その世界に入れただけで僕は幸せでした。
「URASUJI 2015 綱渡り」(2015年)
撮影/ヒキノワカナ
――劇場がザ・スズナリだったというのもあるでしょうが、アングラが似合う泥臭さを松田さんに感じたのも新鮮な驚きでした。
松田 ああ、うれしい。僕、根がそうだから、心がなじんじゃうんだと思います。昔から観てきた舞台もそうだし、そういうのが好きなんですよね。
――以前、松田さんの口から好きだった劇団として「遊気舎」(前身を含めると1970年代より活動する関西小劇場界の草分け的存在。後藤ひろひとが過去に座長を務めた)の名前が出てきて、驚いた記憶があります。演劇好きの叔母様の影響だそうですが、23歳にして素晴らしい演劇センス!(笑)
松田 「遠ざかるネバーランド」で共演した平田敦子さんなんて、昔からずっと舞台で観てきた人だったので、会わせたら、叔母と母親がとにかく喜んで。そういう環境で育ったんです(笑)。
――その「遠ざかるネバーランド」でも根っこにあるアングラ気質みたいなものを感じて。主な要因はたぶん声なんですが、完全に“舞台人の声”を得ているのが頼もしいなと。ノドは強い方?
松田 「メサイア」のときかな、違う発声方法をして1回潰したことがあって、それ以来、気を遣うようになったんですけど。全く初めてだった「斎藤 一 篇」のときに潰さなかったのは自分でも不思議ですね。あんなに叫びまくって歌も歌っていたのに。だから、もともとは強い方だと思います。でも「遠ざかるネバーランド」のときはちょっと危なかったですね。
「遠ざかるネバーランド」(2015年)
――確かに、かなり声を張っていましたよね。だからこそ印象に残ったのですが。
松田 みんなが改心して、つまり自殺を踏みとどまって「飛びたくない」って言い出す。それに対して僕が演ったピーター・パンは、「いや、飛びたいんだろ?」って、常に自分から音を鳴らさなきゃいけない役だったので。僕の技量が高ければもう少し安全なラインで声を出せたんでしょうけど、そこは未熟さで、力いっぱい出さなければいけなかったんですね。
――そして、最新作「Being at home with Claude~クロードと一緒に~」(17日から公演中)。4人のキャストが登場しますが、松田さん演じる殺人を犯した男娼の“彼”と、彼を取り調べる“刑事”との対話が大半を占める作品です。劇中でゴングの音が使われますが、まさに1対1の演技バトルですよね。
松田 今の時代、ここまで役者が丸裸になる作品も珍しいと思います。セット、照明、音響、衣裳、メイク……必要最低限の状態であれだけのセリフを役者同士が交し合うということが、今いろんな舞台がある中で、ものすごく際立つ、光る作品。そして、その衝撃ってものすごく大きくて。なんだろうな……役者として舞台として、ひとつの極致だと思います。ここを越えれば何かが見えるだろうし、またひとつ人生が変わるんじゃないかなって思っています。
――翻訳劇は初めて?
