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舞台『刀剣乱舞』(以下、刀ステ)シリーズ最新作、舞台『刀剣乱舞』十口伝 あまねく刻の遥かへが2月15日(土)~3月16日(日)に上演される。シリーズ初となるオムニバスでの上演とあって、どんな作品になるのか注目が集まっている作品だ。本作では、北谷菜切役を戸塚世那、笹貫役を岩城直弥が演じる。2振りとも『刀ステ』シリーズ初登場。初登場の刀剣男士を演じる戸塚と岩城に、稽古での手応えや役作り、参加したことで見えた『刀ステ』の魅力について聞いた。
――お二人とも『刀ステ』シリーズ初参加となります。実際に稽古が始まってみての心境はいかがですか?
岩城 すごく楽しいですね。周りから、『刀ステ』の殺陣や芝居の稽古量がとにかくすごいという噂を聞いていたので、毎朝冷水で顔を洗って気合いを入れて稽古場に向かわないといけないな……と覚悟していました。でも今作はオムニバスということもあって、意外とオフの時間もあるんです。そのことに驚きながらも、楽しくのびのび取り組めています。
戸塚 確かに、自分たちがメインではない話の稽古時間もあるから、想像していたより今はのびのびできていますね。僕としては、ずっとやってみたかった殺陣もあって楽しいです。反面、もっと日頃から運動をしておけばよかったなと思っています(苦笑)。北谷菜切は短刀なので、俊敏性が必要で。そこは稽古しながら、しっかり体も作っていきたいなと思っています。
岩城 僕は殺陣稽古で筋肉痛がきてるんだけど、世那は大丈夫?
戸塚 僕はまだきてないですね。
岩城 なるほど。これが若さか(笑)。
戸塚 いやいやいや(笑)。
岩城 オムニバスですが、もちろん殺陣もしっかりあるので、プロテインやバナナを毎日摂って体を作っているところです。
――今現在、体作りにも取り組まれているとのことですが、他に稽古までに準備したことは何かありますか?
戸塚 まずはゲームをやりこみました。北谷菜切のキャラクターボイスを聴き込んで、回想を読んで。どんなキャラクターなのかを把握するところから始めましたね。あとは、とにかく沖縄弁です。最初は沖縄弁講座の動画を見たのですが、北谷菜切はゴリゴリの沖縄弁で話しているわけではないので、ちょっと違うな……と。なので、沖縄弁のイントネーション混じりで話している人の動画を探して、その訛り方を勉強していました。
岩城 偉いね。僕は笹貫のイラストを見たときに感じた色気をどう出していこうかという点を研究していました。稽古でもセリフや段取りが一通り全部入ったので、ここから再度、どう作っていくか考えていきたいなと思っています。
――実際に演じてみて、どんな部分にやりがいを感じていますか?
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戸塚 多くの刀剣男士に言えることだと思うのですが、表面上は明るく振る舞っていても、その内側に何かしらの責任感やトラウマを抱えていて。その中でも北谷菜切は、表向きは明るく振る舞おうという態度が顕著に出ているキャラクターだと思います。表に見える部分と、内面に抱えるものの差が大きい分、そこをどう演じていくのか、という部分にやりがいを感じますし、演じる上で大切な部分だなと感じながら稽古をしています。
岩城 笹貫は竹藪に捨てられたり、海に捨てられたりといった逸話がありますが、きっと長い間、光もないような状況で孤独だったと思うんですよ。これまでにそういった役を演じたことがなかったので、その孤独ってどんな感じなんだろうと、今回初めて向き合っています。笹貫も内面に抱えるものがあって、それが北谷菜切と一緒に出陣することでどう変化していくのか。彼のどんなセリフを受けて、どう変化するのか、または変化しないのか。そこの表現を考えるのが、やりがいでもあり楽しい部分でもありますね。
――役とご自身の共通点はどんなところでしょうか?
戸塚 北谷菜切は幼い見た目ですが、琉球宝剣の3振りで一緒にいると、お兄ちゃんっぽいところもあって。僕は姉がいる弟の立場なのでお兄ちゃんではないのですが、どちらかというとお兄ちゃん気質なのかなと。小柄だけど、年下の子たちの面倒を見るお兄ちゃん的な立ち位置になることが多くて、そういうところは共通点なのかなと思います。直弥くんはどうです?
