舞台『アオペラ』|眞嶋秀斗 インタビュー

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豪華声優陣によるアカペラ動画が大きな話題を呼んだ「青春」×「アカペラ」音楽原作プロジェクト「アオペラ -aoppella!?-」。2024年11月には、舞台『アオペラ』として初の舞台化が控えている。本作には辻堂 颯太という舞台オリジナルキャラクターが登場する。鈴宮 壱たちが通う都立音和高校の生徒会書記という辻堂を演じるのは、自身も高校時代にアカペラ部を立ち上げて部長を務めていたという経歴を持つ眞嶋秀斗だ。
アカペラに青春をかけた眞嶋の目には、舞台『アオペラ』はどう映っているのだろうか。アカペラ部時代の思い出とともに、本作の魅力を語ってもらった。

――辻堂 颯太は舞台オリジナルキャラクターということで、どういった手がかりから役作りをしているのでしょうか?

役作りとしては特別なことはしていないです。元吉さんの脚本と演出から、自然と物語に引っ張られる形で生まれるものを大切にしています。ただ、高校生を演じるということで、あの頃の若さゆえのエネルギーを思い出すという作業はしました。
今回、壱たちのアカペラ部結成の物語と同時に、辻堂の悩みや葛藤、成長のストーリーも描かれていて。脚本を読んだ際、どちらの物語も丁寧に描かれているなと感じました。辻堂は舞台オリジナルキャラクターとして登場しますが、ストーリーが舞台オリジナルなわけではありません。ドラマCDのストーリーはそのままに、行間を埋めていく存在というか、より物語の幅を持たせる存在というか。原作ファンの皆さんに受け入れてもらえるのか不安もありますが、どういった形で辻堂が登場するのかもぜひ注目してもらえればと思います。

――先日公開されたスペシャルトーク動画を拝見した印象では、眞嶋さんに似ている雰囲気のキャラクターかなと感じました。辻堂に対して共感できる部分、また自分にはないなと思う部分はどんなところですか?

辻堂の歌にも登場する「自分にないのが才能なのか勇気なのか」という彼の悩みは、俳優の今の自分としても共感できますし、きっと誰しも一度は抱えたことのある気持ちなんじゃないかなと思います。進路に悩んだ高校時代の僕にとっても共感できますね。
自分と違うところでいえば、生徒会という立場にいることかな。僕は目立つのが得意じゃなくて、憧れはあっても生徒会に入ろうとはならなかったので。立ち上げたアカペラ部も、実は最初はひっそりやっていたんですよ(笑)。部室ももらえなかったので、暗い空き教室で練習していました。

――アカペラ部を実際に設立した経験があるという俳優はなかなかいないと思います。ある意味“リアル『アオペラ』”な青春を過ごした眞嶋さんのアカペラ部時代の思い出をお聞かせください。まず、アカペラ部を作ろうと思ったきっかけとは?

やっぱり大きいのは『ハモネプリーグ(以下、ハモネプ)』の存在ですね。中高一貫校に通っていて、中学ではテニス部だったんですよ。中3で部長に任命されたのですが、ふと「本当にやりたいことはなんだろう」と思って。そこで思いついたのがアカペラで。歌がうまい友人2人に声をかけたらやってくれるということで、「名前書くだけでいいから!」と部員を集めて、8人で結成しました。
『ハモネプ』の影響で特技がボイスパーカッションの子もいたし、歌がうまい2人をリードボーカルにして、僕はコーラスのパートを担当して。市販のアカペラ教本を参考に練習をして、初めて歌ったのは『夜空ノムコウ』でしたね。
顧問の先生もいなかったので、音楽の先生に頼んで週に1回、昼休みにボイストレーニングをつけてもらって。その日はみんなで早弁して音楽室に行って……。いやぁ、全部が懐かしいです。

――文化祭などで披露することも?

教室をステージにしてやりましたね。しかも、最初の年に来場者の人気投票でアカペラ部のライブが2位になったんですよ!すごくないですか!?その影響もあってか、僕らが高2のときは、後輩たちがかなり入ってきてくれて。
高2の引退ライブでは、これまで歌ったアカペラ楽曲をつなげて、オリジナルミュージカルを上演しました。アメリカに渡る副部長に向けてのメッセージを込めて、自分たちで脚本も書きましたね。

――かなりの熱量で取り組まれていたんですね。高校生活の中心にアカペラ部があった?

