かねてより「『薄桜鬼』のヒロインを目指して女優になった」と公言していた本西彩希帆が、その夢を実現! 4/5(金)から上演されるミュージカル『薄桜鬼 志譚』風間千景 篇にて、憧れ続けてきたヒロイン・雪村千鶴役を務める。
ミュージカル『薄桜鬼』は、2.5次元ミュージカルの中でも長きに渡る人気シリーズ。本西の単独インタビュー取材では、葛藤のまっただ中にあるという稽古場での悩みやそれを上回る意気込み、そしてあふれんばかりの“薄ミュ”愛を明かしてもらった。
秋元康プロデュースによる劇団4ドル50セントの中でも注目を集める期待の若手女優・本西彩希帆。
本作のオーディションでは、自己PRの場で「『薄桜鬼』への愛を語らせてください!」と審査員に頼んで語り尽くし、「千鶴ちゃんを演じるためなら何でもできます。どんなことでもやります!」と宣言していた。
本西が『薄桜鬼』と出会ったのは、学生時代に遡る。
本西「小学生の頃は読書に没頭していて、学校によく置いてある“偉人伝”系の歴史シリーズを立て続けに読んでいたんです。そこで土方歳三を知り、近藤 勇を知り……。新選組って教科書にはたくさん出てくるわけではないですけど、こんな風に幕末の時代を生きていた人がいたんだ! と知っていくのがとても面白くて。高校に入った時に、私が新選組好きだと知ったクラスメイトが“『薄桜鬼』って作品、見たことある?”と。それがキッカケになりました」
アニメや2.5次元ミュージカルに詳しい友人から紹介された『薄桜鬼』。本西はまずアニメを視聴してドハマり。そして友人が貸してくれた、ミュージカル『薄桜鬼』斎藤 一 篇のDVDを鑑賞して、ゲームもプレイするようになり、さらにどっぷり『薄桜鬼』にハマり込んだ。
本西「“薄ミュ”(=ミュージカル『薄桜鬼』)を見た時、演じているみなさんが役や作品に対してものすごく真剣に向き合っていて、作り手さんがみんな作品のことを好きなんだな、という気持ちが伝わってきたんです。映像からもそれを感じ取れるって余程のこと。本当にすごい、なんて素敵なんだろうと思いました」
以降の上演作品をDVDで追いかけ、初めて生で観劇したのは2015年に上演された、ミュージカル『薄桜鬼』黎明録。去年上演された、ミュージカル『薄桜鬼 志譚』土方歳三 篇もプレミアム席のチケットを自ら取って劇場に足を運んでいたという。
本西「みなさん本当に格好良かったです! もう息をするのを忘れてしまうくらい見入っていました。上演時間は長めだったと思うのですが、ずっと“まだ見たい、もっと見ていたい!”と思いながら観劇していました」
「自分も演じたい」という熱い想いが芽生えたのは、2014年に上演された、ミュージカル『薄桜鬼』風間千景 篇の映像を見た時から。
本西「富田麻帆さんが演じていた千鶴ちゃんを見て、とにかく“すごい……”と言葉にならないくらい感動したんです。その時から“千鶴ちゃんをやりたい”“『薄ミュ』に関わりたい”と思うようになりました」
“薄ミュ”への想いをモチベーションとして女優を志し、劇団4ドル50セントに入団。経験を積んできた。ファンからは「綿密な計画を立てて、実現していくタイプ」として知られていたが、本作のオーディションについては「いつかは絶対、とは思っていましたけど、こんなに早く機会が巡ってくるとは思いませんでした」と明かす。
本西「でもここを逃したら、もうチャンスはないだろうと感じていたので、“絶対に千鶴ちゃんになるんだ!”と気合いを入れて臨みました。合格を知った時は思考が止まって、最初は頭に入ってこなかったです(笑)」
晴れて念願の雪村千鶴役を射止めた本西だが、自身のファンからは手放しの祝福というより「ここからが勝負だよ」「しっかりやらないとダメだよ!」といった叱咤激励を受けた。
本西「みなさん、私を娘みたいな感覚で応援してくださるので(笑)。でも嬉しかったです。おかげであらためて気合いが入りました!」
ポニーテール姿の千鶴役のために髪の毛を伸ばし、歌唱指導のレッスンに通い、事前準備を重ねてきた。今、稽古の真っ最中。
本西「自分がファンとして見てきた作品なので、今までどうだったかということが分かっている分、自分がどこを目指さなくてはいけないのかも分かっているつもりです。でも変に考え過ぎてしまう部分もあって……。劇団で舞台には立ってきましたが、憧れ続けてきた役なのでどうしても緊張してしまいます。この間は、振り返るだけなのに足が付いていかず、人間じゃない動きをしてしまいました(苦笑)」
