
音楽芸能の名門校・綾薙学園に通う生徒たちの奮闘を描いたテレビアニメ「スタミュ」を基にしたミュージカルの最新作「新ミュージカル『スタミュ』-2ndシーズン-」が東京・シアターHにて開幕。
本作は、2017年から2020年にかけて上演されたミュージカル「スタミュ」の再始動版で2024年に1stシーズンを上演し、本作はその続編となる。
華桜会の異端児・鳳樹に見出され、team鳳としてミュージカル学科を目指した星谷悠太ら5人のメンバーは、入科オーディションには合格できたものの、鳳は華桜会を辞め、星谷らはteam鳳ではなくなってしまった。
2ndシーズンでは、3年生の卒業を前に、卒業式だけではなく、ミュージカル学科の伝統儀式「卒業セレモニー」に向けた物語を展開。鳳が華桜会を抜けた今、元・team鳳には参加資格が無かったが、星谷たちはある行動に出て――。
上演を前にキャストの囲み取材が行われ、ゲネプロも公開された。その模様をお届けする。
「元チームの絆、指導者と教え子の絆に注目してほしい」
取材に応じたのは、三井淳平(星谷悠太役)、田口司(那雪透役)、司波光星(月皇海斗役)、宮内伊織(天花寺翔役)、松井健太(空閑愁役)、吉原雅人(鳳樹役)の6人。見どころや稽古の苦労などについて、和気あいあいと語った。
――まずは本作のみどころを教えてください
三井 今作で2作目となりまして、ミュージカルスターを目指す学生たちのアツいお話です。僕らも役者として、自分の信念やプライドがお芝居に反映される部分がすごくあって、そこがこのスタミュを舞台にした理由なんじゃないかと思っています。ぜひ、そんな部分にも注目していただきたいです!
田口 今回は、先輩方がされていたスタミュの2ndシーズンでは歌われていなかった曲も入っているんです。新曲というか、既存曲を僕たちの作品の中で新しく歌う場面がありますので、ちょっと注目してみていただきたいです。
司波 何と言っても、華桜会の先輩方が卒業してしまうということですよね。そして僕たち1年生も前作と比べて成長したり、チーム感が深まったりした関係性が、前作とは違った形で見られると思います。もちろん、これぞ華桜会というパフォーマンスも見られますよ!
宮内 1stシーズンではバラバラだったキャラクターが、鳳先輩によってteam鳳になって…今回は元・team鳳としてお話は始まってしまうんですが、それでも前作で生まれた絆をそれぞれに信じて、自分たちのパフォーマンスや先輩方をどう送り出すかというところに繋げていくので、そこは見どころかなって思います。
松井 スタミュには僕たちの曲で「星瞬COUNTDOWN」というのがあるのですが、その曲が表している通り、青春がテーマです。前作でもそうでしたが、今作でも泥臭く、全力で青春を楽しむ僕たちの姿を楽しんでいただけたらと思っています。
吉原 今回は僕ら3年生の卒業のお話になっています。ポスターを見て思ったんですが…(僕の)大きさ的に、ギリ主演よりデカいんじゃないかと(笑)。本当に恐縮の極みではあるんですが、それくらい大事なところという意味でもありますし、しっかりと卒業を噛みしめながら、新しい道というものも示せたらと思っています。
――自分以外の人の見どころは?
三井 これはもう、(宮内)伊織の猫ですね。間違いない!すっごい猫がでてきますよ。
宮内 ハードル上がっちゃうじゃん!
三井 いやほんとに。伊織が演じている天花寺翔は猫が大好きなキャラクターで、ちょっと猫っぽいことをするシーンがあるんです。稽古をしているといろいろなダメ出しをされることがあるんですが「伊織さ、SEの猫の音と似すぎてる」っていう、上手すぎてダメ出しされてたんですよ。新しいダメ出しですよね(笑)。すごく素敵なので、ぜひ見てください。
田口 やっぱり、2幕始まってすぐの鳳先輩が本当にカッコよくて…。ソロ曲があるんです。歌もうまいし、見せ方もうまいし、本当に先輩についてきてよかった!と思える楽曲になっています。マジでカッコいいです!