がっつり部活に注ぎ込んでいましたね。0からのスタートでマイクなどの機材もないので、自分たちでお小遣いを出し合って購入したり、朝練をしたり。
ただ、数年前から、母校の文化祭の出し物一覧からアカペラ部が消えているんですよ……。毎年、アカペラ部のライブがあるのを確認していたので、もしかしたら無くなっちゃったのかもしれないです。かなりショックなので、もう1回僕が立ち上げに行こうかな(笑)。

――高校生たちの青春ストーリーにちなみ、眞嶋さんが高校時代に戻れるならやりたいことを教えてください

やっぱりアカペラの大会に出ることかな。実は『ハモネプ』に出場するつもりで、嵐の『マイガール』の大会用アレンジを作ったり、みんなで鎌倉まで行って絵馬に「絶対優勝」って必勝祈願をしたりしていたんですよ。だけど、その年から高校生ではなく芸能人チームの大会に変わってしまって、高校生は募集すらなく……。代わりに先ほどお話したミュージカルを作ったんですが、やっぱり今でも大会に出たかったなという気持ちはあります。

――そんな青春を過ごした眞嶋さんからしてみると、舞台『アオペラ』でもアカペラに参加したかったという気持ちも……?

辻堂としては思いませんが、眞嶋としてはアカペラに参加したくなりますし、なんなら“俳優アカペラ部”をいつでも作りますよ!という感じです(笑)。稽古に入ってからは、タイムスリップして高校時代に戻った感じがしていますね。最近は、当時よく聴いていた曲を聴きながら帰宅しているほどです。

――リルハピでもFYA’M’でもないという立場から見た、本作の見どころはどんなところに感じていますか?

青空が似合う爽やかで明るいリルハピと、かっこいいFYA’M’が、お互いを意識してぶつかり合いながら、自分たちのカラーを探しているという関係性が、「これぞ『アオペラ』!」という感じで観ていてすごく楽しいですし、僕はその関係性がすごく好きです。
僕と崚行(鈴宮 壱 役の長江崚行)は舞台上にいる時間がとくに多いのですが、崚行の演じる壱の感情豊かなところが可愛く見えたり、かと思えば背中が大きく見えたり。すごくパワーがもらえます。FYA’M’でいうと佐奈ちゃん(是沢 舞斗 役の佐奈宏紀)とは久々の共演なのですが、舞斗としてすごく生き生きしていて。稽古からも歌が好きなことが伝わってくるので、こちらまでニコニコしています。
辻堂としては、そういった彼らの影響を受けて、自分の内面に目を向けるようになり、いろんなことに気付かされていくんですね。お客様にも辻堂を通して、歌の影響力を感じてもらえたら嬉しいです。

――先ほど稽古を拝見しましたが、シーンを生のアカペラで繋いでいくなど、両グループのアカペラシーン以外にも、歌声があふれていたのが印象的でした

そうなんですよ。こんなにアカペラを聴ける作品って、他にはないと思うんです。ただ、稽古をしていて思うのは、みんなの気持ちが合わないとシーンが運ばれていかないので、本当に難しいことに挑んでいるなと。
実際のアカペラって、みんなが集まって顔を合わせて歌うじゃないですか。でも、舞台上ではみんながそれぞれ違う方向を向いていたり、立ち位置によってはセットで高低差がある中で、最初の呼吸から合わせていかないといけない。想像できないレベルの難しいことに挑戦していて、これが劇場でハマったらどんなことになるんだろうと、僕自身も楽しみです。

――では最後に、本作への意気込みとともにファンへのメッセージをお願いします

アカペラ好きな方には絶対に観に来てほしいのはもちろん、まだアカペラに出会っていない方が観たら、絶対にアカペラにハマると思うし、自分も歌いたくなると思います。あまり構えずに、「今日は楽しい1日になるぞ」という軽やかな気持ちで劇場に来てほしいです。こんなにアカペラで進んでいく舞台って他にないと思うので、ぜひこの機会を見逃さないでください。

取材/双海しお