灰原薬の同名漫画を原作にした舞台『応天の門』が12月4日から22日まで東京・明治座で上演される。
『応天の門』は、平安時代を舞台に、学問の天才と称される菅原道真と、都で随一の色男である在原業平がタッグを組み、京の都で起こる怪奇事件を次々と解決していくさまを描く人気歴史漫画。今回の舞台化は脚本を桑原裕子、演出を青木豪が手がける。
菅原道真役の佐藤流司、在原業平役の高橋克典、唐からの渡来人で都の遊技場を仕切る女主人・昭姫役の花總まりを囲んだ合同取材の模様をお届けする。
原作ファンも初めて作品に触れる人も楽しめる舞台に
――原作の感想と、ご自身が演じるキャラクターの印象をお聞かせください
佐藤 原作がとてもおもしろかったです。ミステリーで謎解きがあって、いい意味で少年漫画的なサクセスストーリーな感じもあって。起きた問題をどうやって解決するかにも引き込まれ、一気に読んでしまいました。原作の菅原道真は、自分の菅原道真像とは少し違っていました。実直な感じを想像していたし、史実だと志半ばで亡くなったイメージもあるんですけど、この作品の中では「さめた小僧」みたいなことを言われたりして、若い時はこうだったのかな?と思ったりもしました。
高橋 この作品は平安時代のお話なのですが、今年は大河ドラマ『光る君へ』の舞台も平安時代なので、馴染みがあって心地よく感じる方も多いかなと思います。内容も、人の心のお話ですし推理ものでもあるので、原作ファンの方はもちろん、舞台で初めてこの作品に触れる方も、幅広い方に楽しんでいただけるかなと思っています。
――高橋さんが演じる在原業平は色っぽい役柄ですね
高橋 若干ね!原作では色っぽいシーンがけっこうあるから、最近はめっきりそういう役を演じていなかったし楽しみにしていたんですけど、舞台はもう少し爽やかにつくられそうです(笑)。
花總 平安時代を舞台に、実在の人物をモチーフにしたミステリーもので、原作を読んでなんておもしろいんだろうと思いました。歴史ものって、好きな方は好きだけれども、知らないと「難しいのかな」と思って敬遠しがちだったりすると思うんです。でもこの作品はとても読みやすくて、すんなりその時代のことが入ってくるし、学べるところもあったりして。こういう作品に触れることができてよかったなと思いました。私が演じる昭姫はインパクトがあって、お話をいただいた時の資料に役の絵が添えられていたのですが、それを見て「あ、おもしろそう。やってみたいな」と一目で惹かれました。このお話をいただけてすごく嬉しかったです。
――舞台版の脚本は、お読みになられていかがでしたか?
佐藤 原作はオムニバスになっているのですが、その中でもすっごく好きなエピソードが脚本に入っていて嬉しかったです(笑)。内容はネタバレになるので言えないのですが、「かっけーな!」ってなるところが入っていました!
高橋 脚本を読むと、視覚的な部分も大きくなってくるのかなという感じはしました。原作は一話完結なので、これをどういうふうに芝居にするのかなと思っていたんですけど、非常に見やすいカタチで、初めてこの作品に触れる方もみなさん楽しんでくださるつくりになりそうな脚本だと思いました。
花總 私も実は原作で「ここ好きだな」ってところが入っていて、それはストーリーでもなくて一瞬の場面なんですけど、今からその場面が楽しみっていうのはあります(笑)。あと今作では昭姫を深掘りするシーンが新たに混ぜ込まれていて、そこは恐らく原作ファンの方も初めて目にする昭姫の一面だと思うので、演出の青木さんと相談しながら大切に演じたいです。楽しみです。
いいカンパニーになりそうな雰囲気
――明治座に立つのは佐藤さんは初めてで、高橋さんと花總さんは二度目となります。明治座へはどんな思いがありますか?
佐藤 昨年150周年を迎えた歴史ある劇場で、そういう場所に立てることと、いつも応援してくださるファンの方をこの場所に連れてくることができてよかったなと思います。先日、明治座さんが「幟(のぼり)の色を決めてください」と言ってくださったので、「名前を金色にしてください」と言ったら「ダメです」と言われました(笑)。
花總 色の要望なんて聞かれたかな?
高橋 聞かれてないよ!