司波 僕もまったく同じ鳳先輩のことを言おうとしてたんですけど、急遽変更して…。ライバルのteam柊の楽曲もすごく見どころがありますね。仲間でもあり、ライバルでもあるので、彼らのパフォーマンスを見ると僕たちの心もギュッと掴まれるし、もっと頑張らなきゃという想いをヒシヒシと感じるんです。もちろん、僕らも頑張るので、そっちにも注目して欲しいですけどね。
宮内 僕は、共演しているみんなですね。稽古をしているときから、会話シーンのセリフでも気持ちが奮い上がったり、感動させられたりして、身震いするようなシーンがたくさんあったんです。それが自分の芝居にも繋がっているところが多々ありますし、そういう影響し合っている僕らのチーム感を見ていただきたいですね。
松井 楪先輩(大隅勇太)と漣先輩(徳田皓己)、暁先輩(北澤優駿)の3人の曲がとても素敵なんですよ。鳳先輩と柊先輩(丸山龍星)の2人がピックアップされることが多いんですが、今回は3人の楽曲もしっかりと聞くことができるので、ぜひ楽しんでもらいたいです。
三井 それで言うとさ、柊先輩は、team柊っていうスター・オブ・スター・チームの師匠になるんですけど、その師弟関係もすごく素敵なんですよね。それでいて、柊先輩にも苦悩があって…すごく感情が出ているシーンがあるんです。そこの龍星くんのお芝居、すごく好きなんですよね。team柊と柊先輩の関係性を象徴するようなシーンになっていると思うので、楽しみにしてほしいな。
松井 今のも俺が言ったことにしてもらっていい?(笑)
吉原 私の演じている鳳は今、華桜会ではないのですが…。鳳のために奮起してくれるという部分は、僕自身も見どころだと感じています。華桜会のみんなもそうだし、元team鳳のメンバーと僕は、一応、指導者と教え子っていう関係だったところが、1つのチームになるような瞬間があるんですね。お芝居の中ではあるんですが、そこが僕にとってはちょっと恥ずかしいような、なんか嬉しいようなシーンなので、ぜひ見つけていただきたいです。
――稽古で苦労したところは?
宮内 やっぱり猫!猫のところですね。今回は僕たちの生徒としての生活感が見えるシーンがふんだんにあって、その関連のドタバタがある中での猫のシーンだったので…。結果的に、結構おもしろいシーンになっているんじゃないかと思います。苦労ポイントでもあり、見どころですね。
三井 やっぱり大変だよね。愛する猫を扱うお芝居だもんね。
田口 前作は個人でそれぞれにいろんな苦悩があったんですけど、今回はチーム感をより大事にしなければいけない部分が多々あるんです。そこは前回とは役作りの仕方も違うし、考え方も違いますね。でも、今回は今回でより仲良くなったし、お互いにここはどう?って話す時間も植えたから、難しくもあったけど、楽しかったな。
松井 そうだね。それで、2ndシーズンはそこを歌で表現することも多い気がする。前回はお芝居で繋いでいったものを、今回は歌で繋いでいかなきゃいけなくて、そこは最初から課題というか、僕たちがやらなきゃいけないことでした。やっと、形が見えてきたので、最後のゲネプロを通してより一層固めていきたいと思います!
田口 お芝居で伝えるのと、歌で伝えるのって違うよね。
松井 なんか違うんだよね。しかもポップな曲が多いから…。
司波 やっぱり、歌、演技、ダンスの3つが軸になると思うんですけど、僕らは5位で試験を突破したグループ。そういう意味で、1stシーズンと比べて成長した部分を提示できなければいけないという、責任もあるんです。日々、稽古では鞭打ってすごく頑張りました。鳳先輩も華桜会のみなさんも、全キャストが一丸になって、みんなで助け合って作りあげている作品です。
吉原 苦労というか…鳳樹という役自体が、すごく天才じゃないですか。そこにアジャストしていくのは、やっぱりすごく大変です。ダンス1つ取ってもそうだし、さっき司くんが言ってくれた歌は、その葛藤と開放だったりするんですね。4分半と令和ではなかなか無い長さなので…。1人の歌声で、ちゃんとみなさんにお届けするっていうことの難しさは強く感じました。一番のプレッシャーだったかな。
司波 でもほんと、そんな苦労しているようには見えないくらい、さらっと素晴らしいものを提示してくれるんです。そこに僕はちょっと心打たれてしまいますね。
三井 スタミュって楽曲がすごく多くて、覚えることの物量が多いんです。そして、アンサンブルさんも6人の少数精鋭で、もちろんアンサンブルさんも覚えることが、たぶん僕たち以上にめちゃくちゃ多いんです。みんながそれぞれ、歌やダンスをいろいろと覚えながら、情熱を燃やして臨んだ稽古だったんじゃないかな。やっぱり、稽古は大変です。
――意気込みをお願いします!