それでも、作品や役への理解に関しては蓄積がうかがえる。
本西「今作の脚本を読んで感じたことは、千鶴ちゃんは本当に新選組のことが大好きだということ。特に小姓として傍に付いている土方さんから受ける影響は大きいです。それと同時に、厳しさの中にも優しさを覗かせる風間さんのことは“居てくれて良かった”と感じている。それぞれの運命に対して千鶴ちゃんがどう思ってどういう行動を取るのか、それをどうすればお客様に納得していただけるものとして表現していけるのか……まだまだ葛藤の日々です」
「できないことばかり」だと正直に胸の内を吐露するが、インタビュー中は前向きな姿勢を崩さず、終始笑顔。
本西「千鶴ちゃんのように、間違ったことを間違っていると言う強さは自分も持っている部分なので、そこを繋がりとして千鶴ちゃんと近付いていければと思います! 役に対しての理解はそれぞれによるので、私が風間篇で見ていたものとは違う感覚もありますが、その違いにワクワクもしましたし、自分が千鶴ちゃんを演じているから、というところもあるのかなと思います。千鶴ちゃんは自分自身の信念を持ちつつ、いろんな人からの想いを受け取るものがある人だと思うので。観ていた時とは感覚が違うのかもしれません」
演出・西田大輔氏からのコメントでハッと気付かされたこともある。
本西「私が緊張し過ぎて空回っている時、“あなたの千鶴は、あなたの反応だったり、あなたの行動や言動によって千鶴になっていくんだから、しっかりしなさい”と仰っていただきました。歴代の素晴らしい方々を見ているので、どうしても頭の後ろに常に理想の千鶴ちゃんがいたんです(笑)。でもそのお言葉をいただいて“そうか、それで良いんだ”“変に考え過ぎなくていいんだ”と。私の千鶴ちゃんを作っていこうと思えました」
深く絡む間柄の新選組キャストたちの中では、近藤 勇役の井俣太良や山南敬助役の輝馬によく相談に乗ってもらっているそう。若手俳優の中でも、2.5次元舞台やミュージカル作品を中心にその実力を見せつけてきたメンバー揃い。芸能界に入って2年目となる本西は共演者への感謝を述べつつも、本音をチラリと覗かせる。
本西「休憩時間になると近藤さんや山南さんの元へ行って、私の反省会に付き合っていただいています(笑)。風間役の中河内さんはめちゃくちゃ優しくて、私の気持ちが追いついていない時には“どうした?”と声を掛けてくださったり。和田さんが演じる土方さんは、とても“土方さんらしい”ですね。稽古場に居る時より、役として同じ場面に立っている時の方が距離を近くに感じます。どの方にもものすごく引っ張っていただいているので、千鶴ちゃんとしては有り難いと思いつつ、自分自身の不甲斐なさには歯がゆい気持ちになるばかりで……。みなさんを見ていて悔しいなと感じます。でも私には技術もない分、真っ直ぐ頑張るしかできない。これからの稽古も必死に臨むのみです!」
生来の負けず嫌い。父親はプロ野球・オリックスの選手として活躍した本西厚博。
本西「末っ子ですし、両親から受け継いできたものもあると思います(笑)。でも勝負の世界の厳しさを知っている父を尊敬していますし、その父を支えてきた母も尊敬しているし、姉たちのことも大好きです。家族も応援してくれていて、母は舞台に何度も足を運んでくれますね。今回は叔父さんも観に来てくれると話していました(笑)」
観劇には、劇団のメンバーも? と尋ねると「リーダー(岡田帆乃佳)は私の演技の先生で精神安定剤。優しい言葉も掛けてもらいましたし、観に来てくれると思います。他のメンバーは……たぶん?(笑)」と首を傾げて困ったように微笑んだ。
本西「劇団員同士でありみんなライバルなので。私も他の子が活躍していると“負けたくない”と思いますし。だからこそ今回、本番にちゃんと成果を出して、みんなに悔しいなと思わせたいなと思います!」
開幕は目前。小柄な身体から気合いと覚悟が伝わってくる。
本西「私を含め新しいキャストたちも役に対してや作品への愛をより深く持って頑張っているので、劇場でその熱を体感していただきたいです。ご覧になっていただいて『薄桜鬼』のことを一層好きになってもらいたい。そのために今、私たちは頑張っていますので、ぜひ観にいらしてください!」