松田 ちょっと着色したようなものはありましたけど、ここまでストレートな翻訳劇はなかったですね。カナダが舞台でカナダ人の役ですけど、普通の戯曲とはやっぱり全然違います。文化や習慣だったり、ノックの音ひとつとっても。単純なことでも違ってくるので、ほんと難しいです。カナダ人という設定については、外国人にはなりきれないので、いつもとあまりニュアンスは変えたくないかなと思っています。自分が思うカナダ人を演じちゃうとヘンな方向に行って、すごく薄っぺらくなっちゃう気がするので、稽古中の今の段階では(取材時)普段のままの方がいい気がしています。
――この作品の“彼”を演じる困難さはたくさんあると思いますが、わかりやすいところで言うと、まずセリフの量。独白の箇所も非常に多いです。
松田 もともとセリフ覚えがあまりいい方じゃないので特に大変です。会話だと比較的楽なんですけど、独白の場合はどこに向けて芝居をするのかというのも全部自分で構築しなきゃいけなかったりするので、難しい。今まだその境地には行っていないんですけど、セリフがもう口から出ちゃう感覚になりたいですね。頭で考えたらできないし、体でもないし。結論としては、その人の言葉がセリフになっているという感じにならなければ。“彼”本人になりきらなければ、特に長い独白は出てこないです。
「Being at home with Claude~クロードと一緒に~」(公演中)
――客前で演じる演劇の概念に矛盾していますが、観客を意識してはいけない芝居という感じがします。観客もこの部屋にたまたま入ってきてしまって、「ちょっと観せていただきます……」というような感覚になるんじゃないかなと。
松田 もしかしたら、舞台と思わないかもしれない。完全に人生の1ページを切り取ったものを観た、と思ってくださったら、僕らはすごいうれしいです。おっしゃっていただいたとおりで、この作品は、お客さんを意識した途端に違っちゃうんですよ。こうした表情をした方がわかりやすいとか、この配置の方が画的にいいとか見えやすいとか、そういうのは一切必要ない! 僕自身、ごくごく最近までそれを考えたりしていたけど、それぞれがその人(=演じる役)であればいい。それ以外のことを考えてしまった時点で終わりというか。
――初演で“彼”を演じた、稲葉友さんと相馬圭祐さんとたまたま話す機会があったとか。
松田 2人とも、本番に入ってから全てが変わった瞬間があったらしくて。僕にはまだわからない境地がたくさんありました。本番まであとわずかですけど、つかみに行こうと思わず、とにかくこの作品に生きることを考えるしか今の僕にはできないんだなってわかりました。僕にはまだ見えていない、あの2人が見ている世界の言葉がポンポン出てきて、僕にとっては「すごいな」としか思えなくて。最後に「結局、一番大事なのは何かな?」って聞いたんです。そしたら、2人が声を揃えて「頑張れ」って(笑)。一番大事なのは、頑張ること。単純ですけど、その2人の言葉が深くて……。
――改めて感じたのですが、松田さんの場合、ある意味、典型的なイケメンの外見と、実はかなりハングリーで泥臭い内面とのギャップが大きな魅力ですよね。
松田 見た目が自分のひとつの才能であるっていうのは、自分でもわかっているんです。ナルシストと呼ばれるならそれでもいいです(笑)。ただ、この程度の武器では乗り越えられない仕事だということも理解していて。もしも僕が、男女の区別がつかないぐらいの絶世の美男子だったら、何の努力もしないと思います(笑)。ではなくて、今の自分のある程度の見た目だったら、そんなものは少しの糧でしかない。で、周りの同世代のいわゆるイケメン俳優と呼ばれる人たちも、そこに奢っている人は少ないと思います。正直な話、ずば抜けたすごい才能を持った天才中の天才でない限り、みんなどっこいどっこいなんですよ。そんなに大きく差がついているわけではない。だけど努力を怠ってしまうと、そのスタートラインにも立てなくなってしまう。だから「イケメン」と言われてる人って、そう呼ばれるまでにすごく努力していたりして、見た目にも気を遣うし。僕も気を遣っている方だと思うんですけど、背伸びはできないなと感じていて。大人っぽく見せたり、背伸びをしたいんだけど、結局のところ年齢が出るし、やっぱり中身なんですよ。その人の人生だったり経験が、その人の顔になっていくと思っているから、今現在の見た目のことを先行して考えても、あまり意味がないんじゃないかなと思ってしまいます。
――顔を含む、自らの肉体が商売道具である俳優の場合は特にそうですよね。
松田 うん、生き方が顔に出ちゃいますね。だからといってヘンなこと、悪いことを全くしてはいけないってことはないと思います。法に触れたら絶対ダメだけど(笑)、経験のためにある程度ハメを外しても、逆にものすごく良いことをしたって僕はいいと思う。結局、全てがその人の色になるから。そういう意味でも、役者ってもっとフリーダムであるべきじゃないかなって思っています。
5月、「メサイア-翡翠ノ章-」に出演
Q.「イケメン」というフレーズに感じることは?