吉原 僕にとっては卒業の話なので、しっかりと噛みしめて。お客さんにも、”終わりのはじまり”じゃないですけど、青春の時期だからこそできる表現を感じ取っていただきたいと思います。頑張ります!
松井 僕たちはまず、元チームとして…卒業セレモニーで鳳先輩を送ることができるか、という物語ですので、ひとつひとつを大事にして、お客さまにもしっかりとこの思いを、歌を、お芝居をしっかりと伝えて楽しんでいただけるように頑張りたいと思います。
宮内 僕たちはこの1カ月、演出の吉谷晃太朗さんを信じて、吉谷さんに心をたくさん動かしてもらって稽古をやってきました。その結果、お客さまの心が何か少しでも動くような作品になっていれば…。チーム一丸となって頑張っていきます!
司波 この作品を通して、何回でも観に行きたい、明日もまた観たいと思ってもらえるような、そんな素敵なお芝居や歌、ダンスをみなさまにお届けできたら。今回は配信もありますので、ぜひ配信でも楽しんでもらえたらと思います。精一杯、一丸となって頑張りますので、応援のほどよろしくお願いいたします。
田口 今回の公演では、卒業セレモニーという部分が本当に大きくて。先輩方の卒業があって、いろんな想いが詰まった作品です。先輩方をしっかりとおくりだせるように、そして観に来てくださる方に”最高のステージ”をお届けしたいですね。
三井 スタミュは青春ドタバタミュージカルコメディです。僕たち元チームが、汗をかいて、涙を流して、泥臭く頑張る姿が、やっぱり人の心を勇気づけるんじゃないかと思うので、そこは必死に、責任を持ってやらせていただきたいと思います。3月になって、きっと卒業を間近に控えたお客さまもいらっしゃると思います。何かを終える人、新しく始める人たちの背中をちょっと押せるような作品を届けたい。そのために頑張りますので、ぜひ観に来てください!
取材後に行われたゲネプロもメディア向けに公開された。
鳳が華桜会を脱会したため、元・team鳳となってしまった星谷たち。念願のミュージカル学科への入科は難しいかと思われたが、冒頭でまさかの元・team鳳の5人全員が入科を認められるところから物語は始まった。


そして年末を迎え、帰省する前に寮の掃除をする生徒たち。3学期の終わりには卒業セレモニーがあるが、元・team鳳のメンバーには参加資格が無かった。それでも、何かできることは無いかと考える星谷は、ある秘策を思いついて――。
1幕冒頭では青春学園モノらしく、年末の大掃除や卒業セレモニーに向けた取り組みの中で、キャラクターの個性が見えるようなやりとりが数多く繰り広げられ、ドタバタと展開していく様子はコミカルで爽やか。チームの絆だけでなく、ライバルだけれどお互いを認め合っている関係性や、師弟関係の絆などが丁寧に描かれていた。


そして、楽曲の多さに驚かされる。いろいろなエピソードやキャラクターの想いが、楽曲によって紡がれていき、セリフよりも歌やダンスの方が多いくらいの印象だ。チームでのパフォーマンスだけでなく、ソロでの歌唱や2人や3人のユニット、チームを超えた掛け合わせの楽曲などが目くるめく展開されていく。ポップな楽曲が多いので、常に心が弾むような気持ちだ。そして、大勢のユニゾンになった時の響きが心地よく、華やかなダンスにも魅了されてしまった。また、可動式の階段が舞台上を動き回り、高さのある迫力のシーンは圧巻。また衣装には、思わず見入ってしまうような仕掛けがあるシーンもあるので、ぜひ見逃さずに注目していただきたい。


果たして星谷たちは卒業セレモニーでパフォーマンスをすることができるのか――。終盤の大きな盛り上がりを期待して、ぜひ劇場に足を運んでほしい。
「新ミュージカル『スタミュ』-2ndシーズン-」は、3月9日(日)まで東京・シアターHにて上演中!3月15日・16日には大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで巡演される。
取材・文/宮崎新之