佐藤 ……でも俺も却下されているので(笑)。
一同 (笑)。
――高橋さんは『酔いどれ天使』(2021年)ぶりの明治座ですね
高橋 前回はコロナ禍の一席あけて座る時期の公演でした。上演できることだけでも幸せな状況でしたけど、すごくアゲインストな空気を感じながらの公演でした。でも普段観に来ると、地方から来られたお客様もいらっしゃって、明治座で芝居を観て、明治座でご飯を食べて、明治座でお土産を買って帰る、「一日を費やして楽しむ」っていう芝居の楽しみ方ができる場所なんですよね。今回の舞台は平安のお話ですし、ぜひまったりと一日を楽しんでいただきたけたらと思います。
――花總さんは舞台『本日も休診』(2021年)ぶりですね
花總 前回も明治座にいらしてくださる方には「早めに来てくださいね」「お弁当を食べられますからね」「一日楽しめるって感覚で来てくださいね」と前もって伝えました。私がよく出させていただく劇場は、開演何分前に行って、休憩はトイレに並んで、みたいな感じなんですけど、明治座は劇場ごと楽しめますから。ぜひ一日どっぷり世界観に浸っていただきたいです。
――お互いの印象をお聞かせください
佐藤 (途端に緊張して)うーん……。
一同 (笑)。
佐藤 高橋さんは子供の頃から(テレビで見て)知っていたので、かっこいいなって……。まだ横顔多めでしか見られないんですけど、稽古が始まったら真正面で向き合うシーンがたくさんあるので、早く慣れないとやばいです(笑)。まだ全然緊張しちゃってるので。
高橋 (佐藤は)今時の若い人の印象だったんですけど、今日お会いしてみたらとっても真面目で、お弁当は玄米ご飯だって言うし。
佐藤 そうです(笑)。
高橋 役設定にも合ってますよね。稽古が始まったら、ツンケンされてやりこめられるのを楽しみにしています。花總さんは何度かお会いしたことはあるんですけど、お芝居では初めてご一緒させていただきます。これまでのお芝居も拝見させていただいていますが、つくり方もビシッとされていますから。ご迷惑をかけないように楽しくやろうと思っています。
――佐藤さんは花總さんと一度共演経験がありますが、どんな印象ですか?
佐藤 さっきも話題になったんですけど、本当に綺麗な方だなって……。
花總 そんな話題してない(笑)。
佐藤 内面もお美しい方でいらっしゃって。
花總 まだそこまで知らないはず(笑)。
佐藤 (笑)。お美しいであろうお方です。前回ご一緒させていただいた時もありがたかったです。
――花總さんからおふたりの印象はいかがですか?
花總 克典さんは今日いままでで一番長い時間お話させていただいたのですが、かっこいいな、ダンディだなと思いました。
高橋 ……はい、ありがとうございます。
一同 (笑)。
花總 役にぴったりです。
高橋 ……ありがとうございます(笑)。
花總 流司くんは楽しみです。やっぱり初共演のときってそこまで打ち解けられないんですよ。前回は稽古場でたまたま席がお隣だったので、ちょっとだけ深掘りできたんですけど、今回2回目の共演なのでもっともっと研究しようかなって。
佐藤 (笑)。
花總 お稽古が始まったらそれどころじゃなくなるかもしれないですけど、隙を見てもうちょっと距離を縮めたいと思います。
佐藤 ぜひお願いします!
――本作について現時点で楽しみにしているのはどんなことですか?
佐藤 明治座で(舞台の機構を使った)ギミックとかもたくさんあると聞いていますし、一緒に作品を彩ってくれるアンサンブルの方々もすごい人数いらっしゃるので、かなり華やかな舞台になるんじゃないかなと思っています。そこが楽しみです。
高橋 平安ものってあまり演じる機会がないんですよ。なので嬉しいなとすごく楽しみにしています。舞台装置もあってどんな感じになるのか、この世界に入っていくのがすごく楽しみです。
花總 お稽古場から劇場に入った時に多分私たちが一番「わあ!」ってなるんじゃないかなと思います。「このセットで、この衣裳で、こう見えてくるんだ」って、劇場で初めてわかる部分も多い作品だと思うので、それはひとつ楽しみです。そして出演者の方々の空気感が良さそうで、和やかですごくいいカンパニーになりそうな気がします。カンパニーがいいと作品自体が良くなりますから、お稽古が始まってみんな一緒に劇場に行って、12月いっぱいこの作品ができることがすごく楽しみです。
取材・文/中川實穗