ミュージカル『薄桜鬼 志譚』風間千景 篇 稽古場レポート

4/5(金)に東京・日本青年館ホールにて初日を迎える、ミュージカル『薄桜鬼 志譚』風間千景 篇。2012年の初演以来、殺陣・ダンス・歌を融合させたステージングと新選組を題材とした熱いストーリーが好評を博し、これまでライブを含む11作品が上演された人気シリーズの最新作だ。

開幕が迫る本作の稽古場に潜入。カンパニーが一丸となって真摯に「薄桜鬼」へ挑む姿をレポートする。

 

3月下旬。
昨晩に雨が降り、肌寒い曇天の日にローチケスタッフは、ミュージカル『薄桜鬼 志譚』風間千景 篇の稽古場を訪れた。

稽古場にはすでにキャスト・スタッフが揃っていた。室内は外とほぼ変わらない低い温度だったが、キャストたちは半分以上がTシャツ姿。これからのハードな動きを予感させた。

この日は風間千景を演じる主演の中河内雅貴を始めとした“鬼”を演じるキャストたちは夕方からの稽古参加だったため、新選組キャストたちの場面を中心に取材することとなった。

まずは序盤、オープニングのシーン。新選組隊士たちの立ち回り・振付部分の確認から稽古が始まる。
隊士たちが同時に立ち回りを行うため、舞台上は隊士と、彼らを取り囲むアンサンブルキャストが出揃う。ほとんどのキャストが稽古用の木刀を構える格好になり、空間がギッチリと埋め尽くされている感に満ちた。お互いがぶつからぬように、振付を担当するMAMORUが細かく場面を区切り指示を出していく。ひとつ間違えば衝突、あるいは木刀が当たってしまうため、キャストたちも慎重だ。
藤堂平助役の樋口裕太は歌詞を口ずさみ、山崎 烝役の椎名鯛造はアンサンブルキャストと共にカウントを取りながら刀の合わせるタイミングを確認していた。

椎名が「アレ? なんか俺だけ手(殺陣の手数)がやたら多いんだけど……」と不思議そうに呟くと、周囲から笑いが起こる。曲に合わせるため、すぐさま調整に入る椎名たち。迅速に対応するスタッフ・キャストの連携ぶりから、カンパニーの安定感が見える。

舞台後方に設置されている階段の上から勢いよく駆け下りたり、端から階段の上段まで駆け上がったりと、素早い移動が必要とされる振付。誰かが間に合わなさそう、と見るや必ず周囲が気を配り「そっちは大丈夫?」と声をかけ合う。

また、全体のフォーメーションも重要。永倉新八役の岸本勇太が、左右対称に位置する沖田総司役の山﨑晶吾に「どの辺りにいる?」と声をかける。舞台端のポジションについた山﨑が「ここだと、スピーカーに当たっちゃいそうだな……」と心配していると、岸本が「その場合は(スピーカーを)斬り捨てちゃおう!」と宣言。岸本の隣にいた椎名が「斬っちゃうんだ……(笑)」と小さくツッコんでいた。

山南敬助役の輝馬は木刀を軽々と回しながら歌い上げ、飄々とした身のこなし。斎藤 一役の赤澤 燈は常に周りのキャストに声をかけて気を配っている。曲に乗せて振付を通した際、立ち位置に戸惑っていた原田左之助役の水石亜飛夢の背中にさり気なく手を当て、導いていた姿が印象的だった。

何度か場面を通した後、つかの間の休憩。

本作のヒロイン・雪村千鶴役の本西彩希帆は、近藤 勇役の井俣太良と穏やかに談笑中。「ヤイサ」という言葉に込められた意味について盛り上がっているようだ。「薄桜鬼」に憧れ、千鶴を目指して女優になったという本西。シリーズを通してミュージカル『薄桜鬼』で近藤役を演じている井俣への信頼が覗く。

休憩時間が終わり、次の稽古シーンはミュージカル『薄桜鬼』の代名詞ともいえるメインテーマ『ヤイサ!ヤイサ!ヤイサ!』がかかる場面。途中、MAMORUが「この歌詞の部分、前回の振付はどうだったか教えてもらえる?」と土方歳三役の和田雅成にヘルプを求めると、和田が「こうしていたと思います」と実演。MAMORUが和田にバトンタッチして、和田による振付がスタートした。

「雅成せんせーい!」と、周囲のキャストたちから声を掛けられた和田は「ハイ! じゃあ、みんなコッチに(刀を)振ってー。次は、コッチ。以上!」と、ハキハキと振付。稽古場は笑いに包まれる。

「左利きの人はどうすればいいの?」と、左利きである斎藤を演じる赤澤から尋ねられると、和田は「器用だから、上手くやれるやろ!」と断言。もちろん、赤澤の実力に信頼を寄せての突き放しだが、そのやり取りを側で聞いていた山﨑が「じゃあ槍の人はどうすればいいですかね?」と、水石を指し示す。和田は「……大体で上手いことやって!(笑)」と、ざっくりしたアドバイスでボケを受け止め、イジられながらも頼られる温かい人柄をうかがわせていた。

本作からミュージカル『薄桜鬼』に参加している水石は長い槍に苦戦している模様だったが、周囲がカウントを取りながら復習をし始めると、すぐさま自分も参加して食らいつこうと必死の姿を見せる。続投キャスト・新キャスト問わず、ひたむきに作品に取り組んでいる姿が熱い稽古場だ。

時間でいえば数分しかない場面に何十倍もの時間を必要とするのは、舞台・映像を問わず「芝居」に必要なことだが、ミュージカル『薄桜鬼』の稽古場では、その重要性をより強く感じた。

シリーズを重ね、新しい部分も増えた“薄ミュ”。その新たな魅力と変わらぬ熱さを見届けに、ぜひ劇場へ足を運んで欲しい。

 

取材・文/片桐ユウ

 

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