ミュージカル『スキップとローファー』|稽古場レポート

高松美咲が描く、青春の眩しさと温かさが魅力のスクールコメディ『スキップとローファー』が、ミュージカル『スキップとローファー』として3月に東京・大阪で上演される。

主人公・岩倉美津未を演じる清水美依紗、志摩聡介を演じる吉高志音といったミュージカル界の新星を筆頭に、林 鼓子田中梨瑚小多桜子神永圭佑今牧輝琉横山賀三佐々木 崇らが名を連ねる。さらに、脚本・作詞に高橋亜子、演出・振付にTETSUHARU、音楽に兼松 衆と、各ジャンルで活躍するクリエイター陣が集結する。

初日が近づく2月下旬、衣裳付き通し稽古が行われた稽古場を取材。“新生ハッピーミュージカル”を謳う本作が、どんな青春を見せてくれるのか。期待を胸に稽古場へ足を踏み入れた。

取材開始時、稽古場は通し稽古に向けての最終調整の真っ最中。舞台上での衣裳早替えシーンのある兼近鳴海役の横山賀三が、実際の衣裳を身につけて早替えの練習に取り組んでいた。演出・振付のTETSUHARU氏の「このタイミングで、こっちの衣裳になっていてほしいんだけど、いけそう?」という言葉を受け、着替えを手伝うアンサンブルキャストと話し合いながら、兼近のシーンが出来上がっていく。衣裳チェンジが成功し、横山が続くナンバーを朗々と歌いだすと、ウォーミングアップをしながら稽古を見守っていたキャスト陣から自然と拍手と歓声が上がる。作品同様に、稽古場には柔らかな空気が流れていた。

衣裳やウィッグをまとい制服姿のキャストが稽古場に増えていくと、稽古場はさながら学校の体育館のよう。柔軟をしたり、振付の確認をしたり、衣裳姿で写真を撮りあったり。適度な緊張感の中にも、どこかほのぼのとした明るさが漂う。まるで学校の文化祭前のような、あのワクワクする空気が稽古場を満たしていた。

通し稽古前、TETSUHARU氏は「衣裳を着るとテンションも変わるし、気持ちもギュッと引き締まる。集中力が上がることで、新たな発見もあると思う。これまでの稽古からさらに一段階上げていく気持ちを持って、安全第一で、それぞれの物語を生き生きとプレイしてください」と声をかける。

そして、志摩聡介役の吉高志音の提案で円陣を組むことに。すかさず岩倉美津未役の清水美依紗が「おっけーい!」と盛り上げ、吉高が「皆のことが大好きです! いくぞ!」と号令をかける。W主演を務める2人の自然なやりとりから、これまでの稽古でも2人が率先してこの温かな空気を作ってきたであろうことが感じ取れた。

原作者の高松氏も見守るなか、いよいよ通し稽古がスタート。石川県から上京し、大きな夢を胸に都会の高校へ入学する“みつみ”こと岩倉美津未と、みんなに好かれる人気者のクラスメイト・志摩聡介。2人の出会いから始まる、美津未のスクールライフが、温かなナンバーに乗せて瑞々しく描かれていく。

地元で神童と呼ばれ、進学校・つばめ西高校に首席入学を果たすも、都会の同級生とはどこかズレている美津未を、清水がまっすぐに、そしてチャーミングに演じる。清水は持ち前のパワフルな歌声で美津未の真っ直ぐさを表現するとともに、等身大の不安や期待を歌声に乗せる。その歌声が、一気に心を物語の世界へと運んでくれた。

もう1人の主人公・志摩は、いつもニコニコしているが、周りとは一線を引いた男子高校生。柔和な笑顔の中に、一滴の寂しさを垂らしたような表現からは、飛ぶ鳥を落とす勢いでキャリアを重ねてきた吉高の器用さが光る。彼が美津未と出会ってどう変わっていくのか、その表現の変化にも見どころの一つとなるだろう。

2人と関わるクラスメイトの距離感が縮まっていく様子も、観ていて元気がもらえる。稽古場でもムードメーカーとして色んな人に声をかけて回っていた今牧は、同じくムードメーカーの山田建斗役をコミカルに演じ、通し稽古でも笑いをさらっていた。迎井 司役の神永は口数は多くない役柄だが、その佇まいから誠実さがにじみ出ている。美津未に出会って変わっていく江頭ミカ役の林、村重結月役の田中、久留米 誠役の小多は、それぞれの心情を歌いあげるナンバーで魅せる。

中でも印象的だったのは、青春感満載の部活勧誘シーンのナンバーだ。アンサンブル陣が様々な部活の部員に扮し、縦横無尽に躍動。袖で出番を待つキャストまでもがノリノリで踊り、稽古場全体が一つになって盛り上がった。この熱量を、本番のステージで浴びたらどれほどワクワクするのか。楽しみでならない。

本作の脚本・作詞は、数多くのミュージカル作品の脚本、作詞、訳詞を手掛けてきた高橋亜子氏。高校生たちの敏感で繊細な心情を歌詞で拾いながら、日常に散りばめられた心動く瞬間を、丁寧にミュージカルに落とし込む。そこに兼松 衆氏の音楽、キーボードの生演奏、キャスト陣の個性があわさることで、美津未や志摩たちが高校生活の中で見つけた友情や淡い恋心、成長といった宝物がキラキラと輝き出す。何気ない日常を特別な瞬間に変える楽曲の力が、本作の大きな魅力だ。

1幕を見学し終えて、心がぽかぽかと温かくなった。美津未のまっすぐさ、志摩の繊細さ、クラスメイトたちのそれぞれの物語。みんなが織りなす青春が、観る者をハッピーな気持ちで満たしてくれる。そんな“新生ハッピーミュージカル”が、3月6日の初日に向け、完成形に近づきつつあった。

取材・撮影/双海しお