岩城 僕は以前、服をデザインしたことがあって、ワンポイントとしてアルパカのロゴを入れたんですよ。よくアルパカに似ているって言われるから。
戸塚 確かに似てるかも!
岩城 似てるでしょ。そうしたら、笹貫の内番衣裳にもパンダが入っていて。「一緒じゃん!」となりました。服に動物のデザインを入れる仲間として親近感が湧いています(笑)。
戸塚 (笑)。
――では、お互いに「こういうところが役に似ている」と感じる部分はありますか?
戸塚 直弥くんはやっぱり色っぽいところかな。
岩城 めちゃくちゃ笑って言うじゃん(笑)。
戸塚 アハハ(笑)。
岩城 これは嘘ですね。じゃあ僕も、似ているところは小柄なところにします(笑)。真面目に答えると、世那は周りをよく見ていて、稽古場でも空気の変化を敏感に感じ取っているんですよ。そこが北谷菜切と似ているかな。
戸塚 確かにそういうところはあるかもしれないです。直弥くんは、一見明るいんですが、実は根が暗めですか?
岩城 合ってる。根は暗いね。
戸塚 たまにそう感じることがあって、そういうところが笹貫の持つ印象と似ているなと思います。
――お二人は今回が初共演となりますが、お互いの第一印象を教えてください
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岩城 良い子だなという印象でしたね。礼儀もしっかりしていて、ちゃんとしている子だなと思いました。
戸塚 そう言ってもらえて嬉しいです。僕は温かいお兄ちゃんという印象でした。その第一印象から始まって、今も「こんなお兄ちゃんがいたらいいな」と思っています。
岩城 初対面のときの僕、怖かった?
戸塚 そんなことなかったですよ。話しかけにくいということもなかったですし、優しい雰囲気がにじみ出ていました。
岩城 それならよかった。年の差があるから、怖いと思われないように気をつけなきゃと思っていたので、それを聞いて安心しました(笑)。
――稽古も始まり、仲は深まりましたか?
岩城 先日、稽古場で一緒に写真を撮ったんですよ。僕が撮ったのですが、写真を撮るのが下手すぎて、目をつぶっていたりブレていたりで1枚も使えるのがなくて(苦笑)。その日、「ごめん、明日撮り直そう」って送ったのが、2人の記念すべき初LINEでした(笑)。
戸塚 ありましたね(笑)。次の日、ちゃんと撮り直しました!
岩城 あと、僕たちいつも一緒に帰っているんです。
戸塚 そうなんです。帰り道で芝居のことなど色々話しているので、仲はしっかり深まっています。
――『刀ステ』は長く愛されているシリーズです。お二人が実際に参加したことで感じた『刀ステ』の魅力とは?
岩城 ひとつ明確にあるのが、アンサンブルの方たちが『刀ステ』を支えているんだなということです。皆さんベテランの実力者の方ばかりで、いわばスペシャリストの集まりなんですよね。「なるほど、こういう方たちが支えているから、刀剣男士も歴史上の人物も、自分の実力を遺憾なく発揮して輝けるんだな」と。これは実際に参加したからこそ感じた部分ですね。
戸塚 確かにそうですね。僕は、ゲームには出てこない歴史上の人物が登場して、彼らと関わることで、刀剣男士たちの心が動いたり、成長したりしていく姿を見ることができる。そこが『刀ステ』ならではの魅力だと思います。
――オムニバスという新たな形での『刀ステ』に、ファンの方の期待も高まっていると思います。お二人が思う本作の見どころを教えてください
戸塚 オムニバスという『刀ステ』初の挑戦をしている作品に、初登場の刀剣男士として参加できていることを嬉しく思います。シリアスなシーンもありますが、琉球独特の“ウチナータイム”はお客様にも一緒に楽しんでいただけたらなと思うので、ぜひ楽しみにしていてください!
岩城 『刀剣乱舞ONLINE』10周年という節目の年に、この作品に携われることを嬉しく思います。今回、『刀ステ』では初めての琉球王国を舞台としたエピソードがあります。独自の歴史を持つ琉球の魅力や、“はいさいめんそーれ”的な明るさなど、他とはまた違った色がありますので、ぜひそこを楽しんでもらえたらと思います。
インタビュー・文/双海しお
撮影/篠塚ようこ