本文の話にもつながりますが“努力家”。「イケメンだから人生楽しいだろ」とか「スタイルもいいし、洋服もオシャレだしな」みたいに思う人がいるだろうけど、そうなるように努力してるんです!って話です(笑)。僕がそうですよってことじゃなくて、みんな少なからず努力してると思う。
Q.「デキメン」が思う「デキメン」
先輩では、「遠ざかるネバーランド」で共演させていただいた松村雄基さん。いろんな素敵な役者さんにたくさん出会ってきましたけど、あの人ほど、人として役者としてのたたずまいが美しかった人はいないですね。楽屋が隣同士だったんですけど、こんな若造に対して「おはようございます。よろしくお願いします」って毎日挨拶に来てくれるんですよ。あり得ない(笑)。どこに欠点があるんだというぐらい、素敵な人でした。
舞台を中心に活躍している同世代だと、村井良大くん、鈴木拡樹くん、矢崎広くん。単純に技量が高いし憧れる部分が多いんで、この三枚の壁はデカいです。……同世代を挙げるのって難しいなぁ。尊敬したくないって反発心があるし、尊敬しちゃってる自分に悔しさを感じちゃうから(笑)。僕は違った道で、この三枚の壁をぶち抜こうとしています!
Q.「いい俳優」とは?
いろいろ思いつくんですけど、結局のところ、とにかくお芝居が好きで本気でやっている人じゃないかな。上手い下手でも、売れてる売れてないでもなく、お芝居がないと生きていけない、お芝居のためだったら何でも削ってやるってぐらいの人は、「いい俳優」と呼ばざるを得ないと思います。
性格は古臭くて、オッサンとまでは言わないですけど、イマドキの若者ではないです(笑)。自分の気持ちにとにかく正直で、ある意味、それだけなんですよね。
事務所に所属するオーディションのときから見てきて思うのは、運の良さ。もちろん本人がそれに見合う努力もしてきつつではあるのですが、最初からシナリオが用意されてたんじゃないかなって出来事をたくさん目の当たりにしてきました。たまに自分も、この人のシナリオに乗せられているのかなと思うときがあります。でもおかげで見たことのない景色を見せてもらっている感覚がありますし、側にいて幸せだなと思います。
たぶん、すごい人なんでしょう(笑)。すごいなと思うところとそうじゃないところが、いいバランスで存在しているのがまたいいのかもしれません。 (株式会社キャスト・コーポレーション 髙木良之マネージャー)
Profile
松田 凌 まつだ・りょう
1991年9月13日生まれ、兵庫県出身。A型。高校2年のときに「URASUJIⅢ」を観劇したことがきっかけで、役者を志す。2012年、ミュージカル『薄桜鬼』斎藤 一 篇 にて初舞台にして初主演。以降、多くの舞台を経験し、主演作も多数。13年、「仮面ライダー鎧武/ガイム」に城乃内秀保/仮面ライダーグリドン役で出演。少林拳空手で西日本優勝の実績を持つ。
【代表作】舞台/「遠ざかるネバーランド(2015年)、「URASUJI2015 綱渡り」(2015年)、舞台「K」(2014年)、「ZIPANGパイレーツ」(2013年)、「メサイア」シリーズ(2013年~)、パルコ・プロデュース「露出狂」(2012年)、ミュージカル『薄桜鬼』シリーズ(2012~14年) 映画/「メサイア-漆黒ノ章-」(2013年) ドラマ/「仮面ライダー鎧武/ガイム」(EX)、「メサイア-影青ノ章-」(TOKYO MX2) バラエティ/「俺旅。」(tvk他) ほか
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