
©2005 NITRO ORIGIN ©激情バニッシュ演劇「咎狗の血」製作委員会
撮影/サギサカユウマ
ニトロキラルより2005年に発売され、シリーズ累計20万本以上のセールスを記録するBLゲームの不朽の名作「咎狗の血」。それまでのボーイズラブゲームにはなかった硬質な世界観と真正面から描かれる人間の愛憎劇の初舞台化で注目の、激情バニッシュ演劇「咎狗の血」が8月10日(日)に東京・新宿FACEにて開幕した。主人公のアキラが命運を預けるキャラクター、ケイスケ、リン、源泉、シキ、nごとに内容の一部が違う、全5ルートが回替わり上演されるのも話題。公演を前に行われた公開ゲネプロ(【シキルート】)をレポート!
物語の舞台は、第三次世界大戦を経て壊滅的な状態になり、東は「CFC」、西は「日興連」が統治し、二分された二ホン。舞台上に現れたのは廃墟と化した建物内を思わせるセット。
冒頭はメインキャストが登場するオープング。そして、ストリートファイト「Bl@ster(ブラスター)」で戦う、主人公・アキラ(高橋祐理)にスポットが当たる。大戦後、戦うことしか知らずに育てられた若者たちが、行き場のない衝動をぶつけ合うその場所で、アキラは連戦連勝の無敵の王者だが、生きることに特別な意味を感じずに生きている。高橋さんは甘いルックスと低音ボイスのギャップが印象的で、グッと引き込まれる。
ある日、覚えのない殺人の容疑を駆けられたアキラは、無罪放免の交換条件にかつての首都トウキョウにあるトシマで行われている殺人可能なバトルゲーム「イグラ」に参加して、麻薬組織「ヴィスキオ」の王(イル・レ)を倒し、組織を殲滅させるよう迫られる。公にできない立場だという威圧感のある女・エマ(原田理央)に確実に終身刑だと言われ、“拒否したところで、どうせ命はない”と諦めて承諾する。無法の街トシマへと乗り込むアキラ。暗めの照明でダークな世界へ観客を誘っていく。
そこへ、同じ孤児院で育った幼なじみのケイスケ(田中朝陽)が、アキラを心配して追いかけてくる。アキラは、武器も持たずにやって来た無謀すぎるケイスケを帰そうとするが結局残ることに。何でもそつなくこなせるアキラとちょっと頼りないケイスケのやり取りがどこか微笑ましい。
翌日、2人の前に現れたのは、見た目は女の子のような少年・リン(伊崎龍次郎)。彼もイグラに参加していて、イグラのシステムやトシマでの生活について教える。人懐っこいキャラクターを伊崎さんがキュートに好演。
イグラの参加希望者の説明を受けることにしたケイスケ。アキラ、リンと共にヴィスキオの実質的な運営者・アルビドロ(藤原祐規)の元へ。金髪に白のスーツと手袋に身を包み、首にはピンクのファー、常に仮面着用という派手な姿と、藤原さんの怪演で不気味さ全開だ。人体改造や人をいたぶる趣味がある変人キャラを見事に再現している。ケイスケははじめ迷っていたが、アキラを助けたい一心で結局イグラに参加することに。ケイスケのアキラへの想いは報われるのか…。
リンが紹介してくれた情報屋の源泉から、精神的、肉体的に増強する効果があるドラッグ「ライン」の存在を教えられたアキラとケイスケ。ケイスケは興味を持った様子。トシマには、アルビトロの部下で「処刑人」のキリヲ(滝川広大)とグンジ(坂田大夢)がいたり、「イグラ」参加者に最強と恐れられているシキ(中本大賀)が現れたり、一時たりとも安心できない。そんな中、数人の男たちに襲われたアキラは、ついに人を殺してしまう。しかし後味の悪さが拭えず、ケイスケに当たって暴言を吐いてしまう。ねぐらにしているホテルから、出て行ってしまうケイスケ。しばらくして、戻ってきたケイスケは、別人になっていた。アキラへの想いが歪んで、もっと強くなりたいという気持ちに繋がり「ライン」を服用してしまったのだ。ピュアにアキラを思う大人しい姿と「イグラ」とは関係ない連続殺人を犯す狂気。悲しい結末を迎えるケイスケだが、田中さんの演じ分けは印象に残った。
2幕【シキルート】でアキラの命運を握るシキとの関係は、とにかくハード過ぎる展開で、キュンキュンするボーイズラブとはまったく別物。ラストも衝撃的だった。謎の男n(武子直輝)の正体、シキとnの関係、アキラの秘密も明かされるなど、見どころは満載。随所で展開されるアクションシーンもリアルで痛みを感じさせる。荒廃した世界で繰り広げられる、男たちのヒリヒリとしたドラマに翻弄されてみては。
取材・文/井ノ口裕子
【ストーリー】
終戦から数年――
犯罪組織ヴィスキオに乗っ取られ、退廃した街トシマでは、組織の王座を巡る
命がけのバトルゲーム イグラが開催されていた。
無実の罪を着せられた主人公・アキラは、無罪放免の交換条件に、イグラに参加して
ヴィスキオの王(イル・レ)を倒し、組織を殲滅させるよう迫られる。
無法の街へと乗り込むアキラと、彼を巡る人間模様。
欲望、恐怖、裏切り、そして愛……
様々な激情と真実の交差が、アキラの運命を変えていく!!
シキルート 舞台写真























撮影/サギサカユウマ